ハイツ友の会が衝撃の解散、インタビューで語っていた「なにを評価されているのか分からない」という戸惑い
お笑いコンビ、ハイツ友の会が3月31日に解散を発表した。
清水、西野からなる同コンビは温度感が低い喋りの掛け合いが特徴的で、ネタ内容の多くは、日常で抱く違和感について二人が思うことを素直に口にし、観る者の共感を集めていくというもの。そのテンション感と会話内容はまるでドラマや映画にもなった『セトウツミ』を連想させるやるとりだった。一方『M-1グランプリ2022』敗者復活戦では、全国放送にもかかわらず“関西ネタ”である「ひらかた大菊人形」を堂々と披露。ネタのおもしろさはもちろんのこと、その挑戦的なところも含めてSNSで話題となった。
精鋭揃いのNSC大阪校41期生のなかでもハイツ友の会は「出世頭」
近年は、『第8回NHK新人お笑い大賞』(2021年)準優勝、『第57回上方漫才大賞』(2022年)新人賞ノミネート、『第44回ABCお笑いグランプリ』(2023年)、『女芸人No.1決定戦 THE W 2023』(2023年)、『第13回ytv漫才新人賞決定戦』(2024年)で決勝へ進出するなど、さまざまな賞レースで結果を残していた。
さらに、キャツミ、タイムキーパー、cacao、三遊間、ファンファーレと熱狂など、ピン、コンビ、トリオまで注目の若手芸人が続々登場し、精鋭揃いとされているNSC大阪校41期生のなかでも、ハイツ友の会は「出世頭」で知られていた。『第13回ytv漫才新人賞決定戦』準優勝のNSC42期生・ぐろうにインタビューした際も、「僕たちは、ハイツ友の会さんなどの41期生の勢いを目の当たりにしています。それに追いつこうとしていることが、力が付いている理由だと思います」と、1期上の先輩の存在が刺激になっていると明かしていたほど。
ハイツ友の会は、大阪の実力ある若手芸人のなかでも特に象徴的な存在。それだけに今回の解散発表は大きなショックを与えた。
「笑ってもらうことが一番、それ以外の感想はどう感じたら良いのか分からない」
ただ西野がXで投稿した解散発表の文章を読んで、「今思えば、あのインタビューのときのコメントはそういうことだったのか」と、解散について「納得」できるものもあった。
筆者は2023年夏、『第13回ytv漫才新人賞決定戦』決勝進出を決めた直後のハイツ友の会へインタビューをおこなった。清水、西野は、漫才中とほとんど変わらないテンション感で取材に対応。そこで西野は、賞レースで良い結果を残せるようになったことについて「なにを評価されているのか分からないことが続いているんです」と今にも消え入りそうな声でポツリとそう語った。
さらに「笑ってもらうことが一番なので、それ以外の感想をいただいたとき、どう感じたら良いのか分からないんです」とつかみあぐねているものがかなりあるようだった。その上で「自分なりにそれが分かった方が新しいネタを作るときに参考になるはず。だからどんなところが評価されているのか、自分なりに見えてきたら良いなって思います」と今後の課題を口にしていた。
“解散ラッシュ”のなかでもハイツ友の会の解散劇は最大級の驚き
今回の解散発表でも西野は「決勝まではいけても優勝できる気がせず、特にこの1年間本当に苦しかったです」と気持ちを吐露。さらに「様々な言葉をかけていただきますが、今の漫才やコントの形を変えると自分たちのやりたいネタではなくなります。ですが今の形のままだと優勝できません」と、周囲の評価と自己評価に激しいギャップがあることをうかがわせた。
歯切れはそれほど良くない…というより、賞レースについてインタビューでいろいろ尋ねられることに、どこか苦しみがあるように見えた。ただ今回の解散発表のコメントを読むと、その苦しみの意味がなんとなく理解できた。
西野は今後、ピン芸人として活動を続行。そして清水は芸人を辞めると報告した。2023年から2024年3月にかけて、和牛、尼神インター、ANZEN漫才など全国的に名前がよく知られているコンビが解散した。しかし、若手コンビのなかでも特に将来を期待されていたハイツ友の会の解散劇は、もしかするとこの“解散ラッシュ”のなかでも最大級の驚きと言えるかもしれない。
解散にはそのコンビの事情がもちろんいろいろあるはず。それでも劇場などで何度もハイツ友の会の漫才やコントで笑ってきた者として、この解散発表は残念の一言に尽きる。