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「スッキリ」で、オードリー春日さんがペンギンのいる池に何度も落下。どこが問題なのか獣医師が解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
フンボルトペンギンのイメージ写真(写真:イメージマート)

日刊スポーツは、3月24日の日本テレビ系「スッキリ」の生放送中に起きた那須どうぶつ王国でのペンギンでの事件を伝えています。お笑いコンビ、オードリーの春日俊彰さんが、同動物園を訪れ、ペンギンのエサやりにチャレンジしていましたが、そのときに、数回、ペンギンの池に落ちたのです。

スタジオではMCの加藤浩次さんが、春日さんに「池に落ちるなよ! 春日、池に落ちるなよ! 気をつけろ! 春日、足元に気をつけろ!」といいました。これを春日さんは、お笑い芸人なので“振り”と受け取ったのか、春日さんは数回、池に転落したのです。

その光景を見ていたスタジオ内では悲鳴と笑いが起きていたということです。

ペンギンの池に落ちる行為は、「おふざけ」ですむのか?

動画を見ると、春日さんは3回、ペンギンの池に落ちています。

1回目が、いちばんペンギンの近くで、ペンギンのなかにはびっくりして池から飛び上がっている子もいます。

ペンギンの体の大きさからすれば、いきなり人間が落ちてきたので、巨人に見えて怖かったのでしょう。

動画を見る限り、ペンギンはなんの不信感も持たず、純粋にエサを持っている春日さんの方にやってきています。これは、つまり飼育員の方が、愛情を持って育てているということの証明なのです。

「エサ」を持っているから、ペンギンは近くに来るものだろうと思うかもしれませんが、信頼関係がない場合は、エサだけくわえて少し離れたところに行ったり、恐る恐るやってきたりします。

しかし、同動物園のペンギンたちは、エサを持っている人のところに、なんの疑いもなくやってきています。いままでこのように池に落ちるというアクシデントはあまりなかったのではないでしょうか。

ペンギンは、身に危険を感じたときに、水のなかを泳ぐか陸で逃げるしかできないので、春日さんが池に落ちたことで、精神的にダメージを受けた可能性もあります。同動物園は、そのことに以下のように抗議しています。

那須どうぶつ王国の動物の尊厳とは?

那須どうぶつ王国 @nakprstaff より

同動物園は、Twitterで上記のようなコメントを出しています。

そのようなコメントをすぐに出せるところなので、このフンボルトペンギンは肉体的にも精神的にもきちんとケアされていると思います。

ペンギンに毎日、愛情を込めて、飼育されている動物園のスタッフさんたちは本当に心が苦しく、怒りも計り知れないものがあったと察します。動物の尊厳を考えてほしいです。動物を人間の笑いのためにつかってほしくないです。

動物はテレビなどで視聴率が取れるようです。そのため、行き過ぎた演出などがありますが、それを動物が苦痛に感じていないかをよく考えて放送してほしいです。

フンボルトペンギンとは?

フンボルトペンギンのイメージ写真
フンボルトペンギンのイメージ写真写真:イメージマート

この番組に出ていたのは、フンボルトペンギンです。

フンボルトペンギンは、絶滅危惧種で国際取引等が厳しく制限されている種です。

日本の場合、動物園に行けば、フンボルトペンギンが数多くいるので、それほど珍しくないことから絶滅危惧種ということがあまり知られていません。

フンボルトペンギンは、南アメリカ沿岸地域の温帯に生息しており、日本の気候と似ているので飼育しやすいのです。

日本では、飼育頭数は70以上の施設で1600羽を超えているといわれます。そのうえ、日本での飼育頭数が世界全体の生息数の約1割を占めているそうです。

日本では、孵卵器でヒナを孵化させる技術や病気の治療法を確立させてきたので、動物園に行けばフンボルトペンギン多くいるのです。

まとめ

「札幌市円山動物園 動物福祉(アニマルウェルフェア/Animal Welfare )とはのサイト」より
「札幌市円山動物園 動物福祉(アニマルウェルフェア/Animal Welfare )とはのサイト」より

テレビ関係者は、「アニマルウェルフェア」についての認識が低いのでは、と今回のことで感じました。

上の札幌市円山動物園のサイトの絵を見ていただくと、真ん中に「精神」とあります。「負の経験」の項目のなかに「不快感」がありますね。同動物園でのペンギンは、池に春日さんが落ちてきたとき、まさに不快感に陥ったのではないでしょうか。

これから「こどもの日」などがあり、動物園でテレビ放送する機会も増えるかもしれませんが、「アニマルウェルフェア」の専門家を入れてじっくり考えて番組を作っていただきたいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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