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ロック墓参記 第1回/ロサンゼルス編:レミー、ロニー・ジェイムズ・ディオ、キャリー・フィッシャー他

山崎智之音楽ライター
Lemmy's grave / photo by yamazaki666

ロック・ミュージックが生まれて60年以上が経つ。次々と新しいアーティストが登場する一方で、数多くのアーティストが亡くなっていった。長く音楽を聴いてきたリスナーだったら、早かれ遅かれ、愛聴するシンガーやミュージシャンの“死”と遭遇することになるだろう。

彼らが遺した音源や映像で、我々はその音楽をいつまでも楽しむことが出来る。ビートルズやエルヴィス・プレスリーのような人気アーティストには世界中にトリビュート・バンドが存在する。近年では2012年のトゥパックや2017〜18年のロニー・ジェイムズ・ディオのように、ホログラムで本人を再現したライヴも行われている。

そして近年、去って行ったアーティストに接することが出来る手段として注目されているのが、ロックお墓参りだ。

これまでも米国シアトル郊外にあるジミ・ヘンドリックスの墓や英国チェルトナムのブライアン・ジョーンズの墓、フランス・パリのジム・モリソンの墓などは“聖地”として多くのファンが巡礼してきたが近年、数多くの大御所ミュージシャン達が亡くなったことで、ロックお墓参りはじわじわと拡がっている。

今回は第1回として、米国ロサンゼルス北部にあるフォレスト・ローン・メモリアル・パーク墓地(ハリウッド・ヒルズ)を訪れてみた。

カリフォルニア州にはフォレスト・ローン・メモリアル・パークの名を冠する墓地が4箇所ある。グレンデールにはマイケル・ジャクソン(非公開)やサム・クック、ナット・キング・コール、ウォルト・ディズニー、フォレスト・J・アッカーマンらが眠っているが、今回はまずハリウッド・ヒルズの方に向かおう。

映画『国民の創生』(1917)で南北戦争のシーンのロケ地だった場所にあるこの墓地。ロサンゼルス川を隔てた向こうにはワーナー・ブラザーズ・スタジオやウォルト・ディズニー・スタジオがある。公共交通機関はバス停がかなり離れたところにあるのみなので、レンタカー、あるいはロサンゼルス市内からタクシーで行くことをお勧めする。

アメリカの墓地はとにかく広大で、しかも墓石がなく地面のプレートのみの墓が多いため、徒歩ですべてを回るのは基本的に諦めた方がいい。ただフォレスト・ローン(ハリウッド・ヒルズ)では著名人が主に3エリアに集められているので、比較的巡礼しやすい部類だ。特にミュージシャンは正門を入って左に曲がってしばらく歩いた“コート・オブ・リメンブランス Court Of Remembrance”に多数が眠っている。

Court Of Remembrance / photo by yamazaki666
Court Of Remembrance / photo by yamazaki666

“コート・オブ・リメンブランス”の入り口。左側がベティ・デイヴィスの墓。

(なお、“コート・オブ・リメンブランス”に向かう途中にマイケル・ハッチェンスの墓があるが、地面のプレートなので気がつかなかった。お参りをする人は気をつけていただきたい)

『獣人島』『ノートルダムの傴僂男』などの映画俳優チャールズ・ロートン、『ブレードランナー2049』にも登場した歌手リベラーチェ、ギャング映画でおなじみの俳優ジョージ・ラフト、007シリーズのプロデューサー、アルバート・R・ブロッコリらの墓を通り過ぎて右に曲がると、“Columbarium Of Sacred Trust”というブロックがある。その真正面、“SOLOMON”と記された石像の下にあるのがモーターヘッドの総帥、イアン“レミー”キルミスター(1945-2015)の墓だ。

Lemmy's grave / photo by yamazaki666
Lemmy's grave / photo by yamazaki666
Lemmy's grave / photo by yamazaki666
Lemmy's grave / photo by yamazaki666

プレートにはレミーのサインと“BORN TO LOSE, LIVED TO WIN”というメッセージ、そしてスペードのエースが刻まれている。誰よりもバカでかい音量のロックンロールをぶちかましてきた彼にしては静かすぎる場所ではあるが、ゆっくり休んで欲しい。

そしてレミーの墓の対面にあるのが、ロニー・ジェイムズ・ディオ(1942-2010)の墓だ。“THE MAN ON THE SILVER MOUNTAIN”と記された墓はかなり大きなもので、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの“巨人”だったその存在感に圧倒される。

Ronnie James Dio's grave / photo by yamazaki666
Ronnie James Dio's grave / photo by yamazaki666

ロニーの本名はロナルド・パダヴォナというのが定説だが、墓石にはロニー・ジェイムズ・ディオとある。法的に改名したのかは不明。

ロニーと較べるとサイズこそささやかだが、すぐ近くにレインボーやディオで彼と行動を共にしたベーシスト、ジミー・ベイン(1947-2016)が眠っているのは、胸が熱くなる。プレートに刻まれているのは“STARGAZER★STARMAKER”と、彼がワイルド・ホーシズで発表した「フライアウェイ」の歌詞の一節。シン・リジィの故フィル・ライノットと共作したこの曲のフレーズを目にすると、落涙せずにいられない。

Jimmy Bain's grave / photo by yamazaki666
Jimmy Bain's grave / photo by yamazaki666

ロニー・ジェイムズ・ディオとジミー・ベインの墓を1枚の写真に収めることも可能だ。

(左がロニー、右下がジミー)

Ronnie Dio & Jimmy Bain graves / photo by yamazaki666
Ronnie Dio & Jimmy Bain graves / photo by yamazaki666

ジミー・ベインと同じブロックには、映画『スター・ウォーズ』シリーズのレイア姫ことキャリー・フィッシャー(1956-2016)と母親デビー・レイノルズ(1932-2016)の墓もある。

Debbie Reynolds & Carrie Fisher grave / photo by yamazaki666
Debbie Reynolds & Carrie Fisher grave / photo by yamazaki666

なんとレミーとロニー・ジェイムズ・ディオ、キャリー・フィッシャーの墓を1枚の写真に収めることも出来る。

(左がロニー、中央がキャリー、右がレミー)

 Ronnie Dio ,Carrie Fisher and Lemmy graves / photo by yamazaki666
Ronnie Dio ,Carrie Fisher and Lemmy graves / photo by yamazaki666

“コート・オブ・リメンブランス”の外壁にはビー・ジーズのギブ3兄弟の末弟でソロ・アーティストとして活動したアンディ・ギブ(1958-1988)、その前に拡がる芝生にはマカロニ・ウェスタン映画の名優リー・ヴァン・クリーフ(1925-1989)も眠っている。

映画『ゴールデンマイル』の俳優マイケル・クラーク・ダンカンの墓も“コート・オブ・リメンブランス”にあり、ぜひお参りしておきたい。

墓地の正門からまっすぐ行ったところにある“コート・オブ・リバティ Court Of Liberty”にも『ワイルド・スピード』シリーズのポール・ウォーカー、『刑事コジャック』のテリー・サヴァラス、喜劇王バスター・キートン、ローレル&ハーディのスタン・ローレルなど多数の映画スターが眠っているが、“コート・オブ・リメンブランス”を回った後にカリフォルニアの炎天下、登り坂を迷いながら約1km歩くのはさすがにキツかったので次回以降、ぜひチャレンジしたい。

往路と同様、帰り道もバス停まで歩くのは大変なので、事前にスマホにタクシーアプリを入れておくか、正門の脇にあるホール兼事務所でタクシーを呼んでもらうかする必要がある。

なお注意しておきたいのは、ここが観光地ではなく、数多くの人々が眠る墓地であることだ。亡くなったアーティスト達や遺族たちへの敬意と礼節をもって墓参をしたい。

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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