インフルエンザA型とB型、どちらが重症?インフルエンザはD型まである?
夜間救急外来でも多くの患者さんが受診されており、インフルエンザの流行が続いていることを実感しています[1]。
人間に流行しやすいインフルエンザにはA型とB型があることは、皆さんもよくご存知でしょう。
では、A型とB型はどちらが重症になりやすいのでしょうか?
そして、インフルエンザにはD型まであることをご存知でしょうか?
今回は、外来で尋ねられやすいこれらのお話を、簡単に解説してみたいと思います。
インフルエンザのA型とB型、どちらが重症になりやすい?
A型インフルエンザの表面には2つのタンパク質、ヘマグルチニン(H)18種類とノイラミニダーゼ(N)11種類があり、その組み合わせで型が決まります。
そして、人間で流行するインフルエンザAの型は、H1N1とH3N2が代表的です[2]。
そして今シーズンはA型が優勢でH3N2の組み合わせが流行しています[1]。
そして、『A型のほうが重症なんですよね?』と尋ねられることがあります。
しかし、2014年に8年間の成人のインフルエンザの重症度を詳細に比較した研究があり、A型とB型の重症度に差はなかったと報告されています[3]。
そして別の研究では、子どもではB型のほうが重症化しやすいのではないかという報告もあります[4]。
A型のほうが大きく流行しやすいためA型を重症と思いがちなのですが、私は、外来で尋ねられたときにはどちらの型も注意が必要でそれほど差はないですよとお答えしています。
インフルエンザはD型まである?
インフルエンザはC型があることをご存じの方は多いでしょう。
インフルエンザC型は、7~10歳までに90%は感染すると考えられていて、昔は風邪と変わらない症状だろうとされていました。
しかし最近、インフルエンザC型は、特に2歳未満の子どもでは肺炎や気管支炎、そして胃腸炎も起こす可能性が報告されています[5][6]。
日本からの報告ではインフルエンザC型に感染した子どもの170人中29人が入院し、そのうち21人(72.4%)が肺炎、気管支炎、細気管支炎などの下気道疾患だったとされています。
そして、インフルエンザにはD型もあります。
インフルエンザD型は、2011年に米国オクラホマ州でみつかりました。
その後、日本をはじめ、世界中のウシやブタなどからD型インフルエンザが見つかり、主にウシの間で流行していることがわかっています[7]。
ただし、インフルエンザD型はいまのところ、人間には感染することはないようです[8]。
さて今回は、インフルエンザはA型もB型も注意をしなければならないことや、C型やD型に関して簡単にお話ししました。
まだまだインフルエンザの流行は続くと思われます。感染予防策をとりつつ、過ごしてまいりましょう。
この記事が、なにかのお役に立つことを願っています。
参考文献
[1]インフルエンザの流行状況(東京都 2022-2023年シーズン)(東京都感染症情報センター)
[2]Influenza Type A Viruses(CDC)
[3]Clin Infect Dis 2014; 59:252-5.
[4]MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:40–43.
[5]Viruses 2020; 12:89.
[6]Journal of Infectious Diseases 2006; 193:1229-35.
[8]Types of Influenza Viruses(CDC)