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【なぜ昭和ライダーは伝説となった?】仮面ライダーのアクションを支えた殺陣集団、大野剣友会の魅力とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

いよいよ2024年もあと僅か。

皆さまいかがお過ごしですか?

さて、今回のテーマは「昭和ライダー」です。

昭和ライダーとは、昭和から令和までの約55年間放送されてきた、国民的特撮ヒーロー番組である「仮面ライダー」シリーズにおいて、平成仮面ライダーシリーズの放送開始(西暦2000年)以前に登場した、昭和を代表する歴代の仮面ライダー達ー。

現在は毎週日曜朝に放送されている印象の強い『仮面ライダー』シリーズですが、当シリーズが産声を上げたのは1971年(昭和46年)でした。

シリーズ第1作『仮面ライダー』が1971年4月3日に放送され、大好評を博した本作に続いて、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』等、人間の自由と平和を守るために戦う仮面ライダーの勇姿を描いた作品が次々に放送されました。

『仮面ライダーアマゾン』は1974年10月19日から1975年3月29日まで全24話が放送された。東映ビデオより、本作を収録したBlu-ray Boxが発売中(筆者撮影)。
『仮面ライダーアマゾン』は1974年10月19日から1975年3月29日まで全24話が放送された。東映ビデオより、本作を収録したBlu-ray Boxが発売中(筆者撮影)。

昭和にテレビ放送された仮面ライダーシリーズとしては実質最後の作品となったのが、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。本作では歴代の仮面ライダーが全員集合する集大成的な作品であった。
昭和にテレビ放送された仮面ライダーシリーズとしては実質最後の作品となったのが、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。本作では歴代の仮面ライダーが全員集合する集大成的な作品であった。

昭和ライダーシリーズのテレビ放送は、シリーズ第10作『仮面ライダーBLACK RX(1988)』を最後に終了。シリーズのバトンは『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズに継承され、元号が令和へと変わった現在も、仮面ライダーシリーズのテレビ放送は続いています。

今や親子三世代に愛され続ける国民的特撮ヒーロー番組である仮面ライダーシリーズですが、その人気は国内だけに留まらず、アジア各国をはじめとする海外にも及び、現在にかけて「世界のヒーロー」になったと言っても過言ではありません。

米国ハワイ州では、1973年に東映特撮ヒーロー番組『人造人間キカイダー』が放送されて以降、『仮面ライダーV3』等、数多くの日本の特撮ヒーロー番組が現地に進出(2015年アラモアナセンターにて撮影)。
米国ハワイ州では、1973年に東映特撮ヒーロー番組『人造人間キカイダー』が放送されて以降、『仮面ライダーV3』等、数多くの日本の特撮ヒーロー番組が現地に進出(2015年アラモアナセンターにて撮影)。

アジア各国でも、仮面ライダーシリーズはスーパー戦隊シリーズと共に現在も展開中。台湾・香港では玩具の発売の他、現地で販売されている児童誌においても、仮面ライダーやスーパー戦隊は存在感を発揮してきた。
アジア各国でも、仮面ライダーシリーズはスーパー戦隊シリーズと共に現在も展開中。台湾・香港では玩具の発売の他、現地で販売されている児童誌においても、仮面ライダーやスーパー戦隊は存在感を発揮してきた。

そんな世界での仮面ライダーの活躍において欠かせないのが、シリーズの基盤を築き上げた「昭和ライダー」達の存在です。そこで今回は、現在も色褪せない迫力に溢れた昭和ライダー達の魅力と、その世界観を築き上げた人達に焦点を当て、少しだけお話しをしてみたいと思います。

※本記事は「私、仮面ライダーにくわしくない」、「昭和ライダーを観たことない」という皆様にも気軽に読んで頂けますよう、可能な限りシンプルにお話をして参ります。お好きなものを片手に、ゆっくり本記事をお楽しみ頂けますと幸いです。

【勧善懲悪だけじゃない!】改造人間となった悲哀を描く、昭和の仮面ライダー達の溢れる魅力とは?

さてさて、本記事のテーマは昭和ライダーですが、「そもそも仮面ライダーってどんなシリーズなの?」という方々のために少しだけ、昭和の仮面ライダーシリーズの歴史を辿ってみたいと思います。

『仮面ライダー(1971)』は、仮面ライダー1号と2号と世界征服を企む悪の秘密結社「ショッカー」との戦いを描いた物語。主人公である仮面ライダー達は人間でなくなってしまった哀しみを抱え戦った。
『仮面ライダー(1971)』は、仮面ライダー1号と2号と世界征服を企む悪の秘密結社「ショッカー」との戦いを描いた物語。主人公である仮面ライダー達は人間でなくなってしまった哀しみを抱え戦った。

仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーロー。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。

仮面ライダーを象徴するアイテムといえば、ずばり「変身ベルト」。現行の仮面ライダーシリーズに至るまで、変身アイテムは定番玩具として定着し、写真の大人向け変身ベルトシリーズ(CSM)も現在展開中。
仮面ライダーを象徴するアイテムといえば、ずばり「変身ベルト」。現行の仮面ライダーシリーズに至るまで、変身アイテムは定番玩具として定着し、写真の大人向け変身ベルトシリーズ(CSM)も現在展開中。

その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。ポピー(現:バンダイ)から発売された仮面ライダーの「光る!回る!」変身ベルトは空前の大ヒットを記録し、甘いお菓子のおまけに仮面ライダーカードがついた「カルビー仮面ライダースナック」は15ヶ月間で6億2000万袋という驚異的な売り上げも記録。現在に至る国民的特撮ヒーロー番組である仮面ライダーの歴史は、本作から始まりました。

大ヒットした「仮面ライダー」はシリーズ化され、写真の『仮面ライダーX(1974)』をはじめ、次々に新たなテレビ番組が放送された(写真は東映ビデオより発売された本作のBlu-ray Box)。
大ヒットした「仮面ライダー」はシリーズ化され、写真の『仮面ライダーX(1974)』をはじめ、次々に新たなテレビ番組が放送された(写真は東映ビデオより発売された本作のBlu-ray Box)。

その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』、『仮面ライダーX(1974)』、『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーストロンガー(1975)』とシリーズは継続。一時期放送が中断されますが、空飛ぶ仮面ライダーが登場する『仮面ライダー(1979)』でシリーズを再開し、5つの腕で人々と街を守る『仮面ライダースーパー1(1980)』、仮面ライダー10号・ZX(ゼクロス)の活躍を描いたTVスペシャル『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!(1984)』まで、10人の昭和ライダーが登場しました。

『仮面ライダー(1971)』から『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!(1984)』にかけて、10人の仮面ライダーが誕生。その勇姿は、DVD等の映像ソフトの他、動画配信サービスで現在も堪能できる。
『仮面ライダー(1971)』から『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!(1984)』にかけて、10人の仮面ライダーが誕生。その勇姿は、DVD等の映像ソフトの他、動画配信サービスで現在も堪能できる。

その後シリーズは再び休眠しますが、やがて新たな仮面ライダーの活躍を描いた『仮面ライダーBLACK(1987)』が放送されます。そしてその続編である『仮面ライダーBLACK RX(1988)』を最後に、昭和ライダーのテレビ放送は終了することになります。

10号ライダーである仮面ライダーZXの登場から、約3年の時を経て放送されたのが『仮面ライダーBLACK(1987)』。これまでのシリーズから世界観を一新し、創世王の座を巡るライダー同士の戦いが描かれた
10号ライダーである仮面ライダーZXの登場から、約3年の時を経て放送されたのが『仮面ライダーBLACK(1987)』。これまでのシリーズから世界観を一新し、創世王の座を巡るライダー同士の戦いが描かれた

ここまで列挙してきた昭和の仮面ライダーシリーズですが、これらのシリーズで共通する魅力の1つに、「仮面ライダー対悪の秘密結社」という簡潔な物語編成が挙げられます。連続ドラマで展開された平成の仮面ライダーに対し、昭和のシリーズはシンプルな1話完結のストーリー。よって、「仮面ライダーと悪い怪人が戦う物語』という前提さえ踏まえれば、仮に第1話から順に観ずとも、どのお話から観ても十分楽しめる簡潔な物語も魅力でした。

昭和の仮面ライダーシリーズでは毎作悪の組織が登場。毎週現れては倒される怪人の他、彼らの作戦を指揮する大幹部も登場。『仮面ライダーX』に登場したアポロガイストは、一度敗れても再生する執念を持つ名悪役。
昭和の仮面ライダーシリーズでは毎作悪の組織が登場。毎週現れては倒される怪人の他、彼らの作戦を指揮する大幹部も登場。『仮面ライダーX』に登場したアポロガイストは、一度敗れても再生する執念を持つ名悪役。

そして昭和の仮面ライダーの魅力は、ヒーローでありながらも「人間でなくなってしまった」仮面ライダー達の悲哀も描いてきたことも挙げられます。体に特殊な機械や技術の結晶を埋め込まれて超人となった代わりに、人間でなくなってしまった仮面ライダー達。

ある者達は悪の組織に連れ去られて超人的な「改造人間」にされ、またある者達は命の危機に瀕したためにやむを得ず「改造人間」として復活、そしてまたある者は親友の仇を討つために自ら「改造人間」になることを志願しました。

シリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の主人公・本郷猛(仮面ライダー1号)は、悪の秘密結社ショッカーに拉致され、改造人間にされた犠牲者だった。彼は人間の自由と平和のためにショッカーと戦い続けた。
シリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の主人公・本郷猛(仮面ライダー1号)は、悪の秘密結社ショッカーに拉致され、改造人間にされた犠牲者だった。彼は人間の自由と平和のためにショッカーと戦い続けた。

そんな彼らも時に、力の制御が効かなくなったり、守るべき小さな子どもに拒絶されたり、愛する女性と哀しい別れを経験したりと、計り知れない悲劇に苛まれます。

さらに、彼らが対峙する悪の組織が送り込む怪人達も、もともとは仮面ライダー達と同じく、もともと普通の人間だった「改造人間」達ー。

つまり、世界平和や人間の自由を守ることを掲げながらも、自分と同族を倒す宿命を背負わなければならない悲劇を描いてきたのも、昭和の仮面ライダーシリーズならではの魅力なのです。

【大迫力のアクションだけじゃない!】仮面から溢れる心情まで体現した伝説の殺陣集団「大野剣友会」とは?

上述してきた昭和の仮面ライダーシリーズにおいて欠かせないのが、着ぐるみを着た状態での肉弾戦や剣術、時に馬術も披露する大迫力のアクション。そんな昭和の仮面ライダーシリーズのアクションを支えたのが、時代劇の殺陣を行なうために大野幸太郎氏によって結成された殺陣集団である「大野剣友会」でした。

東映制作のテレビドラマ『柔道一直線(1969)』において、「地獄車」をはじめとする斬新かつ体当たりのアクションを披露した「大野剣友会」は、仮面ライダーと怪人の戦いのシーンをはじめとするアクション(殺陣)に携わることになります。

彼らが魂を込めて演じるのは、視界が遮られる仮面ライダーや怪人の面を着用しての激しいアクション。パンチやキックが伴う立ち回りだけでなく、トランポリンを使用した大ジャンプ、さらには高いところから水に飛び込んだり(コンクリートの柵の上から10m近くの水の中に落下)、スノーモービルを使って引きずり回されるアクション等、そのアクション描写は実に多種多様。

昭和の仮面ライダーシリーズは戦いにおけるアクションや爆破シーンも大きな魅力。シリーズ第2作『仮面ライダーV3』では、激しい格闘戦に加えて、思わずライダー達の安否を心配してしまうような爆破シーンも展開。
昭和の仮面ライダーシリーズは戦いにおけるアクションや爆破シーンも大きな魅力。シリーズ第2作『仮面ライダーV3』では、激しい格闘戦に加えて、思わずライダー達の安否を心配してしまうような爆破シーンも展開。

時に視聴者も「ヒヤッ!」とさせるような芝居も演出されました。シリーズ第2作『仮面ライダーV3』第4話では、なんと仮面ライダーV3(演:中屋敷鉄也氏)が命綱無しで、50mの高さの煙突の上に立ち、下にいる敵に戦いを挑むシーンが描かれました。煙突のため、当然ながら足場は煙突の縁。視界のままならない状態にも関わらず、神々しく立つ仮面ライダーのV3の勇姿は、放送から50年が経過した現在も、仮面ライダーファンの記憶に色濃く残り続けています。

また、大野剣友会の俳優達が演じる仮面ライダーや怪人の魅力は、アクションだけに留まらず、仮面(着ぐるみ)を着用した上で演じる情感的な「芝居」にもあります。

表情の見えない仮面を着用していても、仮面ライダーの抱えた哀しみのほか、視聴者を「ギョッ!」とさせてしまう怪人の鋭い目力等、単なる仮面劇に留まらない、演者達の迫真の演技も魅力。シリーズ第1作『仮面ライダー』第9話で、死んだ犬の墓に仮面ライダー(演:中村文弥氏)が花を手向け、墓に静かに背を向けて去って行くライダーの姿は「背中が泣いている」とファンや製作者の間で評される名シーンとなりました。

シリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の第14話に登場した怪人サボテグロン。彼の面(人形の黄色い目の部分)は演者の目が露出しており、奇怪な外見に加えてその目力に、筆者は恐怖心をかき立てられた。
シリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の第14話に登場した怪人サボテグロン。彼の面(人形の黄色い目の部分)は演者の目が露出しており、奇怪な外見に加えてその目力に、筆者は恐怖心をかき立てられた。

(余談ですが、私が子どもの頃にショッカー怪人を怖いと思った要因の1つが、怪人達の面から伝わる「目力」でした。『仮面ライダー(1971)』の序盤に登場する怪人達の一部は、奇抜な外見に加えて、中に入っている演者さんの目が露出していた怪人も多く登場していました。理解不能な奇声を上げて人々を襲い、まるで視聴者の恐怖を見透かすかのような目力の迫力に、テレビの前で怯えつつも、怖いもの見たさで何度もビデオで『仮面ライダー(1971)』を観ていたものです。)

着ぐるみに入るということは、確かに役者としての顔を奪われることなのかもしれません。しかし、それを乗り越えて仮面ライダーや個性溢れる怪人達を魂込めて演じきった「大野剣友会」の俳優達の勇姿から届けられた感動は、これからも仮面ライダーと共に歩んだ人々の心の中に残り続けていくと共に、未来の新たな世代へと継承されていくことでしょうー。

さて、ここまで本記事を読んでいただき、「もっと仮面ライダーや昭和の特撮ヒーローのアクションの話が聞きたい!」、「もっと大野剣友会について知りたい!」という方も、多くいらっしゃるのではないかと思います。

そんな皆さまにお勧めなのが、2025年1月25日に「LOFT9 Shibuya」(外部リンク)にて開催されるトークイベント「昭和特撮アクション 超・大野剣友会祭り」(外部リンク)。

昭和仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズ等で、アクションやスタント、スーツアクターを担当した大野剣友会のメインメンバーの皆さまがご登壇され、剣友会の歴史や特撮アクション番組について語るほか、昭和特撮アクションの雄姿を体感することのできる最後のチャンス。チケット情報等、くわしくはイベント公式サイト(外部リンク)をご確認くださいませ。

剣友会創立60周年の節目を迎え、今や伝説となった大野剣友会のメンバーの皆さまから、どんなお話しを伺えるのか、私も1ファンとして期待に胸が高鳴ります。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

(参考文献)

・小田克己、『仮面ライダーをつくった男たち1971・2011』、講談社、
・二之宮隆(双葉社)、『仮面ライダー昭和最強伝説』、双葉社

・鈴木康成、『語れ!仮面ライダー』、KKベストセラーズ

・鈴木美潮、『昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか』、集英社

(本記事でご紹介したイベントについて)

昭和特撮アクション 超・大野剣友会祭り(外部リンク)

(大野剣友会について)

大野剣友会 Official WebSite(外部リンク)

(昭和の仮面ライダーシリーズを視聴するなら)

東映特撮ファンクラブ(TTFC)(外部リンク)

本記事でご紹介した米国ハワイ州 観光地アクセス

Ala Moana Center
住所:1450 Ala Moana Boulevard, Honolulu, HI 96814
公式サイト:https://www.alamoanacenter.com/ja/(外部リンク)

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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