【仮面ライダー同士の殺し合いの果ては?】戦わなければ生き残れない!仮面ライダー龍騎の溢れる魅力とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
いよいよ12月に入りました。2024年もあと僅かとなりましたが、皆さまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「鏡」です。
「鏡」とは皆さまご存知の通り、滑らかな平面における光の反射を利用して容姿や物の像などをうつし見る道具のこと(広辞苑)。
洗面所やお風呂場、リビングに玄関等、様々な場所に設置されていたり、外出時も身だしなみのチェックのためにコンパクトミラーを持っているという方も多いかと思います(私も仕事柄、大勢の人前に出て話す機会が多いため、コンパクトミラーはいつも携帯しております)。
さてそんな「鏡」ですが、日本が世界に誇る特撮ヒーロー番組の素材としても、度々用いられた素材でもありました。
その中でも、私が子どもの頃に熱中して観ていたのが、東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダー龍騎(2002)』。
東映制作の国民的特撮ヒーロー番組である「仮面ライダーシリーズ」の1作品であり、『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第3作。本作には13人もの仮面ライダー達が登場し、鏡の世界である「ミラーワールド」を舞台に、自分の願いを叶えるために仮面ライダー同士が殺し合う物語が展開されました。
そこで本記事では、そんな『仮面ライダー龍騎(2002)』に焦点を当て、その魅力を少しだけ振り返ってみたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【昭和から平成へ】生まれ変わった仮面ライダーシリーズ!『クウガ』から始まった平成仮面ライダーシリーズ栄光の歴史とは?
さて、ここからは『仮面ライダー龍騎(2002)』のお話に入る前に・・・少しだけ仮面ライダーシリーズの歴史を辿ってみたいと思います。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、本作で試みられたのが、仮面ライダーシリーズにおける「既成概念の破壊」でした。
つまり「仮面ライダー=改造人間」、「仮面ライダー対悪の秘密結社」、「奇声を放つ戦闘員の集団と、それを率いる悪の怪人」といった、昭和の仮面ライダーシリーズで定着していた概念、いわば「お約束」を破壊し、平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとしていたのです。
その結果、『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公(五代雄介)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語が描かれました。
これまでの仮面ライダーシリーズの既成概念を破壊する、全く新しい世界観で好評を得た『仮面ライダークウガ(2000)』に続き、シリーズのバトンは次回作『仮面ライダーアギト(2001)』へと継承されました。本作では4人の仮面ライダーが登場し、それぞれが己の信念のために「闇の力」が送り込む怪人と戦う物語が展開されました。『アギト(2001)』に登場する4人の仮面ライダー達も改造人間ではなく、超常的な力から仮面ライダーとなった存在のほか、なんと警視庁の人間が怪人と戦うために強化服を装着し、仮面ライダーとして戦闘に参加する姿も描写されました。
つまり、もはや「仮面ライダー=改造人間」ではなく、特別な力のない一般人でも何かしらの必要な手続き(ベルトの入手、アーマーの装着等)を踏めば、誰でも仮面ライダーになり得る可能性が『クウガ(2000)』、『アギト(2001)』を通じて描かれており、この「誰でも仮面ライダーになれる」展開は、平成仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダー龍騎(2002)』において、大いに飛躍することになりました。
【戦わなければ生き残れない!】13人の仮面ライダー達によるバトルロワイヤル!『仮面ライダー龍騎』の物語とは?
『仮面ライダー龍騎(2002)』は2002年から2003年にかけて、全50話とテレビスペシャルが放送されました。本作の物語は、13人の仮面ライダー達が己の願いを叶えるために殺し合い、最後のひとりになった者が願いを叶えることが出来るという、仮面ライダー同士のバトルロワイヤルが描かれました。
「今までみたいな仮面ライダーと怪人が戦う話じゃないんだね?」
と指摘されますと・・・物語の重きはそこではありません。もちろん仮面ライダーが怪人(本作ではミラーモンスターと呼称)と戦う描写はあります。しかし最後の一人になるまで仮面ライダー同士が戦い、己の願いを叶えることにスポットが当てられた、いわば「戦わなければ生き残れない」ライダー達の物語が展開されました。
本作に登場する怪人達(ミラーモンスター)も人を襲い仮面ライダーに倒されるだけでなく、仮面ライダーに力を与えてくれる存在としても描かれており、モンスターと「契約」をすることで、仮面ライダーはモンスターの力を使うことが出来るという独特な試みも行なわれました。
そんな『仮面ライダー龍騎(2002)』は、13人の仮面ライダーが登場する物語。よってひとり一人個性豊かな仮面ライダーが登場しました。
意識不明状態の恋人を助けるために戦う仮面ライダーナイト、悪徳刑事が変身した仮面ライダーシザース、不治の病のため「永遠の命」を求めて弁護士が変身した仮面ライダーゾルダ、情緒不安定な性格で「英雄」になりたい承認欲求に取り憑かれた仮面ライダータイガ等、従来の仮面ライダーシリーズのような世界の平和ではなく、己の「願い」のために仮面ライダー達は壮絶なバトルを繰り広げます。
そんな中、主人公の仮面ライダー龍騎(城戸真司)は「ミラーモンスター(怪物)から人を守る」ために仮面ライダーとなり、仮面ライダー同士の戦いを止めるために奮闘します。そんな彼の思いとは裏腹に、血みどろの戦いを求める者がいました。
それが仮面ライダー王蛇と呼ばれる、最凶最悪の仮面ライダーでした。
王蛇に変身するのが、連続殺人犯の浅倉威。「イライラしたから」という単純な動機で殺人を繰り返し、自分の家族でさえ手にかけた凶悪犯。関東拘置所の中で、ライダーバトルの主催者(神崎士郎)に対して仮面ライダーになることに同意して脱獄、彼の願いは「戦いを続けること」でした。
この王蛇ですが、そのファイトスタイルは極めて野獣的。戦う対象を見つけては襲撃をかけ、たとえ逃がしても蛇のごとく対象をしつこく付け狙い、戦闘を繰り返すという強かさも有した極めて危険な存在でした。自らを無罪に出来なかった弁護士(仮面ライダーゾルダ)を逆恨みして付け狙った上、自分を逮捕した悪徳刑事(仮面ライダーシザース)を蹴り技で爆殺、さらに敵の攻撃から他のライダー(仮面ライダーガイ)を盾にして爆死させる等の凶行に及び、テレビシリーズ全50話と特番を含めて、13人中4人の仮面ライダーを殺害していました。そんな戦いそのものに喜びを見出している彼は、戦いを止めようとする仮面ライダー龍騎を敵視しています。
変身者である浅倉威は普段は浮浪者のような生活をしており、廃屋を転々とし、トカゲを丸焼きにして食べたり生卵を食したりして飢えを凌ぎ、ムール貝を殻ごと食したり、さらには泥を食べていたことを示唆させるような仰天発言も飛び出す等、私生活や食生活も極めて野獣的。変身前だろうが変身後だろうが「イライラ」を動機に人を襲い暴行や殺害に及んでいました。当然ながらそんな浅倉に対して恨みを持つ者も登場し、姉を浅倉に殺された女性が仮面ライダーファムとなり、姉を蘇生させるためにライダー同士の殺し合いに参戦する等、新たな憎しみさえ生み出してしまったのです。
さらに浅倉(王蛇)は変身途中の主人公(仮面ライダー龍騎)を背後から鉄パイプで襲いかかるといった、「変身の途中で邪魔をしてはいけない」というヒーロー番組の「お約束」をぶち壊す行為にも出る等、作品視聴者に強烈なインパクトを残していたのです。
「世界の平和を守る仮面ライダー」ではなく、自らの欲望のためにライダー同士の殺し合いを展開した『仮面ライダー龍騎(2002)』には、もともと賛否両論の声もありました。しかも仮面ライダー王蛇(浅倉威)というキャラクターに対しては、視聴者からクレームの嵐も発生していたそうです。
しかしそんな浅倉も単に暴力的な「ヤバい奴」だけではなく、(本人のためでないとはいえ)少女を救出したり、他の仮面ライダー達との多数決で「主人公(仮面ライダー龍騎)が馬鹿だと思う人」に他のライダー達と一緒に手を上げたりと、計画的かつコミカルなキャラクター性も併せ持っていました(少女と浅倉に焦点が当てられた第31話と32話放送以降、浅倉へのクレームは一切なくなったという逸話が残されているのだとか)。
【血みどろの仮面ライダー同士の戦い。その行く末は・・?】終わらぬ戦いに身を投じた仮面ライダー達の哀しき運命とは?
13人の仮面ライダー同士の壮絶なバトルロワイヤルが描かれた『仮面ライダー龍騎(2002)』。次々に仮面ライダー達が儚く散っていく中、いよいよ物語もクライマックスを迎えることにー。
ここまで上述してきた仮面ライダー王蛇こと浅倉威も最期の時がやってきました。
『仮面ライダー龍騎』最終回において、決着を望んでいた北岡弁護士(仮面ライダーゾルダ)との戦いが、北岡の死亡によって終止符を打つことができない怒りに震え、浅倉を待ち受けていた機動隊に鉄パイプ1本で挑むも、一斉射撃を受けて死亡するという壮絶な終焉を迎えます。
そして本作の主人公である仮面ライダー龍騎も、変身をしていない生身の状態(城戸真司)でミラーモンスターの襲撃から子どもを庇い、吐血して死亡。
最後に生き残った仮面ライダーは、龍騎のライバルでありながらも、彼と行動を共にしていた仮面ライダーナイト(秋山蓮)でした。
ライダーバトルの主催者(神崎士郎)が使役するオーディンに勝利し、勝者となったナイト(蓮)は、意識不明の重体だった恋人を助けたいという願いを叶えます。
蓮の恋人(恵理)は病室で目を覚まします。
「蓮・・・そんなところで寝てると、風邪引いちゃうよ。」(恵理)
彼女が目覚めた先には、既にこと切れた蓮の姿があったのでしたー。
「以上が、原因不明の失踪事件の真相であり、仮面ライダーと名乗る人間達の戦いの真実である。この戦いに・・・正義はない。そこにあるのは、純粋な願いだけである。その是非を問えるものは・・・?」
「13人の仮面ライダー同士のバトルロワイヤルを描く」という、平成仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダー龍騎(2002)』における試みは、賛否両論を呼びつつも大成功し、女性ファンの支持拡大にも大きな影響を及ぼしました。
好評を博した『仮面ライダー龍騎(2002)』は放送終了後、海外版(英題『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』)の制作や、後続の仮面ライダーシリーズにおいても龍騎(真司)やナイト(蓮)が出演し、後輩の平成・令和の仮面ライダー達と力を合わせる展開も描かれる等、その輝ける勇姿は令和を迎えた現在も健在です。
「いつまで続くんだろうな・・・俺達の戦いは。」(蓮/仮面ライダーナイト)
「俺が終わらせるまでだよ。」(真司/仮面ライダー龍騎)
また本作において強烈なインパクトを残した名悪役・仮面ライダー王蛇(浅倉威)も後続の仮面ライダーシリーズに復活。現在「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」にて好評配信中のWebドラマ『仮面ライダーアウトサイダーズ』では、人間の善意を学び行きすぎた正義に暴走する「ゼイン」と呼ばれる超知能に対し、これを食い止めるために集結したはぐれ者の仮面ライダー達(アウトサイダーズ)の中に、仮面ライダー王蛇(浅倉威)の姿もありました。
いよいよ物語も最終章を迎える本作において、新たな姿となった仮面ライダー王蛇はどんな活躍を見せるのか、期待に胸が高鳴りますー(※上記の作品は動画配信サービス「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」(外部リンク)にて配信中。『仮面ライダーアウトサイダーズ』最終章は2024年12月22日配信開始予定)。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(仮面ライダー龍騎、仮面ライダーアウトサイダーズを視聴するなら)
・東映特撮ファンクラブ(TTFC)(外部リンク)
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.3 仮面ライダー龍騎』、講談社
・鈴木康成、『語れ!仮面ライダー【永久保存版】』、KKベストセラーズ
・鈴木康成、『語れ!平成仮面ライダー【永久保存版】』、KKベストセラーズ
(本記事でご紹介した米国ハワイ州 観光地アクセス)
・イオラニ宮殿(IOLANI PALACE)
住所:364 South King Street Honolulu, HI 96813
公式サイト:Iolani Palace(外部リンク)