なぜチェルシーは“461億円”で大型補強を行なったのか?ムドリク、エンソ…ポッターに課された使命
記録的な補強が、行われた。
欧州で冬のマーケットが閉幕した。積極的に動いたのは、チェルシーだ。8選手を確保して、シーズン後半戦に向けてチームを強化している。
チェルシーは冬の移籍市場で、3億2950万ユーロ(約461億円)を補強に投じた。
エンソ・フェルナンデス(移籍金1億2100万ユーロ/前所属ベンフィカ)、ミハイロ・ムドリク(7000万ユーロ/シャフタール・ドネツク)、ベノワ・バディアシレ(3800万ユーロ/モナコ)、ノニ・マデュエケ(3500万ユーロ/PSV)、マロ・グスト(3000万ユーロ/リヨンに再レンタル)、アンドレイ・サントス(1250万ユーロ/バスコ・ダ・ガマ)、ダビド・ダトロ・フォファナ(1200万ユーロ/モルデ)、ジョアン・フェリックス(レンタル/アトレティコ・マドリー)が加入。大型補強が行われた。
■アルゼンチン代表のボランチの加入
インパクトが大きかったのは、E・フェルナンデスの獲得だ。
E・フェルナンデスは、この夏にリーベル・プレートからベンフィカに移籍。欧州のフットボールに素早く適応してベンフィカで主力となり、カタール・ワールドカップに臨むアルゼンチン代表メンバーに滑り込んだ。
カタールW杯では、リオネル・スカローニ監督が大会途中にメンバー変更とシステムチェンジを検討して、E・フェルナンデスにアンカーのポジションが任された。そこからアルゼンチンは息を吹き返して、決勝で激闘の末にフランスを破り、優勝を飾った。
チェルシーは現在、エンゴロ・カンテが負傷で長期離脱を強いられており、不在となっている。また、ジョルジーニョ が「玉突き移籍」でアーセナルに移籍。それでも、チェルシーはE・フェルナンデスの獲得を必要としていた。
ただ、E・フェルナンデスの獲得を巡っては、一悶着あった。
「エンソはクラブに対してコミットメントを示していなかった。お金を失ったとしても、残りたくないと思っていた。それを知った時、私はもう彼はベンフィカでプレーできないと悟った」とはベンフィカのルイ・コスタ会長の弁だ。
「我々が目指しているのは、クラブに対してコミットメントを示すチームを作ること。私は、これ以上、エンソにベンフィカのユニフォームを着て欲しくなかった。ベンフィカを代表したいと思えない選手について、涙を流すことはない」
だが、先述の通り、チェルシーはそこまでしてもE・フェルナンデスを獲得したかった。
今季のチェルシーはマテオ・コバチッチ、デニス・ザッカリア、カーニー・チュクエメカ、ルベン・ロフタス・チーク、コナー・ギャラガーらがボランチのポジションでプレーしてきた。そこにE・フェルナンデスが加わり、中盤の安定感は増すはずだ。
■オーナーの交代と投資
チェルシーは今夏、オーナーの交代を行なった。政治情勢の影響でロマン・アブラモビッチ氏が退任。アメリカ人実業家のトッド・ベーリー氏が新たに就任した。
チェルシーは夏の移籍市場で2億8200万ユーロ(約394億円)を補強に投じた。ヴェスレイ・フォファナ、マルク・ククレジャ、ラヒーム・スターリング、カリドゥ・クリバリ、チュクエメカ、ピエール・エメリク・オーバメヤン、ガブリエル・スロニナ、ザッカリアがロンドンに到着した。
今夏と今冬の移籍市場で、チェルシーが補強に投じたのは6億7700万ユーロ(約947億円)だ。
これはバルセロナ(2017−18シーズン/3億8010万ユーロ)、レアル・マドリー(2019−20シーズン/3億5550万ユーロ)、マンチェスター・シティ(2017−18シーズン/3億1750万ユーロ)を抜いて、史上最高額の補強費である。
無論、グラハム・ポッター監督に求められるのは、各大会で好成績を収めることだ。
具体的には、プレミアリーグで4位以内に入り、来季のチャンピオンズリーグ出場権を獲得することだ。そして、今季のチャンピオンズリーグでは上位進出を果たすーーできれば優勝ーーことである。そのために、ラウンド16のボルシア・ドルトムント戦は非常に重要な一戦になる。
チェルシーは多くの優秀な選手を抱えている。
プレミアリーグでは、テレビ放映権が基本的には各クラブに均等分配される。昨季のテレビ放映権収入の30億ユーロが、20クラブに分配されている。また、プレミアにおいては、ラ・リーガ(スペイン)のように厳しいサラリーキャップ制度があるわけでもない。近年、外資の参入(外国人オーナーの就任)も盛んで、それが他国リーグのタレントのプレミア流出へとつながっている。
チェルシーが大型補強を敢行したーー。派手な見出しが、ニュースで躍る。しかし、バブルが弾ける前ではないが、実はこれは危険な兆候なのではないか。物事の背景に目を向けなければ、本質は見えてこない。