冬のアウトドアレジャーに役立つ!山岳ガイドの重点チェックポイント 滑らない道具編
雪のニュースが入ってくる季節です。低山にも雪が積もる時期なので雪山挑戦!という方もいるかと思います。どのような道具も使い慣れが必要であることは言うまでもありませんが、雪上で滑らない道具のアイゼンをご紹介します。
日本は真夏に摂氏40度を超すような酷暑と冬に一晩で100cmを超すような降雪もある地球上でも稀な国土なのです。
日本に生まれ育っているので気がつきにくいですが、皆さんのお住いの地域の四季はどんな特徴があるでしょうか。
雪が降る気象条件は当然のことながら低温が必要です。平地でも雪となる一つの目安は850ヘクトパスカルの上空1500m付近において摂氏マイナス6度以下の寒気が流入した時です。
最近では天気予報やニュースに良く出てくる言葉なのでお気づきの方も多いかと思います。
一般的に標高が100m変わると0.65度気温が変化するので、上空1500mではその差は10度程度です。つまり、平地でも雪が降る目安である上空1500m付近がマイナス6度の場合、海抜ゼロメートルでは摂氏4度程度です。
真冬に真っ白な雪の中にいるときでも、場所によってはプラスの気温のこともあります。
意外ですね。
⇒ 冬期、冷たく乾いた大陸からの空気は日本海でたっぷりと水蒸気を貯め込んだ後、日本の山岳地帯に吹き付けます。山腹に沿って上昇した湧き上がる雪雲がたくさんの雪を降らせます。
日帰りの雪山から北アルプス氷雪の山で使う道具をご紹介します。
基本は登山靴です。雪があってもスリップや転倒、滑落などの危険が極めて少ない場合なら、登山靴だけで雪上を歩くことも多いです。
雪山登山で使う登山靴が夏用に比べて大きく違うのは靴底裏ゴムのブロックパターンと彫りの深さでしょう。
大きなブロックパターンを持つ靴底は雪をしっかり踏み込むことで雪を捉えます。
ブロックパターンで固めて「雪柱」をつくり、前進力を生み出します。これを「雪柱せん断力」といいます。加えてゴムが低温下でひっつこうとする「凝着摩擦力」と、ブロックパターンの「エッジ効果」などがあるために滑りにくくなっています。
夏のハイキングシューズや使い込んですり減った登山靴ではこれらの能力に差があるということを認識しておきましょう。
しかし、靴底が全く喰い込まず接地面積も小さい氷上では前進する十分な駆動力が得られません。
そこで必要となるのが登山靴の底に装着するチェーンアイゼンやアイゼン(クランポン)と呼ばれる金属の爪を持った道具です。種類も爪の形状も様々なので、タイプ別に説明していきます。
*以下、アイゼン(クランポン)はアイゼンと記述します。
チェーンアイゼンが活躍するのはどのような場面でしょうか。
写真にあるような圧雪され、所々が融雪と凍結によるアイスバーンになっているところが最も適しています。
1月から2月頃、標高1000m前後の少ない積雪エリアの北面や沢形状で陽が差し込まないコースにおいて氷が登山道を覆っている場合に活躍します。
具体的には
八ヶ岳などの林道や関西なら六甲山や金剛山など良く管理された靴底をフラットに置くことができる登山道です。
チェーンアイゼンの優位性
1:靴のタイプを選ばずにラバーの張力で装着できます。サイズはSMLあります。
2:片手に載せられるほどコンパクトで軽量です。
チェーンアイゼンの危険性
標高が高い積雪期山岳エリアでは使いません。
1:爪は鈍角で短く、氷には刺さらず、深雪には長さが足らず、支持力が不足でスリップ・転倒そして滑落のリスクが高まります。
2:ラバーで装着する為、登山靴との一体感に弱く、急斜面では横ずれしやすいです。
前爪付10~12本爪アイゼンが活躍する場面はどこでしょうか。
美しい景色は山上にあり。
雪は地表に舞い降りたのちにその結晶構造は変化していきます。風上から風下へ雪粒は移動し吹き溜まっていきます。太陽の熱は雪を融かし、寒気はあらゆる水分を凍らせます。
アイゼンは変化する雪がつくりだす美しくも危険な世界に行くためには必携です。
ガラスのように堅く締まった堅雪やそれを覆う雪の層に対応できるのは、鋭利に尖った長い爪を持つ冬山用アイゼンしかありません。
注意:この領域の山岳では合わせてピッケル(アイスアックス)とコンビネーション技術が必要となります。
歩き方の基本
1:雪の有無に関係なく、靴底を雪の斜面に対してフラットに押し付けること。
2:歩幅はいつもより狭くして体重移動距離を小さくすること。
3:登山道の雪、氷、泥、砂、岩など靴底に接する物体を確認して足を置くこと。
4:アイゼン装着歩行に身体が慣れるには実際に歩くことが必要です。イメージトレーニングでは不十分です。
5:直登・直下降・左斜登高・右斜登高・左斜下降・右斜下降・水平トラバースなどに加えて、雪質(堅い・柔らかい)や傾斜など、条件が変わっても安定して歩けるように練習が大切です。一つとして全く同じものはありません。
装着の基本
1:ロングゲーターを付け、冬用登山靴に合わせて留め具から20cm程度になるようストラップを切断しておくこと。(炎で溶かして末端処理しておきます。)
2:安定した場所で行うこと。
3:低温障害と怪我を防ぐために手袋をつけてでもできるように慣れること。
今回は冬に行うアウトドアスポーツを安全に楽しむ登山用品、氷雪上で使うアイゼンを紹介しました。
良い休日をお過ごしください。