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メジャーは日本球界を「特別」な存在だと認めるか!?あのタイトルの選考基準が変わる日

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:CTK Photo/アフロ)

 今オフも日本球界からメジャーリーグへの「移籍」が活発になりそうだ。

 オリックスのリーグ3連覇に貢献し、3年連続で沢村賞に輝いた山本由伸投手は、米スポーツ専門サイト「ESPN」の予想で「総額2億1200万ドル(約320億1200万円)の7年契約」などと報じられている。メディアの情報を鵜呑みにするわけにはいかないが、25歳と若き日本球界ナンバーワン右腕に対する評価は相当なものである。

 他にもDeNAの今永昇太投手、楽天の松井裕樹投手、日本ハムの上沢直之投手がメジャー移籍を目指すことを表明した。先発、抑えとポジションは分かれても、いずれもチームの主戦級である。

 近年の日本のトップ選手にとって、もはやメジャーは「挑戦」ではなく、「移籍」の場である。年俸も含めた評価を見ても明らかである。メジャーにうまくアジャストできない選手も中にはいるが、今季もメッツの千賀滉大投手、レッドソックスの吉田正尚選手、アスレチックスとオリオールズで投げた藤浪晋太郎投手が1年目から結果を出した。

 ソフトバンクから海外FAでメッツと5年総額7500万ドル(約110億円)を結んだ千賀投手は12勝(7敗)、リーグ2位の防御率2・98、202奪三振をマーク。落差の大きい“お化けフォーク”はアメリカでもすっかりネーミングが定着した。ナ・リーグ新人王候補として、新人初の「25本塁打―50盗塁」をマークしたダイヤモンドバックスのコービン・キャロル外野手(23)らとともに最終候補3人に選ばれた。BBWAA(全米野球記者協会)に所属する記者投票で、満票の1位票(30票)を獲得したキャロル外野手に次ぎ、2位票が22票など計71ポイントで次点だった。

 かつては野茂英雄さんやイチローさんもメジャー1年目に新人王に選出されている。メジャーの「新人」の対象は、あくまでメジャーリーグでプレーしたときであり、日本球界の実績は考慮されない。世界一の人気、実力を誇るメジャーのプライドが凝縮されている事象でもある。一方で、投票するBBWAAの記者からすれば、“純粋”な新人とはみなさない風潮もなくはないだろう。実際、マイナーリーグの過酷な環境から這い上がってきた選手に対し、日本から「移籍」する選手は年俸もメジャークラスで、専属通訳なども付帯条件に含まれ、待遇が違う。

 実情に照らし合わせれば、日本で実績を残して「移籍」する選手の扱いは、もう「新人王」の対象から外してもいいのではないだろうかと思う。例えばだが、日本球界で、投手なら登板数や勝利、セーブ数、野手なら出場試合数や安打、本塁打、盗塁の数など、さらに投打ともに年齢なども考慮して一定の条件を定めてもいいだろう。

 もちろん、「新人王」の権利は、日本球界からわざわざ返上する必要はないだろう。メジャー側がどう判断するかということになる。それはプライドとも関係するだろう。メジャーが日本から「移籍」する選手に制約を加えるということは、日本球界を「特別」な存在だと認めることともイコールであるからだ。

 日本球界のトップ選手にとってメジャーは「挑戦」ではなく、「移籍」の場となっている。その実情を、メジャーがどう見るか。「新人王」の扱いは、一つの指標とみてもいいかもしれない。ファンの皆さんはどう考えるだろうか。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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