藤井聡太三冠、強敵揃いの順位戦B級1組を5勝1敗で折り返し。後半の残り6戦を徹底分析!
9月30日(木)に第80期名人戦・順位戦B級1組6回戦が一斉に行われ、全13回戦のうち約半分が消化された。
藤井聡太三冠(19)は12戦のうち6戦を終えて、5勝1敗の成績で上から3番目に位置している。
藤井三冠のここまでの戦いぶりと残り6戦について。そしてA級昇級を争う2枠の展望をここから解説していく。
充実の4連勝
藤井三冠は出だしの2戦で苦戦を強いられ、B級1組の洗礼を浴びた。
開幕戦にあたる三浦弘行九段(47)との一戦は、横歩取りから不利に陥ったが粘りをみせ、ギリギリの受けで形勢をひっくり返した。
2戦目の稲葉陽八段(33)との一戦は、角換わりから不安的な玉形を強いられた。熱戦となったが深夜1時過ぎに力尽きて敗戦。順位戦での連勝記録も22でストップとなった。
早くも1敗を喫した藤井三冠だったが、ここから4連勝と一気に星を伸ばした。どの対局も中盤でリードを奪い、そのまま勝ち切る安定した内容で強さをみせた。
B級1組の特徴として、どの棋士も粘り強いことが挙げられる。そうでなければこの猛者揃いの中で生き残れないのだ。しかしそんな粘り強い相手を向こうにまわして逆転を許さずに白星を重ねたのは、まさに藤井三冠の実力発揮というところだろう。
実力者との3連戦
ここで改めて藤井三冠の対戦相手をみていただこう。年内は残り3戦となる。
10月19日(火)に対戦するのは郷田真隆九段(50)。第4回ABEMAトーナメント準決勝での大熱戦が記憶に新しい。
郷田九段が藤井三冠と対戦する際にインタビューで語った、
「最高の相手に最高の戦いをしたい」
このセリフにしびれたファンも多かった。今回も最高の戦いを見せてくれるだろう。
年内最終戦は近藤誠也七段(25)との対戦となる。
近藤七段といえば、藤井三冠がデビューからの順位戦連勝記録を止められ、C級1組で昇級を逃す痛恨の1敗を喫した難敵だ。
郷田九段戦、近藤七段戦は、ともに藤井三冠の後手番となる。
今年度の藤井三冠は先手番で驚異的な勝率を残しており、全6敗中5敗は後手番でのものである(未放映のテレビ対局をのぞく)。
その点でこの2局を後手番で迎えるのは不安材料といえる。
昇級争いと直接対決
藤井三冠は現在3番手につけている。昇級枠は2枠だが、上位勢とは直接対決を残しているため自力(※)である。
※自力とは、自身が全勝すれば他の結果にかかわらず昇級が決まる状況のことをさす
現在上位につけている2名とは、年明けに直接対決を迎える。
千田翔太七段(27)は同じ5勝1敗だが、前期成績に基づく順位が藤井三冠よりも上で現在2番手につけている。
藤井三冠と千田七段は年明けの11回戦で対戦する。
タイトル挑戦経験もあり、毎期のようにA級昇級を期待されている千田七段もB級1組在籍3期目となる。前年度は棋士生活で初の負け越しを喫し、今期は期するものがあるのだろう。ここまで好調を維持している。
昇級に向けて千田七段がこの藤井三冠戦に死力を尽くしてくることは間違いない。
藤井三冠にとっては厳しい年明け初戦となるだろう。
そして、最終戦には現在6戦全勝で首位を走る佐々木勇気七段(27)との対戦が組まれている。
佐々木七段も藤井三冠との対戦には並々ならぬ闘志を燃やしてくる。前期はB級2組の初戦で対戦し、熱戦を藤井三冠が制した。そしてその後の戦いでお互いに全て勝利をおさめて一緒にB級1組へ昇級した。
場合によってはこの一戦が昇級をかけた大一番になるかもしれない。
藤井三冠がA級に昇級するには、最低でも9勝3敗が必要だろう。
その中でも、昇級を争う千田七段と佐々木七段との直接対戦が大きなウェイトを占める。
この両者に勝っての9勝3敗ならば昇級できるだろうが、二人に負けて9勝3敗では昇級できない可能性が高い。
「鬼のすみか」とも称されるB級1組は、三つのタイトルを保持する藤井三冠といえど容易にはいかない。まずは年内の3戦をどう戦うか、注目していきたい。