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帝京大学・岩出雅之監督 春季大会3連勝、「一発勝負」の日本選手権を語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

大学選手権6連覇中の帝京大学ラグビー部は、現在、関東大学春季大会で開幕3連勝中。主力を欠きながら、隙の見つけづらい試合運びを続けている。

目指すは学生王者と、そして日本一だ。

このほど、ラグビーシーズンを締めくくる日本選手権のフォーマットが変更。前年度まで各カテゴリーの複数チームが頂点を争うトーナメント形式だったが、今季から「トップリーグ(国内最高峰リーグ)王者対学生王者」という一発勝負となった。

今季は4年に1度のワールドカップ(イングランド)が10月まであり、トップリーグは11月中旬に開幕予定。来年度からは南半球最高峰のスーパーラグビーに日本拠点のチームが参戦するとあって、かねてから大会の日程やあり方について見直しが求められていた。

前年度の日本選手権では、帝京大学が9季ぶりのトップリーグ勢撃破を果たして話題をさらっている。

2月8日、東京・秩父宮ラグビー場。トップリーグで10位だったNECを31-25で下した。続く15日には同3位の東芝に24-38で屈したが、敗れた岩出雅之監督がこう前を向いていた。

「(1回戦で)勝ったことに満足しないという挑戦心を奮い立たせる。監督がそれをイメージした計画を立てる。そうすれば、我々にも微笑むチャンスはあったのではと思います。現実的じゃなくても、高い目標設定を置かないと」

遠回しにではあるが、当時から今季の目標を日本一としていた。

5月24日、春季大会第3戦で東海大学を59-19で下した後、指揮官が単独取材に応じた(東京・帝京大学グラウンド)。

以下、一問一答。

――まず、東海大学戦の感想を聞かせてください。

「こちらのメンバーが若いのでね(この日の出場選手中、前年度のレギュラーはわずか数名)。彼らが自身を持つゲームになってくれたら…と臨んだのですが。まだまだ、ガツガツ行く感じが少ないような。もっと、自分に自信を持つようになってくれたらいいと思います」

――今季から初めて主力組に入った選手も。

「そう。たくさんいるでしょう」

――この日の収穫は。

「Bチーム(控え)レベルだった選手が、相手のAチーム(主力)に対して十分やれたと感じた。それが収穫かな」

――例えば、3年生のフランカー上原充選手。過去2戦で力強いタックルを連発し、期待されての先発でした。

「うん。頑張ってたね。ただ、(他選手も含め)コンスタントに頑張らんと、Aチームには止まれんよ」

――常に安定した高いパフォーマンスを、と。

「そう。特に3、4年はね。1、2年は我慢するけど」

――1年生といえば、竹山晃暉選手。ここまで3戦で11トライです。

「あいつはもう、別格よ。モノが違う。男前だし、メディア的にもいいんじゃないですか」

――話題を変えますが、日本選手権のフォーマットが変わったことへの感想を。

「まず、そこの場所に行けるように。そこまでの積み上げをしっかりやります」

――去年、チャンピオンを争う東芝と戦った印象は。

「去年は、去年。今年は、こういう相手と戦うということを、ちゃんと想定するということです」

――確かに、あの日の敗戦後もそうした発言をしていました。

「(頷く)」

――その観点で、いまの準備期間に意識していることはありますか。

「全てのプレーの質を上げる、ということ。何となく、偶然勝つということはないので」

――偶然はないからこそ、必然的に勝てるように練習の質を上げるのですね。全てのプレーで求める基準値を上げる、というか。

「基準値を上げるというより、理解するということじゃないですか。いいプレーも、悪いプレーも、それがなぜ生まれたのかをちゃんと理解する。そして(悪いプレーを具体的に)修正する。その力がなかったら、雑になってしまう。焦らず、しかし全てを貪欲に。あ、焦らないということが大事かな。ものの捉え方、試合への臨み方、試合中に起こったプレーへの対応も含めてね」

――精神状態の起伏を平らにすべき…。こうも言っていましたね。

「そういうこと。自信をもって、それでも驕らずに」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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