寒さの兆しを知る方法
秋冬コートが売れ始める気温
暖かいような、寒いような、今年の11月はつかみどころのない気温が続いています。実際、今月の東京の平均気温は平年よりも2度以上高く、数字の上では非常に暖かい11月です。
でも、街中では秋冬コートが目立ち始めました。気温の変化が経済に与える影響は、おでんや鍋具材の売れ行きからスキー場まで多岐にわたります。
気象庁の調査によると女性用の秋冬コートは最低気温が15度を下回ると売れ始めるそうです。衣料品は季節を先取りするイメージがありますが、気温と売れ行きの関係は深く、販売時期の設定や店頭での演出などに利用されています。
気温の変化点を見つける
気温は滑らか変化するのではなく、段階的に変化していきます。気温をグラフにすると、ギザギザ模様を描くのは低気圧や高気圧に通過のほかに、気団の変化も加わるからです。
では、このギザギザ模様を描く気温から、段階変化の予兆(変化点)を知るのはどうしたらいいのでしょうか。統計学の「変化点検出」を使って、先の秋冬コートの事例から最低気温が15度に落ち着き始めるのはいつ頃なのか、考えてみました。
変化点検出にはいくつかの方法がありますが、数値インデックスSを1とし、最低気温が15度以下になったら、4.286をかけ、15度以上だったら0.8867をかける。毎日の気温変化に合わせて計算し、数値インデックスSが50(しきい値)を超えたところを変化点とします。詳しい手順は文末に挙げた参考文献を参照してください。
今シーズンの最低気温15度は10月8日頃?
実際に、この秋の東京の最低気温で変化点検出を試みてみました。9月下旬から気温は下がり始め、10月1日に初めて15度を下回りました。しかし、一度下回っただけでは偶然かもしれず、15度が定着するとは判断できません。<図1>
計算を続け、数値インデックスSが50(しきい値)を超えたのは10月8日、統計的にはこの日が変更点です<図2>。これ以降、最低気温は15度付近に落ち着きました。<図3>
この変更点検出の利点は、数値インデックスSが事前に決めた水準を超えたときに変化が起きたと言え、リアルタイムに判断できることです。このように気温の変化に応用すれば、画一的な衣替えの時期も、気候の変化に合わせることができるでしょう。日々の生活に数学を使ってみませんか。
【参考文献】
キース・デブリン,ゲーリー・ローデン,2008:予兆が初めてあらわれるのはいつ?:変化点検出,数学で犯罪を解決する,ダイヤモンド社,75-90.
気象庁,2013:アパレル・ファッション産業における気候リスク評価調査報告書