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ホークス千賀滉大の近未来予想図。「164キロが出る」と倉野コーチ

田尻耕太郎スポーツライター
阪神との二軍戦に登板した千賀投手(筆者撮影)

サヨナラ捕逸、まさかの幕切れ

 6月26日、福岡ソフトバンクホークス二軍は、タマホームスタジアム筑後で行われたウエスタン・リーグ公式戦で阪神タイガース二軍と対戦した。

【6月26日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 無観客】

阪神     100000000  1

ソフトバンク 000000002× 2

<バッテリー>

【T】藤浪、小野、石井、尾仲、●斎藤(0勝1敗)――長坂

【H】千賀、古谷、椎野、◯松田遼(1勝1セーブ)――九鬼

<本塁打>

なし

<スタメン>

【T】8島田 4熊谷 3板山 9井上 D伊藤隼 7中谷 6小幡 2長坂 5遠藤

【H】4谷川原 6川瀬 7中村晃 8釜元 9田城 D大本 2九鬼 5リチャード 3野村

<戦評>

 ソフトバンクが九回に逆転サヨナラ勝ちした。

 初回に先制を許しスミ1の展開で試合が進んだが、九回裏に谷川原の安打と代打・真砂の四球でチャンスを作り、2死一、二塁から4番の釜元がライトへ同点適時打を放った。なおも一、三塁として、続く田城の場面で相手バッテリーが痛恨のミス。サヨナラ捕逸というあっけない幕切れで試合が終わった。

 結末はともかく、試合自体は引き締まった投手戦だった。

 ソフトバンクが千賀、阪神が藤浪という二軍戦とは思えない豪華先発陣で始まった。千賀は初回に失点したが、2回以降はパーフェクト投球。6回2安打1失点で最速は158キロをマークした。

 藤浪も3回1安打無失点。約3カ月ぶりの先発で最速157キロをマークして、課題の制球面では2四球をまずまずだった。最初に右打者を迎えた場面でボールを引っ掛けていたが、その後すぐに修正を見せていた。

 また、ソフトバンクのリリーフ陣では3番手で登板した椎野が1回を3者三振に抑える快投を見せた。(了)

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阪神藤浪と投げ合い、最速158キロ

 千賀滉大のピッチングが格段に良くなった。

 6月7日の実戦復帰登板から数えて3度目のマウンド。最初(オリックス戦、オセアン)は1回1/3を1安打1失点で3四死球を与えた。2度目は20日のオリックス戦(タマスタ筑後)で4回66球を投げて3安打2失点だった。

 この日は中5日で「80球を目途」で先発。初回の先頭打者の打席でいきなり158キロを計時。ただ、四球を与えてその後2安打を許して先制点を献上した。ファームの打者に155キロを引っ張られてライト前ヒットを打たれた。過去2度の登板でも球速のわりにヒットを浴びたり、球離れで抜けてしまいボールが吹き上がる場面が散見されたりした。

 不安な立ち上がりだったが、二回以降は別人だった。いや、これが本来の千賀の姿だ。

 直球の威力はそのままに変化球も巧みに操った。次々とアウトを積み重ねる。序盤3回で奪三振は1つのみだったが、四回~六回の3イニングでは4つを奪った。

 6回で83球を投げて2安打1失点。初回以外はパーフェクト投球を見せた。

「三振が欲しいところで狙ってとれたし、全体的に良かったと思います」

 登板後の千賀は笑顔も見せながら、手応えを口にした。

体の中心で投げる

 自主練習期間中に、過去の自分を捨ててまったく新しい自分を追い求めて、一から投球フォームを見直す大胆な取り組みを行っている。「今までがA千賀なら、B千賀」と本人談だ。まだ登板ごとに試している部分も多いが、方向性がブレることはない。その中で高速シンカーという武器も習得した。

 この新しいフォームの狙いの一つは「腕じゃなくて体の中心で投げる」こと。それを実践するために、ここ数年は体幹部を中心に上半身をとにかく鍛えている。数年前と見比べれば、まるで別人のシルエットだ。

 昨年も161キロをマークしたが、千賀の体はさらなる進化を続けている。ファーム戦でまだ心のスイッチが入り切れていない中でも150キロ台後半を当たり前のように投げている。

 この日の投球を見た倉野信次二軍投手コーチも称賛の言葉を並べた。「前回の登板では良い部分と悪い部分がはっきり出ていた。その後話し合いもしました。今日は技術的には何も言うことはないくらいの投球を見せてくれました」。そして、ストレートの進化について訊ねると、少し考えてこう話した。

「今年のPayPayドームの球速表示は少し出すぎているかなと思いますが、それを差し引いても千賀は自己最速を塗り替えると思います。2、3キロアップするんじゃないでしょうか。164キロくらいまで。その準備は彼の中で出来ていると思います」

 ファームでの調整登板自体は次回がラストになる予定だ。昇格は一軍ローテ陣との兼ね合いになるが、2020年型の千賀滉大が表舞台に立つ日がいよいよ近づいてきた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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