WOOYOUNG(From 2PM) 前作と180度違う音楽性の新作に感じる、表現者としての懐の深さ
2PMといえば昨年10月の東京ドーム公演を最後に、グループとしての活動は一旦ストップしているが、メンバーの日本でのソロ活動は活発だ。Jun. K(ジュンケイ)、JUNHO(ジュノ)、WOOYOUNG(ウヨン)、TAECYEON(テギョン)がミニアルバムを発売し、積極的にライヴツアーを行っているメンバーもいる。当たり前だがそれぞれ異なる音楽性が楽しめるが、10月11日に2ndミニアルバム『まだ僕は…』をリリースした、WOOYOUNGの音楽性の振り幅の広さには驚かされる。デビューシングル「R.O.S.E」(2015年)ではR&B、ファンクテイストを感じさせてくれ、今年4月にリリースした1stソロミニアルバム『Party Shots』では、トラップやEDMを取り入れたパーティーチューンを聴かせてくれ、全く違う音楽性を感じさせてくれた。そして『まだ僕は…』では、前2作と音楽もビジュアルも一変。シンプルで優しいオーガニックな音楽を聴かせてくれる。この大きな変化は、表現者としての興味の幅の広さなのか、心境の変化なのか、それとも性格からくるものなのか、このバラエティに富んだ指向性について、このアルバムを引っ提げたツアー直前(現在はツアー中)の本人に聞いてみた。
「経験の幅が広がり、趣味や関心の幅も広がってきた」
――今回の作品についての取材では、必ず聞かれたと思いますが、今回の『まだ僕は…』では、1stシングル、1stミニアルバムと全く違う音楽性、表情を見せてくれていますが、これはひとえにウヨンさんの興味の広さという事なのでしょうか?
ウヨン それもありますし、経験の幅が広がったことによって、趣味や関心の幅も広がってきたのだと思います。
――『まだ僕は…』では、打ち込みとピアノだけというシンプルなサウンドが中心で、でもシンプルだけど色々と想像させてくれるサウンドだなと思いました。元々こういう音楽が好きだったのでしょうか?
ウヨン 映画音楽がすごく好きで、聴いていると色々なシーンが浮かんでくるじゃないですか、イマジネーションを掻き立てられるというか。映画音楽が持つテンションや、重量感のようなものに、影響を受けているのかもしれません。
――まず1曲目の表題曲は、すごくシンプルな構成で、打ち込みとピアノがメインで、ピアノの音色が美しくて心にスッと入ってきますが、まずはこの曲が柱になって、アルバム全体の構成が決まっていったのでしょうか?
ウヨン 「まだ僕は…」は最初にできた曲で、でも元々は今の収録曲よりも、もっと全体的にヘビィなダンスナンバーが揃っていました。歌詞ももっとシリアスで、人生を語るような切迫した、切実な重い内容になっていました。でも途中で方向性を変えて、甘くて、ラブストーリーが含まれたようなものにして、全体のテンポも変えました。
――全体的に内省的というか、内向きな歌詞が多いと思いますが、今、自身が色々考える時期、内向きな時間の中にいるという感じですか?
ウヨン そうだと思います。それを外に吐き出すにしても、表現するにしても、自分の中にある、小さなストーリーやささやかな事に、より集中をしていた時期だと思います。まさに4月にリリースした『Party Shots』は外に向けたもの、今回の作品では内に向かっていくものが表現されていると思います。
――半年でミニアルバム2枚という、早いペースです。
ウヨン 本当に死ぬかと思いました(笑)。
「最初はもっとヘビィな音楽を用意していたけど、一旦立ち止まって色々と考え、大きく方向転換しました」
――2曲目の「STAND BY ME」は、ゆったりしたテンポのラブソングですが、どういう思いを込めて作った曲ですか?
ウヨン この曲と「I CAN’T BREATHE」と「AND END」の3曲は、僕の音楽制作のパートナー、ライアンさんという作曲家の方に書いてもらいました。実はさっき言ったように、もっとヘビィな曲を作っている時に、ライアンさんが書いてくれたこの3曲を聴いて、なぜ僕はこんなにもヘビィな音楽ばかりやろうとしていたのかと、ふと立ち止まりました。この3曲が本当によくて、その音楽性にすっかりハマってしまって、ヘビィな音楽もいいけど、バランスも大事だと思いました。果たしてファンの皆さんが、僕がやろうとしているヘビィな曲を聴いた時に、どんな風に受け止めるのかを考えると、この3曲のような雰囲気の音楽を作った方が喜んでもらえるのでは、という気持ちもありました。別れの曲もあれば、ラブソングもあって、どれも歌がスウィートでいいと思うし、ファンの方にも喜んでもらえると思いました。でもすごく悩みました。なぜかというと、僕は音楽に対してはすごく頑固でプライドが高いと思っていて、最初に決めた事から変えるという事について、悩みましたが、結論としてはいい音楽はいいんだと思える自分が、すごくいいなと思えたので、この3曲を入れる事にしました。でも時間がない中での方向転換、決断だったので、本当に大変でした。
――「二人だけ」は、ムーディーで、この曲もそうですが全体的にコーラスに力を入れ、こだわってる印象がしました。
ウヨン コーラスはとても大切だと思います。音楽において本当に重要な要素だと考えていて、それをどう作るかによって曲の雰囲気が全く変わっていきますよね。
――「LAZY DAY」はハッピーな雰囲気の曲です。
ウヨン みんな頑張っている、一生懸命働いてる日常の中に、僕の正直な気持ちを投げかけました。
――「MORE」は今っぽいサウンドで、他の曲がエバーグリーンっぽいものが多いので、目立っていますが、バランスは取れていますね。
ウヨン そうなんです。この曲はアップテンポなので、考え方によっては全体の流れを壊すのでは?という見方もあると思いますが、メッセージ的には希望が感じられる内容になっていて、ありのままの自分というものを表現してみたかったんです。縮こまらずに、伸び伸びと生きてくださいという気持ちを込めました。
「自分への問いかけ、それは聴いて下さっている方への問いかけでもあって、思いを共有したい」
――自分に問いかけ、自分を見つめながら、聴いてくれる人にも考えて欲しいと投げかけています。
ウヨン 僕にとってそれが最も意味のあることで、絶えずそれについて考えています。自分自身に問いかけている事、自分が感じている事、これはみんなも多分同じ人間として感じていることだと思って書いています。だから何かストレスがあれば、それを自分で語ることによって一緒に解消していきたいですし、何か感じた事があれば、それをみんなと一緒に思い出として共有していきたい。それはとても意味のあることだと思います。
――2PMにとっても、ファンにとっても、とても大切な曲「天の川~GALAXY~(WOOYOUNG ver.)」(ウヨン作曲/初回生産限定盤Bにのみ収録)を入れた理由を教えてください。
ウヨン この曲を歌うたびに、胸に熱いものが込み上げてきて、自分の感情に集中しすぎて歌うのが難しい曲です。東京ドーム(2016年)でメンバーと一緒に歌った時は、熱いものが込み上げすぎて、歌うことすらできませんでした。今回のミニアルバムで、この曲を歌うことで僕自身が一人でメンバーの事を思い起こしたかった、という気持ちもあったと思います。本当にこの曲は僕にとって特別な曲で、ライヴで果たしてこの曲を歌える日が来るのだろうかと思うほど、プレッシャーを感じる曲でもあります。だからせめてレコーディングを通じてでも、勇気を出して歌って、形に残しておきたかった。僕の歌声で作っておきたかった特別な曲なので、今回収録しました。
「ソロライヴは、2PMのメンバーに代わってステージに立っているという思いが、より強くなっている」
――今までのソロ活動は、本体=2PMがあった上での活動だったと思います。そういう意味では、ソロ活動への向き合い方、感じ方は変わりましたか?
ウヨン 僕にとってはその境界、区別というのが、今となっては意味のないものになりました。それは、ソロでステージに立ってはいますが、僕の名前には「From 2PM」という文字が付いていて、僕自身が2PMなんだという意識が、ある時期から芽生えてきました。だからいつも僕の中には2PMを代表して、2PMに代わってステージに立っているという気持ちがあって、いつもメンバーの事を考えながら歌やダンスをやっていて、それが僕の中にはしっかり明確なものになって存在しています。ソロ活動の準備、ライヴの準備をしている時も、2PMに代わって、2PMとして僕はステージに立つんだという気持ちで臨みました。
――きっと今までもファンの方は、ウヨンさんのソロライヴで他のメンバーのことを思い出していたかもしれないですし、これからはその気持ちがより強くなって、メンバーの影をウヨンさんを通して追うようになるかもしれませんね。
ウヨン 今、質問していただいて、より気づかされたというか感じるのが、自分でも気づかないうちに、そんなことを意識していたような気がします。だからこそファンの皆さんがライヴに来た時に、少しでも淋しく、悲しくならないようにしたいという気持ちが根底にあるような気がします。僕を通じてメンバーの存在を一緒に感じながら、淋しかった気持ちが慰められたり、みなさんの悲しみが少しでも癒されるように努力したいという気持ちが、知らず知らずのうちに、僕の中にあったんだなというのを、今改めて思いました。
作品によって音楽、ビジュアルの大きな変化も、ライヴという場があるので、理解してもらえると思う
――責任重大ですが、でもそんなに気負わず、ウヨンさんらしさを感じられるステージの方が、ファンの方は喜んでくれると思います。ウヨンさんらしさといえば、当たり前ですが音楽性が変わるとアー写もジャケ写もガラッと変わりますが、これはファンの方は混乱しないですかね(笑)?
ウヨン おっしゃる通りです(笑)。間違いなく混乱していると思います。これでライヴがなければ、恐らくファンの皆さんを混乱させたままで終わってしまうと思いますが、ライヴというチャンスがあるので、そこでわかっていただけると思いますし、もっと色々な事にチャレンジできる気がします。
――ウヨンさんというと、そのしなやかなダンスが武器だと思いますが、『まだ僕は…』はテンポが遅めの曲が多く、ダンスでの表現が難しくないですか?
ウヨン そうなんです、難しいです。へたをすると、ちょっと笑えるような感じになってしまうかもかもしれません(笑)。
「今、日本のシティポップ、レコードにハマっています」
――これだけ違う音楽性を見せられて、果たして次はどうくるんだろうという楽しみがありますが、ちなみに今ハマっている音楽はありますか?
ウヨン 日本のシティポップにハマっていて、はっぴぃえんどさん、山下達郎さん、大貫妙子さんの音楽をよく聴いています。
――今日本でも70年後半~80年代のシティポップに影響を受けているバンドやミュージシャンが増えています。次の作品のキーワードはシティポップですね(笑)。
ウヨン シティポップは聴きやすいんですけど、難しい曲が多いです。ちゃんとやらないと、ただのマネになってしまいます。最近坂本龍一さんの自伝を読んでいるのですが、山下達郎さんと昔一緒に音楽をやっていた時の話が出ていて、すごく不思議な気持ちになりました。僕の好きなミュージシャンが、今は全く違うジャンルだけど、昔は同志として音楽をやっていたということも素敵だと思うし、色々な事を感じながら、そういうものを通じて日々勉強しています。
――韓国の自宅でもレコードを聴くんですか?
ウヨン 聴きます!日本に来た時、時間があればレコード屋さん巡りをしています。でもコレクタータイプではないので、まだ枚数はそんなには持っていません。僕はシティポップを聴きながら一人でダンスを踊っています。いつかこの音楽でライヴでみなさんにダンスをお見せすることができたら、それはすごく美しい事だと思います。
――ここまで180度違う顔というか違う音楽性を見せられると、シティポップだけでなく、どんな音楽を聴かせてくれるのかが楽しみになります。
ウヨン 逆質問してもいいですか?作品によって、全く違う音楽性を見せるというのは、専門家の方はどう受け取っていますか?
――全くマイナス要素ではなく、興味の幅が広いんだなという事と、色々な音楽に自分の色をしっかり加えて、オリジナルの音楽を作っているので、改めて、表現者なんだなという感じがしました。
ウヨン 今のお言葉を大切にして、今後もっと一生懸命表現していきたいと思います。
「芸能人としてではなく、歌手、パフォーマー、表現者として認められたい」
――決して情緒不安定なのかな?とか思っていないですよ(笑)
ウヨン (笑)でも僕自身は、芸能人として認められたいという気持ちは全くなくて、歌手としてきちんと認められたい。パフォーマーとしてもそうですし、もちろん表現者として受け止められたいという気持ちでずっとやっていて。だからそれを伝えていくには、正気ではなかなか難しいものがあるのかなと思っています。
「自分の中の新しい部分を発見、感じるのが楽しい。でも観ている人達にはどう映っているのか不安」
――どこかに一種の狂気をはらんだり、人にはないものを持っているのがアーティストと呼ばれる人だと思います。それが“こだわり”につながっていくのではないでしょうか。
ウヨン そうかもしれないですね。僕自身はそれをすごく楽しんでいて、自分の中の新しい部分を絶えず発見したり、感じたりしているので、それがすごく楽しいのですが、観ている人達にはどう映っているのかが不安というか、心配です。
――作品を作る時は、自分のこだわりにこだわるのか、ポピュラリティを持たせて、ファンの人との距離を縮めていくのか、その時の状況とかタイミングも含めて見極めるのが難しいですよね?
ウヨン そのふたつの要素が混ざり合うようにという事を、いつも考えています。それがとても難しいです。
――ポピュラリティを考えすぎると、クリエイターとしての自分の気持ちが消化不良になるし、難しいですよね。
ウヨン そうですね。でもせっかく出すのだから、一人でも多くの人に聴いて欲しいというのが本音です。