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「大谷選手はエンゼルスと次の契約を結んではいけない。彼は大舞台向き」と地元LAタイムズが訴えるワケ

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エンゼルスのお膝元で発行されている有力紙ロサンゼルス・タイムズのコラムニスト、ディラン・へルナンデス氏が、「ショーヘイ・オオタニのWBCでの抜きん出た活躍は、彼がエンゼルスを後にしなければならないことを証明している」と題するコラムでの中で、大谷翔平選手は一選手であることを超えて、野球界そのものを牽引していくビッグな存在になったと言わんばかりに大谷選手を大絶賛、大谷選手はエンゼルスと次の契約を結ばずに前に進まなければならないと訴えている。

「もはや、何が大谷翔平にとってベストなのかということではない。何が野球にとってベストなのかということが重要だ。大谷は、エンゼルスと次の契約を結んではいけない。今度の冬、大谷は前に進まなければならない。彼は毎年10月、野球するチャンスをオファーしてくれるチームへと前進しなければならない。彼の才能がそれを求めている。彼のメンタリティーがそれを強く求めている。彼は大舞台向きにできている」

 へルナンデス氏の感動と興奮は続く。

「大谷がトラウトを3振で打ち取った後、グローブとキャップを放り投げた姿はなんと爽快だったことか。彼がトーナメント中、スマイルしていたのを見てなんと楽しかったことか。これは毎年10月起きることになるかもしれない。毎年10月に起きるべきだ。野球界はこんな大谷を見るのを、次のWBCまで後3年待つ必要などない」

 さらには、「彼は日本のベストなプレイヤーであるということを超えた。彼は、チームのリーダーとなった」と大谷が試合前にチームメイトたちにした、「憧れるのをやめよう。ファーストにはゴールドシュッミトが、センターにはマイク・トラウトが、外野にムーキー・ベッツがいる。野球をやっていれば、誰でも知っている選手たちがいる。今日一日だけは憧れてしまったら彼らを越えられない。僕たちは、彼らを越え、トップになるためにここに来た。今日一日は、彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけを考えよう」という名スピーチに、大谷選手に強いリーダーシップ性を見出している。

 また、へルナンデス氏は、大谷選手がMLBネットワークに対してマウンドにあがった時の心境を「心臓が飛び出すかと思った。でもマウンドにあがったら、野球に恩返しをするためにベストを尽くしたかった。緊張していたが、それ以上に、感謝していた」と話したことについて、「こうやって大谷は、彼に多くを与えてきた野球に恩返しをしている。彼は、今度の冬、WBCの舞台が彼に与えてくれたようなものを彼に与えてくれる新たなチームを見つけられる。そこが、彼がいるべき場所だ。そこが、彼のレガシーと彼が愛する野球のために、彼が最高の野球ができる場所だ」と大谷選手が最高の野球ができるチームが彼のいるべき場所だと締めくくっている。

 へルナンデス氏は、以前、筆者のインタビューに対し、アメリカで活躍する日本人アスリートたちが日本のイメージアップに大きく貢献していると述べていた。

「日本人スポーツ選手は、基礎ができていてしっかりしているというイメージはもちろん、アメリカのスポーツ選手に比べると礼儀正しく、インテリだという印象も与えています。

 僕はダルビッシュ投手に何度かロング・インタビューをしましたが、記事を書くたびに、読者から“こんなに頭がよくて、精神的にも安定していて、素晴らしい選手がいるのか”という感動のコメントが寄せられます。日本人スポーツ選手は日本のイメージアップに貢献しているのです」

 「失われた30年」を超えて続く日本経済の低迷や世界的に低い出生率など、日本に関する世界の報道は決して明るいものではない。中国をはじめとするアジア諸国が国力を強める中、世界における日本のプレゼンスが失われつつあるのを感じている。そんな中、大谷選手をはじめ日本人選手たちのWBCでの大活躍で、日本は今、世界から大きなスポットライトを浴びている。大谷選手らの活躍がくれた自信と勇気と誇りを糧に、日本の人々も低迷の中で萎縮することなく、前進する時がきたのではないか。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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