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アトレティコ、バルサ、マドリー、セビージャ…”4強”の争いで燃え上がるラ・リーガ

森田泰史スポーツライター
ドリブルするメッシ(写真:ロイター/アフロ)

2020-21シーズンのリーガエスパニョーラの行方を左右する一戦が、終わった。

現地時間8日に行われたリーガ第35節、バルセロナ対アトレティコ・マドリーはスコアレスドローという結果になった。首位アトレティコ(勝ち点77)、2位バルセロナ(勝ち点75)、3位レアル・マドリー(1試合未消化/勝ち点74)、4位セビージャ(1試合未消化/勝ち点70)とタイトルレースは混戦の様相を呈している。

■シメオネの言葉

「ファンタスティックなリーグ戦になっている。4チームが最高のフィナーレを目指している。決断、確実性、組織的な労働...我々はバルセロナとの試合でそういったものを見せようとした。ボールを回収して、そこから攻撃を仕掛けようと思っていた。カウンター、ポジショナルプレー、可能な限りを尽くして攻めに出た」と試合後にディエゴ・シメオネ監督は語っている。

「私が選手たちに求めていたのは、ボールを保持して、主導権を握り、プレーすることだった。そして、彼らはそれを実行してくれた」

この試合、アトレティコのポゼッション率は41%だった。バルセロナのそれ(59%)を下回ったが、敵地カンプ・ノウでの直近14試合においては、12試合で30%前後のポゼッション率しか記録できなかったアトレティコにとって、2016-17シーズン(48%/△1-1)に追随する数字だった。

メッシとスアレス
メッシとスアレス写真:ロイター/アフロ

バルセロナとアトレティコのゲームで、注目が集まったのがリオネル・メッシとルイス・スアレスの対決だ。

スアレスはバルセロナに加入した2014年夏以降、メッシにとって欠かせないパートナーだった。彼らはコンビを組んだ6シーズンで478得点を記録して、合計13タイトルをもたらしている。ラストシーズンとなった昨季はメッシ(57試合58得点)、スアレス(43試合25得点)とともに数字を残していた。

だがバルセロナは昨季終了時にスアレスを放出すると決めた。問題は、その功労者の扱いだった。就任したばかりのロナルド・クーマン監督に構想外の旨を伝えさせ、移籍金固定額ゼロでスアレスをアトレティコに移籍させた。その対応はメッシの不満を買い、退団騒動の引き金になった。

しかしながら、メッシの前に立ちはだかったのは、長年の相棒ではなく、GKヤン・オブラクだった。前半41分のシーンでは、メッシがアトレティコの5選手(コケ、サウール、ジョレンテ、サビッチ、フェリペ)をドリブルでかわして、左足でミドルシュート。スペイン『マルカ』が「メッシのキャリアで最高のゴールのひとつになっていた」と評したプレーだ。それを左手を精一杯伸ばして指先で弾き出したオブラクのセーブがなければ、試合の展開は劇的に変わっていたはずだ。

「感覚としては、ボールをストップする気持ちで飛び、幸運が手伝い枠外に外せたというものだった。(相手にしているのは)メッシだよ。彼のこれまでのFKの正確性を考えれば...。試合中には、ああいう瞬間も訪れる。偉大な選手というのは、一瞬で試合決めてしまうんだ」とはオブラクの弁である。

「僕たち次第ではなくなった。マドリーとセビージャは4試合を、僕たちは3試合を残している。最後まで、全チームにとって難しいものになると思う。僕たちには、タフな試合が待っている。最も強いチームが優勝するだろう。心を強く持たなければいけない。心が強く保たれれば、肉体は必ずついてくる」

決定機逸を悔やむバルセロナの選手たち
決定機逸を悔やむバルセロナの選手たち写真:ロイター/アフロ

■3バックと両監督の采配

そして、両監督の采配だ。

バルセロナは前々節グラナダ戦でクーマン監督が退席処分となっていたため、アルフレッド・スロイデルコーチが指揮を執った。ただ、シメオネ監督とスロイデルコーチの送り出したスタメンと選手交代では、意味が異なった。

シメオネ監督は攻撃的だった。基本布陣の【4-4-2】ではなく、【3-1-4-2】を選択。コケをアンカーに据えた。敵陣でプレスを掛け、縦パスを塞ぎ、トランジションからバルセロナのウィングバックの裏を狙った。カラスコがミンゲサを翻弄して、アトレティコの攻撃に深みを与えた。

バルセロナとしては、ミンゲサとの交代でアラウホを投入して傷を浅くするしかなかった。無論、ブスケッツの負傷交代は痛手だった。「ブスケッツがいる間は試合をコントロールできていた」と試合後にスロイデルコーチが認めている。ブスケッツが不在となり、デ・ヨングがアンカーを務めなければいけなくなった。デ・ヨングの2列目からの飛び出しは鳴りを潜め、ペドリまで守備に走らされた。グリーズマンとメッシの距離感が悪く、密集地帯でボールを受けるグリーズマンはポストワークで乱れが生じていた。

■燃え上がるラ・リーガ

「勝ちたかった。だけど、僕たちは生き残っている。ラ・リーガの状況に顧みて、まだ僕たちには可能性があると思う」

これはジェラール・ピケの言葉だ。

スペイン『マルカ』のアンケートでは、「優勝するのはどのチーム?」の問いに、マドリー(61%)、アトレティコ(23%)、バルセロナ(12%)、セビージャ(4%)と票が分かれた。8万6799票(日本時間9日午前時点)が集まり、マドリーが優勢との見方になっている。

今後の日程に関しては、アトレティコ(第36節レアル・ソシエダ戦/第37節オサスナ戦/最終節バジャドリー戦)、バルセロナ(レバンテ戦/セルタ戦/エイバル戦)、マドリー(グラナダ戦/アスレティック・ビルバオ戦/ビジャレアル戦)、セビージャ(バレンシア戦/ビジャレアル戦/アラベス戦)となっており、わずかながらバルセロナが有利だといえる。

当然、まずは第35節マドリー対セビージャの結果だ。それ次第で、マドリーが首位に立つか、セビージャが優勝争いに加わるかが決まってくる。2強時代の崩壊ーー。ラ・リーガが、熱く燃え上がろうとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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