上司が「GY(語彙力やばい)」だったら、どうしたらいい?
「語彙力やばい」
入社3年目の若手社員から聞いた。
「私の上司、語彙力やばいんです」
この場合の「やばい」とは、どういう意味なのだろうか? 若手社員の発言なので「やばい=すごい」の意味かと最初は受け止めた。しかし違っていた。よくよく聞いてみると「やばい=ひどい/深刻」という意味だった。
「親身になっていろいろ指摘してくれるんですが、何を言っているのかよくわからないんです。やばいです」
空気を読めない人のことを「KY」と呼ぶ。ということは、語彙力やばい人は「GY」と呼べばいいのか。
いまだに「俺の背中見て学べ」的な上司は少ないと思う。しかし言葉で指導された経験が乏しい上司は「言葉」で理解していない。どちらかというと「体」で覚えてしまっている。だから部下指導する際に、大変苦労するのだろう。
では、そんなGYな人が自分の上司だったら、どうすればいいのか?
今回の記事では、「GY上司」にどう接したらいいのか、3部構成で解説していく。
①「GY上司」の口ぐせとは?
②「GY上司」がもたらす問題点
③「GY上司」とうまく付き合う方法――3つのポイント
この記事を最後まで読むことで、GY上司との正しい付き合い方のヒントが得られるはずだ。
「どう言ったらいいのかな~」が口癖の上司を持つ若手社員、ぜひ最後まで読んでみてください。
■「GY上司」の口ぐせとは?
GY上司は、残念ながら説明、指示がヘタだ。曖昧で、抽象的で、ぼんやりとしている。そんなGY上司の口ぐせは、たくさんある。いくつかを紹介しよう。
「こういう場合、どう言ったらいいのかな……」
「そうそう。そういうことを、俺は言いたかったんだ」
「なんか決め手に欠けるんだよな」
他にも、
「なるはやで頼むよ」
「自分なりに考えてやってみて」
「まずは手を動かすところから始めようか」
そして会話の終わりに出てくるお決まり文句は、コレ。
「何かあったら相談して。いつでも相談に乗るから」
ところが、経験の浅い若手社員だと、何がわからないのかもわからない。「相談して」と言われても相談できない。
そのため、部下たちは自分で判断して仕事を進めることが多くなるのだ。
■「GY上司」がもたらす問題点
GY上司がもたらす問題点はズバリ、仕事効率が悪くなることだ。
説明や指示が曖昧なので、具体的にどうしたらいいかわからない。だから部下たちは、
「自分なりにやってみます」
と反射的に言ってしまう。
しかし、自分で判断した結果が上司の期待に合わなかった場合、上司に嫌味を言われたり、やり直しを命じられたりすることがある。これが新たな問題点を創出する。
「どういうつもりで仕事してるわけ?」
と嫌味を言われたり、もっと酷いケースだと、
「誰がこんなやり方を教えたんだ? イチからやり直しだ」
と言われてしまう。このような場合、部下たちは仕事効率だけでなく、やる気もダウンさせてしまうだろう。
■「GY上司」とうまく付き合う方法――3つのポイント
そんなGY上司とうまく付き合う方法を伝授したい。ポイントは「確認グセ」だ。確認せず、反射的に
「わかりました。やってみます」
と答えるのが最もマズい。だからしっかりと「確認グセ」をつけるのだ。ポイントは3つある。
①3回以上は確認する
相手との関係レベルにも左右されるが、もし関係が良好であれば視界明瞭になるまで「確認し抜く」こと。「確認」ではなく「確認し抜く」という表現を使おう。例文を書いてみる。
「なるはやで、というのは今週中ということでよいでしょうか?」
「今週中なんて遅すぎるよ」
「水曜日まで、でいいでしょうか?」
「火曜日の定時までに頼むよ」
「火曜日の夕方6時にメールで提出すればいいですか?」
「印刷して持ってきてよ」
「16ページぐらいの資料ですが、すべて印刷すればいいですか?」
「いや、ポイントだけでいいよ。16ページなんて多すぎるだろ」
「ポイントというのは現状分析と工程表、役割分担表の3つでいいですか?」
「そうじゃなくて……」
「確認し抜く」のだから、これぐらいしつこいほうがいい。視界不明瞭のまま手探りで仕事をするのは、とても危険だからだ。
もしまだ上司と関係ができていなくても、最低3回は確認しよう。1回確認しても認識のズレがなくなることなど、ほぼないのだから。
②しっかり準備をして確認する
曖昧な表現を確認するのに、抽象的な表現を使ってはダメだ。
「なんか違う、というのは納得できない、ということでしょうか?」
「うーん、納得できないというよりは、期待通りじゃないってことだな」
「わかりました。期待通りにやります」
これでは、結局何を確認したのかよくわからない。いったん自分で時間を作って考え、仮説を立ててから確認しにいこう。
「なんか違う、というのは、この現状分析のところかと思ったのですが、そうですか?」
「いや、そこじゃなくて全体のデザインだよ」
「デザインですか? 資料のデザインがなんか違うんでしょうか?」
「そう。こんなデザインだと見づらいだろ……」
このように、事前に準備をしておくことで具体的な質問ができるようになる。
③メールで確認する
確認したいことがいくつもあると、口頭では聞きづらい場合もある。だからメールで箇条書きしてもいいだろう。
先日の資料作成について、確認したいことが3点あります。それぞれ具体的に教えていただけますでしょうか。
1.現状分析で使うグラフについて
現状分析で使用するグラフを円グラフにすることを検討しています。理由は、売上シェアを視覚的に表現するためです。この方法で問題はありませんか?
2.工程表について
来年度から3年間の工程表にすることを検討しています。理由は、中期経営計画に合わせるためです。このような方針でよいでしょうか?
3.役割分担について
A係長と一緒に、役割分担について話し合うためのたたき台を作ってもよいでしょうか? 私一人では理解しきれない部分がありますので、アドバイスを頂きたく思っています。
ご確認いただけますようお願いいたします。
GY上司には、これぐらいの細かさで確認するほうがいい。そうしないと、何度もやり取りが必要になってしまうからだ。
■まとめ
GY上司だけではない。誰だって抽象的な表現をするほうがラクだ。負荷が少ない。それは理解できる。しかしその態度を続けてしまうと、同じように「GY(語彙力やばい)」な人になってしまう。
そうならないためにも、若い頃から具体的な言葉を使うクセをつけよう。
ある言葉を使えばわかりやすく伝えられる場合もあれば、同じ言葉を使っても相手に伝わらない場合もある。このような体験を通じて、語彙力は鍛えられていくものだ。
GY上司とのコミュニケーションが、語彙力を向上させる機会として受け止めて励んでほしい。