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大谷翔平選手が“運のいい人”である3つの理由 米大リーグMVP獲得!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
笑顔たくさんの大谷翔平選手。運のいい人が笑う回数は悪い人の2倍という実験結果も。(写真:つのだよしお/アフロ)

 ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が満票でアメリカン・リーグのMVP(年間最優秀選手賞)を獲得した。何が大谷選手を大きな成功に導いたのか?

 「異次元」とまで表現される実力と野球愛の強さはもちろん、大谷選手は成功するのに必要な“運”も持っているように思う。そして、“運”は大谷選手が重視しているものの一つだ。大谷選手は、高校1年の時に目標達成表を作り、目標を達成するために必要な8つの要素の一つに“運”をあげているのである。

“運”の良し悪しを決めるものとは?

 そんな“運”はどこから来るのだろう?

 「フレンドリーで、明るく、オープンなところが人を惹きつけているんだと思います。大谷選手は一言でいえばナイス・ガイなんです」

とロサンゼルス・エンゼルスのファンサイトを運営しているジェシカ・デラインさんは大谷選手の人柄を絶賛しているが、“運”を呼び込む秘密は大谷選手の人間性に隠されていそうだ。ちなみに、大谷選手は前述の目標を達成するために必要な8つの要素の中で、“人間性”もあげている。(“運”と“人間性”以外の要素としては、“体づくり”、“メンタル”、“コントロール”、“キレ”、“スピード160キロ”、“変化球”をあげている) 

 実際、人間性は“運”を左右するところがあるようだ。

 心理学では、人の性格は一般的に「協調性」「誠実さ」「外向性」「神経症的傾向」「開放性」という5つの特性の組み合わせによって違いが生み出されているとされているが、運の良し悪しを様々な実験を通して科学的に検証している心理学者のリチャード・ワイズマン博士は世界的ベストセラーとなった著書『運のいい人の法則』の中で、運のいい人と悪い人とでは、「協調性」「誠実さ」では大きな差はないものの、「外向性」「神経症的傾向」「開放性」という3つの点において大きな差があると指摘している。

 ワイズマン博士によると、運がいい人は「外向性」があり人々と出会うことで新たなネットワークを構築してチャンスに巡り合う可能性が高く、「神経症的傾向」が弱いため緊張や不安をあまり感じず落ち着いていることからチャンスに気づきやすく、また「開放性」が高い、つまりオープンであることから古い因習に囚われることなく新しい経験を受け入れたり新たに挑戦したりすることでチャンスに巡り合う可能性も高まるというのである。確かに大谷選手は、この3点において、まさに、“運のいい人”を体現しているように思う。

大谷選手が高校1年の時につくった目標達成表。運や人間性も重視している。きちんとした手書きの文字からは大谷選手の几帳面な人柄も感じられる。出典:dime.jp
大谷選手が高校1年の時につくった目標達成表。運や人間性も重視している。きちんとした手書きの文字からは大谷選手の几帳面な人柄も感じられる。出典:dime.jp

“運のいい人”は笑う回数が2倍

 第一に「外向性」の点でいうと、大谷選手がフレンドリーなことはチームメイトと交わる様子からテレビ画面を通してもひしひしと伝わってくる。筆者がこれまで話をきいた人々も「チームメイトとも笑い合い、チームにいい雰囲気をもたらしている」「話しかけやすく好かれるタイプ」「彼の周りはいつも和気藹々とした和やかな雰囲気が流れている」「そこにいるだけで雰囲気が良くなるようなものを持っている」など大谷選手の好感度の高さを絶賛する声をあげている。

 好感度が高い人は応援したくなるものだが、大谷選手は、“運”を高めるのに必要な要素の一つに「人から応援される」ということもあげている。

 「日本にいた頃よりも笑顔が増えている」とも言われている、笑顔をたくさん見せる大谷選手だが、笑顔も“運”を呼び込むには重要な要素のようだ。ワイズマン博士が行った実験によると、笑った回数は、運のいい人の方が2倍多かったという。

 ちなみに筆者は日本人選手がアメリカメジャーリーグにデビューする草分けとなったロサンゼルス・ドジャースの元投手野茂英雄氏の取材をしていた時期があるが、野茂氏は近寄りがたいようなクールさが魅力だった。そんな同氏について、エンゼルスの元投手長谷川滋利氏が「当時、野茂さんの寡黙なところはアメリカの人々にカッコいいと思われていたんです。アメリカ人は一般的におしゃべりなタイプが多いからです。野茂さんはそうではなく、“黙って俺の背中を見てついてこい”みたいなタイプでした。最も、ベーブルース時代のアメリカも、笑顔でプレイするのではなく寡黙に頑張るタイプの選手が多かった」と指摘したことが印象に残っている。野茂氏とはある意味対照的な大谷選手だが、時代とともに、選手の持つ雰囲気も変わっているのかもしれない。

リラックスが“運”を呼び込む

 第二に、大谷選手は、“運の悪い人”に見られるとワイズマン博士が指摘するところの「神経症的傾向」も漂わせていない。大谷選手は、“運のいい人”に見られるという、肩の力を抜き、落ち着いた姿勢を見せており、そんな姿勢もチャンスに結びついているように思う。

 15日に行われた記者会見でも「寝ている時とか、なんかいけそうだなというのが出てきたりするのがいちばん、やっていておもしろいなと。次の試合で試してみようとか、というのがやっていていちばんおもしろいところかなと個人的に思っています」と寝ている時やふとした時にひらめきが起きることを示唆していたが、心がリラックスしているからこそひらめきが生まれ、それがパフォーマンスに結びついているのだろう。

 第三に“運のいい人”に見られるという「開放性」も大谷選手は備えている。渡米したこと自体、「開放性」の表れだ。渡米を決めた大谷選手は、当時「なんでアメリカに行かなきゃいけないんだ」と問いただされたというが、それに対し「行くことが大事なんです。成功するとか失敗するとかは、僕には関係ない。やってみることの方が大事なんです」と新しいことに挑戦するオープンな姿勢を見せていた。

 持ち前のフレンドリーさで人々を惹きつけ、リラックスした心で物事に対処し、新しいことにオープンにチャレンジする。MVP受賞の背景には、“運”を呼び込む大谷選手の人間力があるのではないか。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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