【放送20周年!】最後の切り札となった仮面ライダー剣(ブレイド)とカリスの友情と哀しき別離とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
あっという間に12月も半ばですが、皆さまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「切り札」です。
「切り札」とは、「とっておきの最も有力な手段。最後のきめて」と定義され(広辞苑)、不利な戦況を覆す最後の手段として、私達の暮らしの中で用いられている言葉です。
この「切り札」ですが、他にも「トランプで、他の組の札を全部負かす力があると決められた札」(広辞苑)、さらに英語圏だと「trump (card)」と表現され、最も有力な手段として定義されています(ジーニアス和英辞典)。
ここで大切なキーワードとなるのが、「trump (card)=トランプ」。
日本で暮らしていると「トランプ」と聞けばカードゲームですが、英語圏での「trump」は最強の札という意味もあります。
さて、この「トランプ(trump)」。我が国が世界に誇る「特撮ヒーロー番組」の世界でも、度々用いられてきた重要な要素でもありました。
数ある「トランプ(trump)」をモチーフとした特撮ヒーロー番組の中で、今回焦点を当てるのは、2004年に放送された東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダー剣(ブレイド)』。
本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第5作。
『仮面ライダー剣(2004)』の作品モチーフとして導入されたのが、カードゲームの王様である「トランプ」でした。
本作には4人の仮面ライダーが登場し、それぞれがスペード(仮面ライダーブレイド)、ダイヤ(仮面ライダーギャレン)、ハート(仮面ライダーカリス)、クローバー(仮面ライダーレンゲル)と、トランプの絵柄を背負ったヒーロー達でした。
そんなトランプモチーフの4人の仮面ライダーが登場する『仮面ライダー剣(2004)』ですが、今年で放送20周年。本作が果たしてどんな物語なのか、少しだけ紐解いていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【昭和から平成へ】挑戦に次ぐ挑戦!新たなヒーロー像を確立した平成仮面ライダーシリーズとはどんな作品?
さて、本記事では『仮面ライダー剣(2004)』のお話に入っていきますが、その前に少しだけ、仮面ライダーシリーズはどんなシリーズなのか、振り返ってみたいと思います。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、愛車であるバイク(サイクロン号)に乗り、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人達と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
そして時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、本作で試みられたのが、これまでの仮面ライダーシリーズにおいて構築された「お約束の破壊」でした。
つまり「仮面ライダー=改造人間」、「仮面ライダー対悪の秘密結社」、「奇声を放つ戦闘員の集団と、それを率いる悪の怪人」といった、昭和の仮面ライダーシリーズで定着していた概念、いわば「お約束」を破壊し、平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとしていたのです。
『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公(五代雄介)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語。
本作は徹底した現実志向的な作風で物語が展開され、仮面ライダーと怪人の対決という最低限の番組要素を除いて、「世界征服を謳う大それた悪の組織」や「悪の組織で働く、奇声を放つ戦闘員」、「未知の科学力で改造された人間」等、非現実的かつ科学的な立証が困難な設定は廃されました。
これまでの仮面ライダーシリーズの既成概念を破壊する、全く新しい世界観で好評を得た『仮面ライダークウガ(2000)』に続き、シリーズのバトンは次回作『仮面ライダーアギト(2001)』、『仮面ライダー龍騎(2002)』、『仮面ライダー555(2003)』へと受け継がれ、先述した『クウガ』から数えて5作目の平成シリーズとなったのが、本記事で取り上げる『仮面ライダー剣(2004)』でした。
先述したように、本作には4人のトランプをモチーフとした仮面ライダーが登場し、それぞれ己の弱さと向き合いながら、仮面ライダーとして戦う宿命を背負っていく物語が展開されました。
それでは次章より、この『仮面ライダー剣(2004)』はどんな物語なのか?
少しだけ覗いてみたいと思います。
【職業・仮面ライダー!】運命の切り札をつかみ取れ!仮面ライダーブレイドとカリス、2人のライダーの共闘と別離とは?
さて、ここからは『仮面ライダー剣(2004)』の物語を見つめてみたいと思います。本作は上述したとおり、4人のトランプの仮面ライダーが活躍する物語。その中でも今回は、主人公・ブレイド(スペード)とカリス(ハート)の関係に焦点を当てていきたいと思います。
本作の物語ですが、語るには少し複雑なので、ざっくりと流れを概説します。
1万年前、地球を舞台とした53種のアンデット(怪人)達による大きな戦い(バトルファイト)がありました。怪人達はカマキリやコウモリ、クモにトラと私達がよく知る動物達の姿をしており、中には極めて人間と酷似した怪人(ヒューマンアンデット)もいました。
なぜ怪人同士が戦うのか・・・それは地球を支配する生物を決めるため、怪人達はそれぞれの地球上の種(動物や植物等)を背負い、最後の1体となるまで戦わなければならなかったからでした。敗れた者は当バトルの主催者によって、カードの中に閉じ込められてしまうルール。地球を覇権する種を決める大きな争いでした。
そんなバトルファイトを影で支配し、残酷な殺し屋として恐れられていたのが、ジョーカーと呼ばれる53番目のアンデット(怪人)でした。
しかし、そんなジョーカーを倒して「バトルファイト」の勝者となったのが、人間と酷似した怪人(ヒューマンアンデット)であり、彼が人間の祖となって1万年、地球は人類が繁栄した星となったのです。
そして1万年後、この「バトルファイト」の謎を解明するために設立された「人類基盤史研究所(通称:ボード)」は、チベットの遺跡から発見された複数のカードに封印された怪人達を見つけ、保管していました。
しかしこのカードに封印された怪人達が、何らかの原因によりカードから解放されてしまい、この状況を危険視したボードが開発したのが「仮面ライダー」と呼ばれる装着型システムでした。ボードは主人公(剣崎一真)をスカウトし、仮面ライダーブレイドとして怪人達の封印を依頼します。子供時代に両親を失った経験のある剣崎は、人を守る仕事である仮面ライダーになることを了承し、他の仮面ライダー達とともに、怪人を封印する戦いに身を投じることになります。
昭和の仮面ライダーシリーズのような改造人間でもない上、怪人を倒すのではなくカードに封印する。これだけでも十分異色なのですが、主人公(剣崎)はボード(組織)に所属する一員として仮面ライダーを名乗る・・・正に「職業・仮面ライダー」という人物でした。
しかしアンデット(怪人)の襲撃を受け、ボードは主人公と仲間たちを残して壊滅。そんな主人公達の前に現れたのは、ハートの仮面ライダー、カリスでした。
実はこのカリス、その正体は先述した1万年前の戦い(バトルファイト)に敗れたジョーカーでした。しかしたくさんのカードに封印された怪人達が復活した際、ジョーカーも復活しており、人間社会に溶け込みながら、仮面ライダーに変身して他の怪人達を封印してきたのです。
「ジョーカーって残酷な殺し屋さんで、怖い怪人じゃなかったっけ?」
・・・問題はそこです。実はこのジョーカー、現代に復活した際に、雪山で死亡したカメラマンと出会い、彼の家族(妻子)の写真を託されたことで、人間という生物に関心を持つようになります。ジョーカーは人間の姿(相川始)に変身して、死んだカメラマンの家族(栗原家)と温かな生活を共にし、徐々に人間らしい感情が芽生え、人間を愛し始めるようになりました。そして、自らの正体であるジョーカーに戻ることを忌まわしく思うようになります。
しかし怪人(アンデット)が出現すれば、始(ジョーカー)は冷酷な仮面ライダーカリスへと変身。驚異的な闘争本能と強さ、さらに弓術に鎌状の武器を駆使して戦う一匹狼で、他の仮面ライダーと協調する姿勢をみせることはありません。しかし、そんな彼と深く関わったのが仮面ライダー剣(剣崎)でした。
カリス(始)の正体を知り、剣崎は始に対して当初は良い印象を持っていなかったものの、徐々に始を理解していくようになりました。傷ついた始を介抱したり、始が栗原家の人々を愛していることを知ります。
怪人(アンデット)を封印する数々の戦いを経て「友」に近い間柄になりつつある両者。さらに両者の関係を深めたのは、剣崎が暴走する始(ジョーカー)の本能を、身を挺して押さえ込もうとしたことでした。
それは、剣崎が仮面ライダーブレイド最強の姿である「キングフォーム」に覚醒したことで、始のジョーカーとしての本能が呼応され、同居する家族(天音)のことも認識できなくなる状況へと陥ってしまいました。しかし剣崎は身を挺して暴走する始に挑み、始はかつての自分(ジョーカー)の呪縛から解き放たれ、新たな自分を見出すことができたのでした。
その後、今度は始が剣崎を助けたりと、幾度の共闘や対立を経て、深まっていくかに見えた両者の絆ー。しかし剣崎と始を引き離す「ある事実」が発覚し、二人は永遠に別れなければならない宿命を背負うことになりますー。
その引き金となったのは、ギャレンと呼ばれるダイヤの仮面ライダーが、復活した怪人最後の1体の封印に成功したことでした。これで全ての戦いが終了したか・・に見えたのですが、現実は良い方向に転じることなく、むしろ悪化。ゴキブリ型の怪人の軍団(ダークローチ)が大量出現し、人々を襲います。
その要因は「ジョーカーが戦いの勝者(最後の1人)となれば、地球上全ての生物が滅びてしまう」という、かつてのバトルファイトの理不尽なルールによるものでした。
4人の仮面ライダー達の活躍で、始(ジョーカー)以外の全ての怪人が封印された現代ー。生き残ったのは始だけ。始(ジョーカー)が最後の一人になったことで、地球上の生物を滅ぼすために、ゴキブリの怪人が大量発生してしまったのです。
愛する人類存続のため、始は剣崎に自らを封印してもらおうと考えますが、剣崎の考えは違っていました。
それは、「自分も始と同じジョーカー(怪人)になることで、始を最後の1人にはさせない」というものでした。
確かに始(ジョーカー)を封印すれば平和は戻るのかも知れない。しかし、人間を理解し愛するようになった始を、剣崎は封印することはできなかったのです。
始が最後の1体(怪人)でなくなれば、ゴキブリ怪人はもう現れない。つまり、人類を破滅から救うことが出来るのです。
実は剣崎、キングフォームとなって自身を強化した際、あまりにも大きすぎる力ゆえに自身をコントロールできなくなった上、その力を使い続ければ、始と同じジョーカー(怪人)になってしまうというリスクが伴っていました。
しかし人類を救うため、剣崎は自身がジョーカー(怪人)になる覚悟を決めます。剣崎が始と同じジョーカーになったことで、ジョーカーが2体となった世界の終焉は阻止されました。
ところが、1万年前のバトルファイトと同様、怪人達は最後の1体となるまで互いに戦い続けなければならない宿命にありました。しかし、剣崎は始と戦ってどちらかが勝利すれば、またゴキブリ怪人が大量発生して人類が滅亡してしまう状況を危惧し、始と距離をとることを決めます。お互い、二度と会わないように、触れ合わないように・・・。
「お前は・・・人間達の中で生き続けろ。」(剣崎:仮面ライダー剣)
剣崎は姿をくらましたのでしたー。
上述した『仮面ライダー剣(2004)』の物語は、全49話の放送で幕を閉じます。仮面ライダーでありながら、自身もジョーカーという怪人になる宿命を背負った剣崎(仮面ライダーブレイド)。そしてお互いが惹かれ合わないように、永遠に離れて生きることを余儀なくされた始(仮面ライダーカリス)ー。
「もう、剣崎と始は会えなくなってしまったの?」
・・・いいえ。実は彼ら2人の関係は、『剣(2004)』放送から約15年後、2019年に放送された『仮面ライダージオウ』においてまた新たな物語が紡がれました。
世界の存続のために、決して会えない宿命にあった剣崎と始。そんな彼らがどうして再会することになったのか?
宜しければ是非、東映公式配信サイト「東映特撮ファンクラブ(TTFC)」(外部リンク)や本作のBlu-ray等、ご自身の目で確かめてみてください。
また今年(2024年)放送20周年を迎えた『仮面ライダー剣(2004)』は、20周年をお祝いするメモリアルイベント(外部リンク)が開催され、本作に登場する4人の仮面ライダーや出演キャストが再集結。上述した仮面ライダー剣やカリスの他、ギャレンやレンゲルも新たな姿(キングフォーム)で活躍。当時放送を視聴していたファンの心を熱くしただけでなく、次なる時代へと向けた大きな期待を感じさせる特別な催事となりました。
私も20年前、子ども時代に『仮面ライダー剣(2004)』を夢中になって視聴していましたが、強い仮面ライダーの姿だけでなく、それぞれのライダー達の人間的な弱さや、ヒーローになってしまった哀しみの物語に強く惹かれたものでした。
20年前に活躍した4人の仮面ライダー達の活躍は、新たな未来へと続いていくように、人生という限られた時間の中で「運命の切り札」を握るのは自分自身。
奇跡。切り札は自分だけー。
20周年の節目を迎えた『仮面ライダー剣(2004)』の物語が、今後どのように拡がっていくのか、心から楽しみです。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.5 仮面ライダーブレイド』、講談社
・吉田伸浩(てれびくん編集部)、『てれびくんデラックス 愛蔵版 仮面ライダーブレイド 超全集』、小学館
(アクセス)
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住所:South Island 7183,New Zealand
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