新型コロナウイルス渦中の水泳プール営業状況
公共の室内プールをはじめ、水泳プールは日頃から感染症予防対策を徹底しています。例えばアデノウイルスで発症する咽頭結膜熱(プール熱)と流行性結膜炎、エンテロウイルスによる急性出血性結膜炎は対策がおろそかだと感染する病気として有名です。こういったウイルスを不活化するために、プール水の遊離残留塩素濃度を定められた値に保つべく、プール管理者は日々努力しています。
新型コロナウイルスのスポーツ施設での感染リスクを下げるために必要な対応・対策はこれから発表されるようです。感染症予防対策についてはスポーツ施設の中でも進んでいると言える水泳プール。都内を中心とした水泳プールの本日時点での営業状況を調査してみました。
【3月3日追記】2月29日にこの記事を配信しました。本日時点でも相当な数の閲覧をいただいております。感謝申し上げます。プール営業状況はこの4日間で大きく変わっております。最新の営業状況はぜひ自らご確認ください。
4月9日最新情報はこちら→ 緊急事態宣言発出下 スイミングキッズスクールや長水路の動きはどうなるか
現時点での施設の対策
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月27日に総理大臣官邸で開催された新型コロナウイルスの対策本部会議では、安倍総理大臣が感染が確認された人がスポーツクラブを利用していたことも踏まえて、こうした場所での感染リスクを下げるために必要な対応について、専門家の意見を聴き、至急対策を取りまとめるよう求めました。(出典:2020年2月28日 0時57分 NHKオンライン)
水泳プールでは、日頃からどのような対策が取られているでしょうか。プールで感染する病気として古くから知られているものに、一般にプール熱と呼ばれる咽頭結膜熱や、はやり目の通称で知られる流行性角膜炎、そして強い眼の痛み、充血、眼脂をともなう急性出血性結膜炎などがあります。
咽頭結膜熱と流行性結膜炎はアデノウイルス、急性出血性結膜炎はエンテロウイルスによって感染しますが、このような感染症を防ぐために、プール水は塩素剤で消毒され、その濃度はウイルスを不活化する0.4 mg/L(注1)以上に保たれています。(参考:一般財団法人東京顕微鏡院ホームぺージ)
注1 水1リットル中の遊離残留塩素の量をmg(1000分の1グラム)で表す単位
例えば、文部科学省 水泳プールに係る学校環境衛生基準によれば、「プール水の遊離残留塩素濃度 0.4 mg/L以上であること。 また、1.0 mg/L以下であることが望ましい」とされています。一般的には「塩素剤をプールに入れる」という定期的作業が、遊離残留塩素濃度を基準内で一定に保つために行われています。ちなみに、水道水では「蛇口での残留塩素濃度を0.1 mg/L以上保持すること」が水道法で定められています。
プール営業状況
全国主要都市にある屋内プールの営業状況やプールでのイベントを見ますと、対応は様々です。東京都の公共プールでは個人利用を休止する施設が相次ぐ一方、地方では本日現在で様子を見ている施設が多い印象です。また、スイミングクラブの対応も分かれています。
東京都内の公共プールから確認してみました。東京辰巳国際水泳場や武蔵野の森総合スポーツプラザでは、2月27日~3月15日まで(予定)の3週間程度の期間、プールの個人利用を中止しています。また、この期間一般公開利用者(個人利用)を対象としたワンポイントアドバイスなどの事業についても中止しています。
障害者総合スポーツセンターと東京都多摩障害者スポーツセンターでは、2月23日から3月末までに実施予定であった事業の中止に加え、2月27日から3月15日までのプールにおける個人利用を中止しています。
神奈川県にある川崎市多摩スポーツセンターでは、温水プール一般利用や水泳教室について2月29日から3 月15 日までの間で中止する予定だということがホームページ上に案内されています。
千葉市にあるこてはし温水プールでは2月28日現在、「新型コロナウイルス対応について」という案内のほかには特に利用中止情報は掲載されていません。
関東圏から離れた公共プールの例では、いかがでしょうか。例えば筆者の地元になる新潟市西海岸プールでは次にように案内されております。(原文ママ)
ただし、状況は刻一刻と変わりますので、この週末で新たな案内があるかもしれません。
東京都内のスイミングクラブの状況はいかがでしょうか。数多くあるスイミングクラブのうち、日本スイミングクラブ協会関東支部東京都の加盟クラブの状況を各クラブのホームページ上で確認をしました。その結果を次に示します。
1.期間はバラバラながら臨時休館あるいは子ども教室など限定して中止すると明示しているクラブ 11
2.情報として特にお知らせがないクラブ 19
3.調査時点で感染対策をしっかりして教室等を開くクラブ 13
4.2月28日現在協議中 6
日頃から感染症対策を特に万全に行っているので、そういった日頃のノウハウを駆使するクラブもあると考えます。その一方でプール以外の更衣室などでの感染リスクまで総合的に考えて判断に至ったクラブもあるのではないでしょうか。
スイミングクラブでの対策として明示されているもので最も多かったのは次の通りです。
1.行政機関の指導に則り速やかに対策をする
2.職員がマスク着用の上対応する
3.(利用者に対し)自身の健康第一の徹底、発熱や咳など体調が優れない場合は無理をせず、施設の利用を控えるようにお願いする
まとめ
日々刻刻と変化する状況と情報の中で、「利用者の健康増進に貢献しつつ、ウイルスの感染拡大を防ぐ。」スポーツクラブの役割は極めて微妙な位置にあります。そういった中で、もともと感染症予防対策を徹底している水泳プール施設について、一端ではありますが、2月28日夕方現在の営業状況を記しました。
皆様の近所の水泳プールのお知らせを見ながら、この記事がウイルス感染を予防しつつ行う体力づくりの参考になれば幸いです。