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最低賃金上昇が労働者にとって良いことだらけでない理由。時給3000円時代の米国で起こっていること

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:アフロ)

カリフォルニア州では今月1日より、一部のファストフード店の従業員の最低賃金が時給20ドル(約3032円)に引き上げられた。

この最低賃金の引き上げは、全米で60店舗以上を展開するファストフードチェーン店が対象となる。

日本の報道によれば、時給20ドルは州内の全業種の最低賃金16ドル(約2400円)より25%高く、全米のファストフード店でもっとも高い賃金水準となった。

賃金アップは、同州内の対象のファストフードチェーンで働く50万人の従業員に適用される。

物価高を背景に、従業員からはこのような賃金の引き上げを歓迎する声が上がる一方、小規模な事業主からは経営コストの上昇を懸念する声も上がっている。

あるフランチャイズ加盟店経営者は、メニューのさらなる値上げを余儀なくされたと主張し、商品価格がすでに5〜10%値上げされたケースも出ている。人気のイン・アンド・アウト・バーガーでも、5.65ドル(約857円)だったあるバーガー商品が賃金引き上げ後は5.90ドル(約894円)に値上がりしたと、ニューヨークポストは伝えている。

今、米マクドナルドの値段は?10年前はいくらだった?

「早くて手軽に食べられて安い」が魅力だったアメリカ生まれのファストフード。インフレ後はその価格が軒並み上昇している。

2014年の時点でマクドナルドのバーガー類の平均価格は1.19ドル(約180円)だったのが、この10年で3倍の3.19ドル(約483円)に値上がりした。チーズ入りクォーターパウンダーは10年前、5.39ドル(約817円)だったのが現在は11.99ドル(約1820円)と2倍以上になっている。

マクドナルドのビッグマック・ミール(ドリンクとフライドポテトのセット)は、ニューヨークポストによると一部のフランチャイズ加盟店で18ドル(約2730円)に到達したものもあるという。

オーサーコメント

ファストフードは安くて手軽に食べられるのが魅力だったのだが...。
ファストフードは安くて手軽に食べられるのが魅力だったのだが...。写真:イメージマート

時給の引き上げは労働者にとって良いことだけでなく、労働時間と雇用の削減につながるとの指摘もある。実際に「時給20ドルになって、労働時間を大幅に削除された」と言う声も上がっている。

また賃金上昇に対応できないファストフード店は、閉店に追い込まれるケースもある。雇用主からは「大手企業は対応できるかもしれないが、時間の経過と共にいずれ利益が出なくなれば、(小規模店舗は)閉店せざるを得ないだろう」という声が上がっている。またこの最低賃金法は、レストランビジネスを崩壊させうる要因とも見られている。「すでに地元のビジネスが閉店に追い込まれている。そしてこれはほんの始まりに過ぎない」という懸念の声も聞こえてくる。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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