台風3号発生の兆し、この台風から強度予報が5日先まで延長
台風予報の進歩
台風予報には、台風の位置を予報する「進路予報」と、台風の強さ(中心気圧、最大風速、最大瞬間風速、暴風警戒域等)を予報する「強度予報」があります。
このうち、強度予報の精度については、台風発達・衰弱のメカニズムを予測する技術に加え、進路予報の技術に大きく左右されます。
台風が冷たい海域に移動するのか、暖かい海域に移動するかによって発達・衰弱の程度が変わりますし、台風が上陸するかどうかでも大きな差がでるからです。
このため、強度予報は進路予報よりも難しく、平成21年(2009年)に台風の進路予報が、3日先までから5日先までに延長されたときでも、強度予報は3日先まででした。
気象庁の台風予報図は、5日先までの進路予報のみを表示したものと、3日先までの強度予報と進路予報を表示したものの2種類ありました(図1、図2)。
台風の予報技術の進歩により、進路予報は誤差が年々小さくなっています(図3)。
5日先までの進路予報が始まったころの平均誤差は、5日予報で500キロを超えていました。それが、現在は400キロと、約10年で2割も小さくなっています。
気象庁では、平成30年(2018年)6月に更新したスーパーコンピュータシステムによる計算能力の向上や、台風の最大風速や中心気圧などの強度をより正確に予測するための技術開発を受け、平成31年(2019年)3月14日12時(日本時間)以降、最初に発生した台風から、現在3日先まで発表している強度予報を5日先までに延長します。
台風3号発生の兆し
現時点で、日本の南海上には台風の卵がありませんが、北緯9度、統計149度付近に雲の渦巻きが見えます(図4)。
一般的に、同じ熱帯域といっても、積乱雲が活発に発生している海域は冬季は赤道のやや南の海域(南半球)、夏季は赤道のやや北の海域(北半球)です。
そして、赤道上の海域で積乱雲が活発になるのは、春分の日(3月21日)や秋分の日(9月23日)頃です。
平成最後の年は、春分の日を前に、すでに赤道のやや北で積乱雲が活発に発生しており、この中から台風の卵(熱帯低気圧)が発生する見込みです。
図5は、3月14日21時の予想天気図ですが、図の中で「TD」と書かれているのが、発生が予報されている熱帯低気圧です。
今後、この熱帯低気圧が最大風速が17.2メートル以上になるまで発達し、台風となるかは現時点でははっきりしていません。
もし、台風まで発達したとすると、今年3番目の台風ですので、「台風3号から台風の強度予報が5日先まで延長になった」ということになります。
(この項は、3月14日14時に追加しました。)
台風の暴風域に入る確率情報
台風の強度予報が5日先まで延長となったことから、気象庁の発表する台風予報の表示は、5日先まで暴風警戒域が表示されます。
また、台風の暴風域に入る確率情報も、5日先までとなります。
図6は、平成29年(2017年)の台風18号の5日先までの進路予報をもとに、気象庁が作成した暴風域に入る確率(分布図)のイメージ図です。
また、図7は、台風の暴風域に入る確率(地域ごとの時間変化)のイメージ図です。
台風接近時の行動計画に利用
気象庁が作成したイメージ図によれば、台風が沖縄の南海上にあった12日21時の段階(タイトル画像参照)で、沖縄県与那国島で暴風域に入る可能性が一番高いのは13日21時から14日0時までなどと、沖縄県についていえば、これまでの3日先までの台風強度予報でもわかります。
しかし、5日先までの台風強度予報では、今後、九州南部では暴風域に入る可能性が30%以上、東日本から西日本の広い範囲で5%以上あることがわかります。そして、暴風域に入る可能性がある地域については、与那国島と同様に、暴風域に入る可能性が一番高い時間帯が詳しくわかります。
これらは、3日先までの強度予報ではわからなかったことです。
このように、台風の強度予報が5日先まで延長になったことで、台風接近時の防災行動計画(タイムライン)に沿った対応を、これまでより早い段階からより効果的に行うことができます。
タイトル画像、図1、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図3、図5、図6、図7の出典:気象庁ホームページ。