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ニンテンドースイッチ後継機種 発売時期2025年末の可能性も 元ファミ通編集長語る

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 任天堂は5月、ニンテンドースイッチの「後継機種」の存在を明らかにしましたが、情報はほとんどありません。機器の詳細はもちろんですが、発売時期は、ゲームファンならずとも気になるところです。そこでゲーム雑誌「週刊ファミ通」の元編集長で、ゲーム業界に精通するKADOKAWAのデジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザー・浜村弘一さんに話を聞きました。

ーーニンテンドースイッチの「後継機種」ですが、現時点で可能性が最も高いと思われる発売時期は
浜村さん: その時期に関しては、いつになるかは、正直なところまだ決まっていないと思います。ポイントになるのは在庫の状況ではないでしょうか。コロナの時期にPS5の転売問題は、多くのユーザーから批判されました。ニンテンドースイッチが世界中で売れている中、任天堂の新ハードは注目を集めることは間違いありません。
 任天堂は、何よりもユーザーの気持ちを大事に考える会社です。欲しいユーザーの手元に届かず、転売が社会問題になるということは避けたいと考えるはずです。ソフトに関しては、ニンテンドースイッチのローンチ時「ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド」がWiiUとの両対応でしたが、新ハードを牽引しました。ポイントになるのは、ハードをどこまで潤沢にそろえられるか。それ次第では、2025年夏から年末以降ということも考えられると思います。

ーー「後継機種」が、WiiUやニンテンドー3DSのように苦戦しないためのポイントは。
浜村さん: ユーザーとのエンゲージメントだと思います。任天堂は、オンラインのサービスを通じて、ユーザーとの繋がりを以前よりも強固なものにしました。また、人気のあるIPを映画やUSJに展開することで、IPとファンとの関係も、より深いものにしています。以前のように、新ハードを出すことでユーザーとの関係がリセットされるということは、起きないと思います。

ーー新型コロナウイルスの混乱時、スイッチやPS5などは、高額で転売されました。今後発売される家庭用ゲーム機でも、同じことがおきるのでは?
浜村さん: 転売はすでに計算に入れながら、在庫の確保をすると思います。オンラインでユーザーと繋がることで、よりユーザーの嗜好もつかみやすくなっています。当初は、突発的な品不足は起きる可能性はありますが。コロナ時期に起きたような大きな混乱は、よほどのことがない限り、発生しないと思います。

◇発売時期の後ろ倒しが転売対策に

 ニンテンドースイッチの「後継機種」について、任天堂から発表されたポイントは、次の三つです。

・今期中(~2025年3月)に詳細をアナウンスする
・転売対策は、需要を満たせる数を生産することが最重要
・現時点では部材の不足などが生産に大きな影響を与えると考えていない

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 浜村さんの見立てのポイントは、後継機種の発売をなるべく後ろにずらして在庫を確保することで、まだソフトが売れている現行機(スイッチ)の“寿命”を極限まで引き延ばした上で、厄介な転売の対策になると指摘しているところ。まさに「一石二鳥」ならぬ「一石三鳥」です。

 転売の有効な対策は、旺盛な需要を満たす十分な供給があることです。ただしネックもあって、在庫を増やすということは、任天堂が一手にリスクを背負うということ。新型ゲーム機の発売時には、差はあれど巨大な在庫のリスクはあるのですが、スイッチの人気を踏まえると、後継機種のベストな在庫予測は難しく、転売対策を考えるほど在庫が増える問題がつきまといます。

 上場企業は、投資家を意識せざるを得ず、そのために決算の数字作りを(ある程度は)する必要があります。普通であれば、出せば売れるはずの商品の発売を遅らせることは損失機会になり、批判されかねません。ただし任天堂は「現金及び預金」を約1兆4800億円(2024年3月期決算時点)も保有しており、経営的には万全。さらに転売防止の意義を踏まえると、方針は理解されそうです。逆に転売を放置すれば、企業のイメージダウンになることもあり得ます。

 見立てにすぎませんが、それでも後継機種の発売時期を「2025年夏から年末以降」も視野に入れるというのは、転売対策に重きを置くのであれば、十分な説得力があります。

 もちろん、状況によって大きく変わるもの。PS5の発売タイミングで、半導体不足に加え、さらに物流の混乱、ロシアのウクライナ侵攻という想定外のトラブルが続き、大混乱となりました。売れるときに商品がそろわなかったPS5の機会損失は相当なものだったはず。その不確定要素は、どの商品も抱えることです。

 「後継機種」の発売時期の“引き延ばし”は、早く遊びたいコアユーザー、投資家、経済系メディアからは「遅すぎるし、ありえない!」の“大合唱”でしょうが……。

 なお取材をする限りでいえば、この手の悪質な転売に対するメーカー側の“怒り”は、相当なものでした。そしてこの手法で悪質転売を封じることができれば、一つの事例になるわけで、結果として任天堂の好感度はまた上がるでしょう。難しいとは思いますが、悪質な転売への対策を練りに練った上で、ぜひ頑張ってほしいところです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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