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【放送20周年!】最後の切り札となった仮面ライダー剣(ブレイド)とカリスの友情と哀しき別離とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

あっという間に12月も半ばですが、皆さまいかがお過ごしですか?

さて、今回のテーマは「切り札」です。

「切り札」とは、「とっておきの最も有力な手段。最後のきめて」と定義され(広辞苑)、不利な戦況を覆す最後の手段として、私達の暮らしの中で用いられている言葉です。

この「切り札」ですが、他にも「トランプで、他の組の札を全部負かす力があると決められた札」(広辞苑)、さらに英語圏だと「trump (card)」と表現され、最も有力な手段として定義されています(ジーニアス和英辞典)。

ここで大切なキーワードとなるのが、「trump (card)=トランプ」。

日本で暮らしていると「トランプ」と聞けばカードゲームですが、英語圏での「trump」は最強の札という意味もあります。

さて、この「トランプ(trump)」。我が国が世界に誇る「特撮ヒーロー番組」の世界でも、度々用いられてきた重要な要素でもありました。

数ある「トランプ(trump)」をモチーフとした特撮ヒーロー番組の中で、今回焦点を当てるのは、2004年に放送された東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダー剣(ブレイド)』。

本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第5作。

『仮面ライダー剣(2004)』の作品モチーフとして導入されたのが、カードゲームの王様である「トランプ」でした。

本作には4人の仮面ライダーが登場し、それぞれがスペード(仮面ライダーブレイド)、ダイヤ(仮面ライダーギャレン)、ハート(仮面ライダーカリス)、クローバー(仮面ライダーレンゲル)と、トランプの絵柄を背負ったヒーロー達でした。

そんなトランプモチーフの4人の仮面ライダーが登場する『仮面ライダー剣(2004)』ですが、今年で放送20周年。本作が果たしてどんな物語なのか、少しだけ紐解いていきたいと思います。

※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。

【昭和から平成へ】挑戦に次ぐ挑戦!新たなヒーロー像を確立した平成仮面ライダーシリーズとはどんな作品?

さて、本記事では『仮面ライダー剣(2004)』のお話に入っていきますが、その前に少しだけ、仮面ライダーシリーズはどんなシリーズなのか、振り返ってみたいと思います。

『仮面ライダー(1971)』より仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。彼らは元々敵対する悪の組織「ショッカー」の科学力で生まれた存在で、人間でなくなってしまった悲劇性を抱えていた。
『仮面ライダー(1971)』より仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。彼らは元々敵対する悪の組織「ショッカー」の科学力で生まれた存在で、人間でなくなってしまった悲劇性を抱えていた。

仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、愛車であるバイク(サイクロン号)に乗り、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人達と戦う物語が展開されました。

『仮面ライダーアマゾン』は1974年10月19日から1975年3月29日まで全24話が放送された。東映ビデオより、本作を収録したBlu-ray Boxが発売中(筆者撮影)。
『仮面ライダーアマゾン』は1974年10月19日から1975年3月29日まで全24話が放送された。東映ビデオより、本作を収録したBlu-ray Boxが発売中(筆者撮影)。

その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。

昭和にテレビ放送された仮面ライダーシリーズとしては実質最後の作品となったのが、写真右の『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。本作では歴代の仮面ライダーが全員集合する集大成的な作品であった。
昭和にテレビ放送された仮面ライダーシリーズとしては実質最後の作品となったのが、写真右の『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。本作では歴代の仮面ライダーが全員集合する集大成的な作品であった。

その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。

そして時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、本作で試みられたのが、これまでの仮面ライダーシリーズにおいて構築された「お約束の破壊」でした。

『仮面ライダークウガ(2000)』において、クウガと敵対する戦闘民族「グロンギ」。超古代に封印されたが現代に蘇った。殺害した人間の数で位を競い合う階級性であり、ショッカーのような戦闘員は存在しない。
『仮面ライダークウガ(2000)』において、クウガと敵対する戦闘民族「グロンギ」。超古代に封印されたが現代に蘇った。殺害した人間の数で位を競い合う階級性であり、ショッカーのような戦闘員は存在しない。

つまり「仮面ライダー=改造人間」、「仮面ライダー対悪の秘密結社」、「奇声を放つ戦闘員の集団と、それを率いる悪の怪人」といった、昭和の仮面ライダーシリーズで定着していた概念、いわば「お約束」を破壊し、平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとしていたのです。

『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公(五代雄介)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語。

本作は徹底した現実志向的な作風で物語が展開され、仮面ライダーと怪人の対決という最低限の番組要素を除いて、「世界征服を謳う大それた悪の組織」や「悪の組織で働く、奇声を放つ戦闘員」、「未知の科学力で改造された人間」等、非現実的かつ科学的な立証が困難な設定は廃されました。

平成仮面ライダーシリーズ第2作『仮面ライダーアギト(2001)』。人類の進化を快く思わないアンノウン(怪人)を相手に、3人の仮面ライダーが己の信念のもとに戦い、対立し合い、苦悩する物語が展開された。
平成仮面ライダーシリーズ第2作『仮面ライダーアギト(2001)』。人類の進化を快く思わないアンノウン(怪人)を相手に、3人の仮面ライダーが己の信念のもとに戦い、対立し合い、苦悩する物語が展開された。

平成仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダー龍騎(2002)』では、「戦わなければ生き残れない」を作品のテーマに、自身の願いを叶えるための13人の仮面ライダー同士の殺し合いが描かれた(筆者撮影)。
平成仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダー龍騎(2002)』では、「戦わなければ生き残れない」を作品のテーマに、自身の願いを叶えるための13人の仮面ライダー同士の殺し合いが描かれた(筆者撮影)。

平成仮面ライダーシリーズ第4作『仮面ライダー555(2003)』では、主人公である仮面ライダーファイズだけでなく、敵対する怪人(オルフェノク)のドラマも描かれ、彼らの悲しき宿命と個性が描かれた。
平成仮面ライダーシリーズ第4作『仮面ライダー555(2003)』では、主人公である仮面ライダーファイズだけでなく、敵対する怪人(オルフェノク)のドラマも描かれ、彼らの悲しき宿命と個性が描かれた。


これまでの仮面ライダーシリーズの既成概念を破壊する、全く新しい世界観で好評を得た『仮面ライダークウガ(2000)』に続き、シリーズのバトンは次回作『仮面ライダーアギト(2001)』、『仮面ライダー龍騎(2002)』、『仮面ライダー555(2003)』へと受け継がれ、先述した『クウガ』から数えて5作目の平成シリーズとなったのが、本記事で取り上げる『仮面ライダー剣(2004)』でした。

『仮面ライダー剣』は2004年1月25日から2005年1月23日まで全49話が放送され、同期間中には映画(劇場版)が1作品公開された(写真は本作のBlu-ray Box全3巻。筆者撮影)
『仮面ライダー剣』は2004年1月25日から2005年1月23日まで全49話が放送され、同期間中には映画(劇場版)が1作品公開された(写真は本作のBlu-ray Box全3巻。筆者撮影)

先述したように、本作には4人のトランプをモチーフとした仮面ライダーが登場し、それぞれ己の弱さと向き合いながら、仮面ライダーとして戦う宿命を背負っていく物語が展開されました。

それでは次章より、この『仮面ライダー剣(2004)』はどんな物語なのか?

少しだけ覗いてみたいと思います。

【職業・仮面ライダー!】運命の切り札をつかみ取れ!仮面ライダーブレイドとカリス、2人のライダーの共闘と別離とは?

さて、ここからは『仮面ライダー剣(2004)』の物語を見つめてみたいと思います。本作は上述したとおり、4人のトランプの仮面ライダーが活躍する物語。その中でも今回は、主人公・ブレイド(スペード)とカリス(ハート)の関係に焦点を当てていきたいと思います。

『仮面ライダー剣(2004)』全49話において、何度も共闘や対立を繰り返し、互いに物語の鍵を大きく握る存在となった2人の仮面ライダー。ブレイド(右)とカリス(左)は、果たしてどんな運命を歩んだのか?
『仮面ライダー剣(2004)』全49話において、何度も共闘や対立を繰り返し、互いに物語の鍵を大きく握る存在となった2人の仮面ライダー。ブレイド(右)とカリス(左)は、果たしてどんな運命を歩んだのか?

本作の物語ですが、語るには少し複雑なので、ざっくりと流れを概説します。

1万年前、地球を舞台とした53種のアンデット(怪人)達による大きな戦い(バトルファイト)がありました。怪人達はカマキリやコウモリ、クモにトラと私達がよく知る動物達の姿をしており、中には極めて人間と酷似した怪人(ヒューマンアンデット)もいました。

なぜ怪人同士が戦うのか・・・それは地球を支配する生物を決めるため、怪人達はそれぞれの地球上の種(動物や植物等)を背負い、最後の1体となるまで戦わなければならなかったからでした。敗れた者は当バトルの主催者によって、カードの中に閉じ込められてしまうルール。地球を覇権する種を決める大きな争いでした。

封印されたアンデット(怪人)達は「ラウズカード」と呼ばれるトランプ状のカードの中に封印される。4人の仮面ライダーは戦闘時にラウズカードを使用し、ライダーキックをはじめ必殺技を解放することができる。
封印されたアンデット(怪人)達は「ラウズカード」と呼ばれるトランプ状のカードの中に封印される。4人の仮面ライダーは戦闘時にラウズカードを使用し、ライダーキックをはじめ必殺技を解放することができる。

そんなバトルファイトを影で支配し、残酷な殺し屋として恐れられていたのが、ジョーカーと呼ばれる53番目のアンデット(怪人)でした。

戦いを好む凶暴な性格である怪人、ジョーカー。彼の唯一無二の能力は、多種多様な姿への変身能力。現代に蘇ったジョーカーは人間の姿へ変身し、人間の感情を学ぶために「とある家庭」の一員として生活するが・・・?
戦いを好む凶暴な性格である怪人、ジョーカー。彼の唯一無二の能力は、多種多様な姿への変身能力。現代に蘇ったジョーカーは人間の姿へ変身し、人間の感情を学ぶために「とある家庭」の一員として生活するが・・・?

しかし、そんなジョーカーを倒して「バトルファイト」の勝者となったのが、人間と酷似した怪人(ヒューマンアンデット)であり、彼が人間の祖となって1万年、地球は人類が繁栄した星となったのです。

そして1万年後、この「バトルファイト」の謎を解明するために設立された「人類基盤史研究所(通称:ボード)」は、チベットの遺跡から発見された複数のカードに封印された怪人達を見つけ、保管していました。

しかしこのカードに封印された怪人達が、何らかの原因によりカードから解放されてしまい、この状況を危険視したボードが開発したのが「仮面ライダー」と呼ばれる装着型システムでした。ボードは主人公(剣崎一真)をスカウトし、仮面ライダーブレイドとして怪人達の封印を依頼します。子供時代に両親を失った経験のある剣崎は、人を守る仕事である仮面ライダーになることを了承し、他の仮面ライダー達とともに、怪人を封印する戦いに身を投じることになります。

仮面ライダーブレイドは、人類基盤史研究所(ボード)が開発した仮面ライダー。剣術や格闘技を駆使して怪人と戦い、物語の中で段階的な進化を遂げていった(筆者撮影)。
仮面ライダーブレイドは、人類基盤史研究所(ボード)が開発した仮面ライダー。剣術や格闘技を駆使して怪人と戦い、物語の中で段階的な進化を遂げていった(筆者撮影)。

昭和の仮面ライダーシリーズのような改造人間でもない上、怪人を倒すのではなくカードに封印する。これだけでも十分異色なのですが、主人公(剣崎)はボード(組織)に所属する一員として仮面ライダーを名乗る・・・正に「職業・仮面ライダー」という人物でした。

仮面ライダーブレイドが愛用する剣(ブレイラウザー)には、怪人達を封印したラウズカードを多数収納。ブレイドが手札からカードを選び、怪人達の能力を使った必殺技(ライダーキック等)を発動させる。
仮面ライダーブレイドが愛用する剣(ブレイラウザー)には、怪人達を封印したラウズカードを多数収納。ブレイドが手札からカードを選び、怪人達の能力を使った必殺技(ライダーキック等)を発動させる。

しかしアンデット(怪人)の襲撃を受け、ボードは主人公と仲間たちを残して壊滅。そんな主人公達の前に現れたのは、ハートの仮面ライダー、カリスでした。

仮面ライダーブレイドの前に現れたハートの仮面ライダー、カリス。その正体は1万年の封印から解き放たれたジョーカーである。彼は変身能力で人間の姿になり、静かに生活していたが、その真意は・・・(筆者撮影)。
仮面ライダーブレイドの前に現れたハートの仮面ライダー、カリス。その正体は1万年の封印から解き放たれたジョーカーである。彼は変身能力で人間の姿になり、静かに生活していたが、その真意は・・・(筆者撮影)。

実はこのカリス、その正体は先述した1万年前の戦い(バトルファイト)に敗れたジョーカーでした。しかしたくさんのカードに封印された怪人達が復活した際、ジョーカーも復活しており、人間社会に溶け込みながら、仮面ライダーに変身して他の怪人達を封印してきたのです。

「ジョーカーって残酷な殺し屋さんで、怖い怪人じゃなかったっけ?」

・・・問題はそこです。実はこのジョーカー、現代に復活した際に、雪山で死亡したカメラマンと出会い、彼の家族(妻子)の写真を託されたことで、人間という生物に関心を持つようになります。ジョーカーは人間の姿(相川始)に変身して、死んだカメラマンの家族(栗原家)と温かな生活を共にし、徐々に人間らしい感情が芽生え、人間を愛し始めるようになりました。そして、自らの正体であるジョーカーに戻ることを忌まわしく思うようになります。

ジョーカーは相川始という名前で、喫茶店を営む栗原家に居候し、カメラマンとして振る舞う。栗原家の妻や娘(天音)と生活を共にしていく中で、彼の中に人間らしい感情が芽生え、過去の自分と決別を望むようになる。
ジョーカーは相川始という名前で、喫茶店を営む栗原家に居候し、カメラマンとして振る舞う。栗原家の妻や娘(天音)と生活を共にしていく中で、彼の中に人間らしい感情が芽生え、過去の自分と決別を望むようになる。

しかし怪人(アンデット)が出現すれば、始(ジョーカー)は冷酷な仮面ライダーカリスへと変身。驚異的な闘争本能と強さ、さらに弓術に鎌状の武器を駆使して戦う一匹狼で、他の仮面ライダーと協調する姿勢をみせることはありません。しかし、そんな彼と深く関わったのが仮面ライダー剣(剣崎)でした。

カリス(始)の正体を知り、剣崎は始に対して当初は良い印象を持っていなかったものの、徐々に始を理解していくようになりました。傷ついた始を介抱したり、始が栗原家の人々を愛していることを知ります。

怪人(アンデット)を封印する数々の戦いを経て「友」に近い間柄になりつつある両者。さらに両者の関係を深めたのは、剣崎が暴走する始(ジョーカー)の本能を、身を挺して押さえ込もうとしたことでした。

それは、剣崎が仮面ライダーブレイド最強の姿である「キングフォーム」に覚醒したことで、始のジョーカーとしての本能が呼応され、同居する家族(天音)のことも認識できなくなる状況へと陥ってしまいました。しかし剣崎は身を挺して暴走する始に挑み、始はかつての自分(ジョーカー)の呪縛から解き放たれ、新たな自分を見出すことができたのでした。

仮面ライダーブレイド(剣崎)が究極の姿「キングフォーム(右)」へと覚醒したことに伴い、始はジョーカーとしての本能に苦しめられる。剣崎のお陰でジョーカーの呪縛から解き放たれ、ワイルドカリスへと進化。
仮面ライダーブレイド(剣崎)が究極の姿「キングフォーム(右)」へと覚醒したことに伴い、始はジョーカーとしての本能に苦しめられる。剣崎のお陰でジョーカーの呪縛から解き放たれ、ワイルドカリスへと進化。

その後、今度は始が剣崎を助けたりと、幾度の共闘や対立を経て、深まっていくかに見えた両者の絆ー。しかし剣崎と始を引き離す「ある事実」が発覚し、二人は永遠に別れなければならない宿命を背負うことになりますー。

仮面ライダーギャレン(右)とレンゲル(左)。ギャレンは仮面ライダーとして戦う中で、体と精神がボロボロになる憂い目に遭うが、恐怖心を乗り越えた。高校生であるレンゲルも、悪の心に支配される自分を克服した。
仮面ライダーギャレン(右)とレンゲル(左)。ギャレンは仮面ライダーとして戦う中で、体と精神がボロボロになる憂い目に遭うが、恐怖心を乗り越えた。高校生であるレンゲルも、悪の心に支配される自分を克服した。

その引き金となったのは、ギャレンと呼ばれるダイヤの仮面ライダーが、復活した怪人最後の1体の封印に成功したことでした。これで全ての戦いが終了したか・・に見えたのですが、現実は良い方向に転じることなく、むしろ悪化。ゴキブリ型の怪人の軍団(ダークローチ)が大量出現し、人々を襲います。

その要因は「ジョーカーが戦いの勝者(最後の1人)となれば、地球上全ての生物が滅びてしまう」という、かつてのバトルファイトの理不尽なルールによるものでした。

4人の仮面ライダー達の活躍で、始(ジョーカー)以外の全ての怪人が封印された現代ー。生き残ったのは始だけ。始(ジョーカー)が最後の一人になったことで、地球上の生物を滅ぼすために、ゴキブリの怪人が大量発生してしまったのです。

人類存続のために、相まみえることになった剣崎(右)と始(左)。これまでの戦いを通じて関係を深めてきた両者は、戦いあうことでしかわかりあえない定めなのか・・・(筆者撮影)。
人類存続のために、相まみえることになった剣崎(右)と始(左)。これまでの戦いを通じて関係を深めてきた両者は、戦いあうことでしかわかりあえない定めなのか・・・(筆者撮影)。

愛する人類存続のため、始は剣崎に自らを封印してもらおうと考えますが、剣崎の考えは違っていました。

それは、「自分も始と同じジョーカー(怪人)になることで、始を最後の1人にはさせない」というものでした。

確かに始(ジョーカー)を封印すれば平和は戻るのかも知れない。しかし、人間を理解し愛するようになった始を、剣崎は封印することはできなかったのです。

始が最後の1体(怪人)でなくなれば、ゴキブリ怪人はもう現れない。つまり、人類を破滅から救うことが出来るのです。

実は剣崎、キングフォームとなって自身を強化した際、あまりにも大きすぎる力ゆえに自身をコントロールできなくなった上、その力を使い続ければ、始と同じジョーカー(怪人)になってしまうというリスクが伴っていました。

しかし人類を救うため、剣崎は自身がジョーカー(怪人)になる覚悟を決めます。剣崎が始と同じジョーカーになったことで、ジョーカーが2体となった世界の終焉は阻止されました。

剣崎(右)は始を封印せず、自分もジョーカーとなることで世界の破滅を防いだ。自分の運命と戦い、勝利することを始に約束した剣崎は、自らどこかへと姿を消したー。
剣崎(右)は始を封印せず、自分もジョーカーとなることで世界の破滅を防いだ。自分の運命と戦い、勝利することを始に約束した剣崎は、自らどこかへと姿を消したー。

ところが、1万年前のバトルファイトと同様、怪人達は最後の1体となるまで互いに戦い続けなければならない宿命にありました。しかし、剣崎は始と戦ってどちらかが勝利すれば、またゴキブリ怪人が大量発生して人類が滅亡してしまう状況を危惧し、始と距離をとることを決めます。お互い、二度と会わないように、触れ合わないように・・・。

「お前は・・・人間達の中で生き続けろ。」(剣崎:仮面ライダー剣)

剣崎は姿をくらましたのでしたー。

始の前から姿を消した剣崎を捜す他の仮面ライダー達。しかし彼の姿はどこにもなく、仲間の呼びかけに反応したのは、静かな波の音だけだった(ニュージーランド エイベル・タスマン国立公園内にて撮影)。
始の前から姿を消した剣崎を捜す他の仮面ライダー達。しかし彼の姿はどこにもなく、仲間の呼びかけに反応したのは、静かな波の音だけだった(ニュージーランド エイベル・タスマン国立公園内にて撮影)。

上述した『仮面ライダー剣(2004)』の物語は、全49話の放送で幕を閉じます。仮面ライダーでありながら、自身もジョーカーという怪人になる宿命を背負った剣崎(仮面ライダーブレイド)。そしてお互いが惹かれ合わないように、永遠に離れて生きることを余儀なくされた始(仮面ライダーカリス)ー。

「もう、剣崎と始は会えなくなってしまったの?」

・・・いいえ。実は彼ら2人の関係は、『剣(2004)』放送から約15年後、2019年に放送された『仮面ライダージオウ』においてまた新たな物語が紡がれました。

平成仮面ライダーシリーズ第20作『仮面ライダージオウ(2019)』。歴代平成ライダーが登場する本作第29話において、剣崎と始は再び出会ってしまう。やはり避けられぬ戦いだったのか、その行く末はー。
平成仮面ライダーシリーズ第20作『仮面ライダージオウ(2019)』。歴代平成ライダーが登場する本作第29話において、剣崎と始は再び出会ってしまう。やはり避けられぬ戦いだったのか、その行く末はー。

世界の存続のために、決して会えない宿命にあった剣崎と始。そんな彼らがどうして再会することになったのか?

宜しければ是非、東映公式配信サイト「東映特撮ファンクラブ(TTFC)」(外部リンク)や本作のBlu-ray等、ご自身の目で確かめてみてください。

また今年(2024年)放送20周年を迎えた『仮面ライダー剣(2004)』は、20周年をお祝いするメモリアルイベント(外部リンク)が開催され、本作に登場する4人の仮面ライダーや出演キャストが再集結。上述した仮面ライダー剣やカリスの他、ギャレンやレンゲルも新たな姿(キングフォーム)で活躍。当時放送を視聴していたファンの心を熱くしただけでなく、次なる時代へと向けた大きな期待を感じさせる特別な催事となりました。

私も20年前、子ども時代に『仮面ライダー剣(2004)』を夢中になって視聴していましたが、強い仮面ライダーの姿だけでなく、それぞれのライダー達の人間的な弱さや、ヒーローになってしまった哀しみの物語に強く惹かれたものでした。

20年前に活躍した4人の仮面ライダー達の活躍は、新たな未来へと続いていくように、人生という限られた時間の中で「運命の切り札」を握るのは自分自身。

奇跡。切り札は自分だけー。

20周年の節目を迎えた『仮面ライダー剣(2004)』の物語が、今後どのように拡がっていくのか、心から楽しみです。

最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。

(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.5 仮面ライダーブレイド』、講談社
・吉田伸浩(てれびくん編集部)、『てれびくんデラックス 愛蔵版 仮面ライダーブレイド 超全集』、小学館
(アクセス)
エイベル・タスマン国立公園(Abel Tasman National Park)
住所:South Island 7183,New Zealand
電話番号:+64 3-546 9339
URL:https://www.abeltasman.co.nz/(外部リンク)

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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