渡辺明名人連覇か、斎藤慎太郎八段初の名人獲得か――第79期名人戦七番勝負展望
渡辺明名人(36)に斎藤慎太郎八段(27)が挑戦する第79期名人戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)七番勝負は4月7日東京で開幕する。長い歴史と伝統を誇る名人戦の勝敗と展開を、データを基に予想してみた。
<第79期名人戦七番勝負日程>
第1局 4月7、8日 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第2局 4月27、28日 福岡県飯塚市「麻生大浦荘」
第3局 5月4、5日 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
第4局 5月19、20日 長野県上高井郡「緑霞山宿 藤井荘」
第5局 5月28、29日 神奈川県足柄下郡「ホテル花月園」
第6局 6月14、15日 山梨県甲府市「常磐ホテル」
第7局 6月24、25日 山形県天童市「天童ホテル」
調子の比較では渡辺名人やや優位か
<渡辺名人の最近10局>
2月11日 朝日杯将棋オープン戦
対藤井聡太二冠 ●
2月13、14日 王将戦七番勝負第4局
対永瀬拓矢王座 ●
2月20日 棋王戦五番勝負第2局
対糸谷哲郎八段 ○
3月1、2日 王将戦七番勝負第5局
対永瀬王座 ●
3月7日 棋王戦五番勝負第3局
対糸谷八段 ●
3月10日 ヒューリック杯棋聖戦本戦
対斎藤八段 ○
3月13、14日 王将戦七番勝負第6局
対永瀬王座 ○(千日手指し直し)
3月17日 棋王戦五番勝負第4局
対糸谷八段 ○
3月24日 竜王戦ランキング戦2組準決勝
対八代弥七段 ●
3月26日 ヒューリック杯棋聖戦本戦
対出口若武四段 ○
<斎藤八段の最近10局>
1月18日 NHK杯準決勝
対山崎隆之八段 ○
1月21日 ヒューリック杯棋聖戦二次予選
対千田翔太七段 ○
1月27日 王座戦二次予選
対澤田真吾七段 ●
2月3日 順位戦A級
対稲葉陽八段 ○
2月12日 竜王戦1組出場者決定戦
対佐藤和俊七段 ●
2月15日 NHK杯決勝
対稲葉八段 ●
2月19日 お~いお茶杯王位戦リーグ
対澤田七段 ●
2月26日 順位戦A級
対佐藤天彦九段 ○
3月6日 お~いお茶杯王位戦リーグ
対豊島将之竜王 ●
3月10日 ヒューリック杯棋聖戦本戦
対渡辺名人 ●
渡辺名人の直近10局は5勝5敗と五分の成績。斎藤八段は4勝6敗と黒星が先行している。トップ棋士相手の対局が多いとはいえ、どちらも絶好調という感じではない。
状態の比較では王将戦、棋王戦の番勝負を並行して戦い、苦しみながらも三冠を堅守した渡辺名人(棋王・王将)がわずかにまさると思われる。
斎藤八段は順位戦B級1組から昇級直後に難敵ぞろいのA級を8勝1敗で駆け抜け、名人挑戦権を勝ち取った勢いを七番勝負にどうつなげられるかがカギとなるだろう。
戦型は相居飛車角換わりが本命
両者の直接対決に関しては以下のようなデータがある。
<渡辺名人vs斎藤八段の全対局と戦型>
2017年11月14日 王将戦リーグ
斎藤(先手)勝ち 矢倉
2018年7月27日 王座戦挑戦者決定戦
斎藤(先手)勝ち 角換わり腰掛け銀
2019年1月7日 叡王戦本戦
渡辺(先手)勝ち 角換わり腰掛け銀
2019年3月14日 順位戦B級1組
渡辺(先手)勝ち 角換わり腰掛け銀
2021年3月10日 ヒューリック杯棋聖戦本戦
渡辺(後手)勝ち 角換わり後手棒銀
過去5戦して渡辺名人の3勝2敗と星はほぼ互角、先手番が4勝1敗で「先手優位」というのもトップ棋士同士のデータとしてはうなずけるものだ。
戦型は居飛車角換わり中心の七番勝負になると予想される。ただし戦型の選択権は主として先手番にあるので、最近の採用率から斎藤八段先手の場合は相掛かりや矢倉、渡辺名人先手の場合相掛かりに進む可能性も少なくないだろう。
総合的には渡辺名人に「一日の長」があると思われるが、シリーズ前半で挑戦者が先行する展開になれば久々にフルセットの七番勝負が見られるかもしれない。