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アイドル史上で最も幸せな卒業の形。大場美奈(SKE48)の30歳の誕生日までの3日間

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2022 Zest, Inc. / AEI

13年のアイドル活動に終止符を打つSKE48の大場美奈が、横浜で4月1日から3日間にわたる卒業コンサートを行った。最終日は30歳の誕生日。これほど幸福感に満ちたアイドルの卒業はあったかと感じさせるステージになった。

謹慎とキャプテン辞任…AKB48時代の失敗

 <失敗も間違いも すべてが私なんだ>

 大場美奈の卒業ソング『生まれ変わっても』には、そんなフレーズがある。

「たぶん(作詞した)秋元(康)先生の中で、私は“失敗した人”というイメージなんでしょうね(笑)」

 取材で大場はそう笑っていた。彼女の失敗。それは、2012年公開の実録映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』でクローズアップされ、卒業コンサート1日目のアンコール前のヒストリー映像でも触れられていた。

 AKB48時代の2011年、研究生から正規メンバーに昇格した9・10期生で結成されたチーム4で、大場はキャプテンに任命されたが、2ヵ月も経たぬ間に謹慎となり、辞任している。デビュー前の個人ブログやプリクラの流出が原因だった。活動を再開するとチーム4のキャプテンに復帰したが、いきなりの躓きに思えた。

 そのチーム4も9ヵ月後に解体。大場自身は2014年に、兼任を経てSKE48に完全移籍する。当時を振り返り、「AKB48とSKE48は色がまったく違うので、私は合わないと思っていました。たぶんSKE48ではやっていけないだろうなと」と語っていたこともある。

 あれから8年、AKB48加入からだと13年を経て、大場美奈がこんなにも幸福感に溢れて卒業していくことになるとは。

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同期ら卒業生たちとのオープニングに懐かしのコント

 大場は神奈川出身。卒業コンサートの1日目はパシフィコ横浜国立大ホールで開催された。ペンギンの衣装でステージに登場して「みんな集まれ~!」と呼び込むと、同期の山内鈴蘭や永尾まりや、芸能界を離れて旅館の若女将となった島田晴香ら旧チーム4のメンバーだった卒業生たち11人が入ってくる。チーム4のオリジナル曲『走れ!ペンギン』がオープニングで披露された。

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 このメンバーたちがハケると、いきなり終演を告げるアナウンスから姿を見せたのは、俳優の野間口徹。大場とはかつて、テレビ番組『AKB48 SHOW!』の「妄想少女大場」のコーナーで、アイドルとマネージャーのコントを繰り広げた。この日の公演タイトルにも使われた「可愛くてすみません」は、その中のキメ台詞。大場は取材で本格的に女優を目指したきっかけを「野間口さんとの出会いが大きかった」と語っていた。

 久々の2人のコントは、ドラマ出演が続く野間口がこの日に来られるかギリギリまでわからず、本番直前に合わせたそう。「大場のマネージャーになって10年だよ」「年を重ねても重ねても可愛くてすみません」などと沸かせた。

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研究生曲やチームKⅡの曲など盛りだくさんに

 そんな幕開けに続き、SKE48のメンバーたちがステージに一斉になだれ込み、大場をセンターに『パレオはエメラルド』などを披露して盛り上がる。

 さらに、『黄金センター』などAKB48時代の研究生曲も。『夜風の仕業』はソロで、『僕は知っている』は同じ移籍組の山内鈴蘭、谷真理佳と3人で。

 『18人姉妹の歌』からリーダーを務めたチームKⅡのコーナーもあり、大場のアイドルとしての足跡が盛りだくさんに辿られていく。

 後半では、『RIVER』から再び卒業生たちとAKB48の楽曲が続けられた。前田敦子のソロ曲だった『右肩』では、同期の島崎遥香も笑顔で登場して共に歌った。

 『夕陽を見ているか?』では、この日集まった旧チーム4メンバー13人が勢揃いし、大場をセンターに横1列に並び肩を組んで歌ったりも。青春を共に過ごした仲間たちとのメモワールを思わせた。

 「同期や元チーム4のメンバーとは時間をたっぷり使いたくて。卒業コンサートでまたみんなと歌う夢が叶ってとっても幸せ」と話した大場。「私を最後に、これで大場チーム4、全員卒業です」とも。

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「SKE48に来る運命は奇跡だったと思います」

 終盤はまたSKE48メンバー全員で『前のめり』などを続けて、胸アツな盛り上がりを見せていく。アンコールは『センチメンタルトレイン』から。2018年の選抜総選挙で大場が8位となって参加した、AKB48のシングル曲だ。

 歩みを振り返る映像を挟み、ソロで卒業曲『生まれ変わっても』をしっとりと。ベレー帽に、チェック柄でスカートの裾が大きく広がった衣装は、本人の希望が反映されたもの。

「私は約13年、とっても幸せでした。それは皆さんの支えがあったからこそ。絶対に『さようなら』は言いません。また違った形で皆さんと新しい思い出を作っていけるように、一歩一歩頑張っていきたいと思います」

 笑顔で話し始めたMCは、だんだん涙声になっていく。

「私はSKE48のオーディションを受けてないから、SKE48に来る運命って本当に奇跡に近かったと思うし、自分がこんなにも馴染んで、こんなに幸せな人生を送れると思っていませんでした。SKE48に来た私を受け止めてくれて、本当にありがとうございました。アイドル人生の最後がSKE48で、とってもとっても幸せです」

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横山由依、川栄李奈、柏木由紀らからもメッセージ

 オーラス前にはサプライズで、この日来られなかった縁りの人たちからのビデオメッセージも。同期の横山由依、チーム4の後輩で今や朝ドラヒロインの川栄李奈、AKB48時代の先輩・柏木由紀、SKE48での先輩・松井玲奈……。大場がいかに愛されていたかが伝わった。

 最後は、『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』の主題歌でもあったAKB48の『ファーストラビット』を、SKE48全員でパフォーマンス。大場は歌いながらメンバーたちを抱き寄せたり、肩を組んだり。

 曲が終わると、ステージの階段を上がって「SKE48最高!」と叫んだ。ハケていくメンバー1人ずつとハイタッチを交わしたあと、「皆さんに出会えて最高に幸せでした!」と告げて、大きな拍手の中でフィナーレとなった。

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若手プロデュースと思い出の曲を存分に

 このステージだけでも胸いっぱいな卒業コンサートだったが、会場をKT Zepp Yokohamaに移し、さらに2日・3公演が用意されていた。2日目は大場が、今後のSKE48を担う若手メンバーをプロデュースした公演となった。

 本人の出演は前座とアンコールの計3曲で、あとはMCのみ。13歳の林美澪と15歳の杉山歩南を、松井珠理奈&松井玲奈からSKE48らしいイメージのWセンターに配したり、「私が見たい未来の選抜メンバー」をこだわって編成した。

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 30歳の誕生日に当たる最終日の4月3日は2回回し。昼公演は初日に入りきらなかった曲、劇場公演を振り返る曲、好きな曲や憧れの曲などが並ぶセットリストに。須田亜香里とデュエットした『てもでもの涙』、乃木坂46のカバー『ガールズルール』などが披露された。

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 夜公演は「思い出の曲を存分に振り返る時間にしました」とのこと。SKE48のエースだった松井珠理奈らのメッセージビデオに続き、「最高のビジネスパートナー」という高柳明音や松村香織、小畑優奈ら卒業生がステージに駆けつけて、パフォーマンスに加わった。

涙を浮かべながら満ち足りた笑顔で

 アンコールの『涙サプライズ』では、この公演に出演していない全メンバーがスクリーンから「ハッピーバースデー・トゥー・ユー」と歌うサプライズもあり、大場の目に涙が溢れた。

 大団円となるところで、斉藤真木子が「やり残したことがある」と、かつて冠番組『SKE48 エビカルチョ!』の企画だった“シーソー対決”を行うことに。

 当時太めだった大場は、毎回相手より重くてシーソーが下がっていたが、今回は「負けたら卒業延期」と突きつけられた。

 結局、自ら指名した相川暖花を相手にシーソーが上がって勝利し、無事卒業できるという展開で笑いを誘った。そして、定番曲の『桜の花びらたち』で締めくくり。

 大場は「本当に本当に幸せなアイドル生活でした」と語った。3日間で何度も繰り返された「幸せ」という言葉。涙を浮かべながらも満ち足りた笑顔で、3日間の卒業コンサートと13年にわたるライブ活動の幕を下ろした。

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「特に何かができたわけではなかったけど」

 アイドルグループに入っても、いつの間にひっそり去ることも多く、卒業の際に大々的なコンサートが開かれるメンバーはごく少ない。まして3日間にわたるのは異例だ。4公演違う内容で13年を彩った楽曲を存分に歌い、やりたかった企画も実現できた。

 さらに、SKE48の拠点は名古屋でありながら、大場美奈のために地元の神奈川で開催された。そこに同期をはじめ縁りの卒業生らが多く駆けつけたり、ビデオメッセージが寄せられて。そして、3日目は新たな旅のスタートともなる30歳の誕生日と合わせて祝福された。

 本人は最終日のMCで「私は特に何かできたわけではございませんが」と話していた。SKE48の中心メンバーではありつつ、センターを張ったりはしていない。エースでも人気トップでもなかった。だが、最後にこんなにも希望を叶えて、幸せな形で卒業を飾ったアイドルはいない。

 AKB48時代に躓いたあと、SKE48に移籍した大場だが、結成10周年イヤーの2018年には「全国区になることは絶対的な目標として、地元で愛されることは違った意味で一番大切なこと」と、名古屋育ちかのような発言もしていた。「SKE48を愛するのは、名古屋や愛知も大好きになるということですから」と。

 自身がステージで語っていた通り、大場美奈がSKE48に来たのは運命の奇跡だったのだろう。最後のMCでは、「SKE48にしっかり恩返しできるように、すごい人になりたいなと思っています」とも話していた。

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大場美奈 卒業インタビュー

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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