大型台風8号 なぜ東側から本州に近づくのか
台風8号は次第に進路を西寄りに変えて、27日(火)頃、関東から東北太平洋側に上陸するおそれがある。台風は通常、偏西風に流されて南西から北東に進むが、台風8号はなぜ、南東海上から本州に接近するのか。これには上空の寒気が影響している。
2年ぶりに台風上陸か
大型の台風8号は25日(日)午後3時現在、東京から約1,200キロ離れた南鳥島近海を北上しています。中心の気圧は992hPa、中心付近の最大風速は20メートルです。
台風は今後、進路を西寄りに変えて、27日(火)頃、関東から東北の太平洋側にかなり接近、上陸する可能性が高くなっています。上陸すれば、首都圏に大きな水害をもたらした2019年10月の台風19号以来、2年ぶりのことです。
台風の多くは西から東へ
台風のコースは気圧配置によってさまざまに変化しますが、日本の上空には強い西風(偏西風)が吹いているため、日本列島に近づく台風の多くは南西から北東方向に進みます。
そのため、台風8号のように本州の東側から近づく台風は珍しい。台風の記録が残る1951年以降、茨城県、福島県、宮城県に上陸した台風はありません。
台風8号はなぜ、東から近づくのでしょう?
これには上空の寒気が関係しています。こちらは25日午前9時の雲画像です。これは水蒸気画像といって、水蒸気の多い所は白く、水蒸気の少ない所は黒く表現されていて、雲がない所でも大気の流れが細やかにわかる優れものです。
日本列島の西側に台風6号、東側に台風8号があります。台風6号は台風特有の渦巻きがわかりますが、台風8号は南北にのびる雲のなかにあります。台風8号の渦がはっきりしないのは風向風速が急に変化している場所にあるからです。このようなとき、台風は通常ではない発達の仕方をします。
そして、もうひとつ、2つの台風の間はU字型にへこんでいます。このへこみのなかに、何かぼんやり白いものが見えます。
寒冷低気圧が影響
これは上空の寒気によってできたへこみです。この寒気は寒冷低気圧と呼ばれ、反時計回りに回転しているのが特徴です。寒冷低気圧のまわりを吹く風によって、台風8号は南東から北西に動くのです。
寒冷低気圧が台風の動きに影響した例はほかにもあります。こちらは2018年7月の台風12号です。
台風12号は日本の南海上を左回りに北上し、三重県伊勢市付近に上陸しました。このときも紀伊半島沖に寒冷低気圧がありました。珍しい動きをしたため、迷走台風と騒がれたことを思い出します。
夏のこの時期、日本上空の風は弱く、台風は複雑な動きをしやすい。台風がいつもと違う動きをするときはその隣に寒冷低気圧が隠れています。
【参考資料】
気象庁:過去の台風資料
デジタル台風:1. 台風の上陸・接近・通過