Cö shu Nie「感情を解放してもっと自分を愛し楽しく生きよう」と願うアルバムとライヴが生む熱狂
アルバム『7 Deadly Guilt』を引っ提げた「Album Release Tour 2024 "Wage of Guilt"」が終了。追加公演が決定
Cö shu Nie(コシュニエ)が東阪ワンマンツアー「Album Release Tour 2024 "Wage of Guilt"」を、9月7日東京・Zepp DiverCity(TOKYO)、9月21日Zepp Osaka Baysideで行なった。ツアータイトルにもなっているように、9月4日に配信リリース(CDは9月11日発売)されたニューアルバム『7 Deadly Guilt』を携えてのツアーだ。
“自己愛の復活”をテーマにした『7 Deadly Guilt』
昨年から発売を予告していた約2年半ぶりのフルアルバム『7 Deadly Guilt』は、“自己愛の復活”がテーマで、中村未来(Vo・G・Key・Programming)は「生きていくうちに他人と比べたり、自分に課してしまった枷に縛られて今の自分を愛することを忘れてしまってはいないかと、自分の罪悪感と向き合って書き上げました」とコメントしている。ひとりの自分をまず大切にして、そして自分の心の叫びと対峙して、自分を解放しようと背中を押してくれる言葉と美しいメロディ。それを聴き手の心のど真ん中に届けるサウンドと歌――そんな曲達が7曲、『7 Deadly Guilt』には収録されている。
「Burn The Fire」はブレイクビーツのヘヴィなサウンドと、拳をあげたくなる強くキャッチーなサビ絶妙なバランスで溶け合い、「Deal With the Monster」は松本駿介(B)のひずんだベースと、ギターがさらに攻撃性を増しヒリヒリとした中にもポップな空気が流れ、ユーモアを感じさせてくれる。「no future」は〈何もしたくない 何も意味ない〉と気だるくてメロウで、中毒性のある曲だ。
変則的なリズムが切迫した空気を生み出す「Where I Belong」は、やはり美しいサビが印象的だ。ピアノと中村の声が儚さを連れてくる切ないバラード「I am a doll」、松本の骨太なベースと〈ご機嫌いかが?〉というフレーズがリフレインされ、生まれるポップな空気がブレンドされた中で、中村のキュートのボーカルに包まれ、異世界に連れていってくれる「Artifical Vampire」。華やかで艶やかなジャズの薫りが堪らない「I want it all」は、中村のまさに変幻自在の歌に心を掴まれる。「消えちゃう前に」は、弦が柔らかな光を当ててくれているような、温もりを感じさせてくれる優しいロックだ。<どんな自分も愛して 理由なんてなくていい>と懸命に訴える。そのまま「Wage Of Guilt」で、内なる心の叫びをポエトリーリーディングスタイルで伝える。
ラストは「夢をみせて - From THE FIRST TAKE」。好評だった「THE FIRST TAKE」バージョンが収録されている。シンプルかつ強固なバンドアンサンブルとストリングス、中村の歌とが交差し胸を打つ美しい曲だ。静と動、優しさと激しさ、相反するものが“美しい違和感”となって放熱され、そこに勇敢かつ温かなメッセージが重なり、リスナーは高い熱量のエネルギーによって解放される――そんなこれまで重ねてきた歴史が強靱な世界となって存在し、さらにスケール感を増した、でも内に秘めた想いはより濃密になったCö shu Nieの姿を感じることができるアルバムになっている。
少し触れただけで崩れてしまいそうな繊細さ、痛みを感じるほどの激しさが絶妙なバランスでせめぎ合い、それが恍惚を連れてくるCö shu Nieの音楽とライヴ
このアルバムの世界観とメッセージをダイレクトに届けるべく開催したのが、東阪ワンマンツアー『Album Release Tour 2024 "Wage of Guilt"』だ。9月7日Zepp Diver Cityのオープニングナンバーは「Where I Belong」。4拍子と変拍子がミックスされたバウンシーなリズムがいきなり襲い掛かってきて、カオティックな音楽が繰り広げられる。この曲もそうだが、Cö shu Nieの音楽は、少し触れただけで崩れてしまいそうな繊細さ、痛みを感じるほどの激しさが絶妙なバランスでせめぎ合っている――そんな表現をしたくなる音楽だ。だからスリルを感じるし、当然ライヴでもバンドとのコンビネーションが、少しでもズレると崩れてしまいそうな複雑で緊迫感のある音像が魅力で、それが恍惚へと変わっていく。
松本とサポートメンバー堀越一希(Dr)の太く厚い強力なリズム隊と、曲毎にギターとピアノを使いわけ、しなやかつダイナミックな音像を作り上げる中村とサポートメンバーbeja(P/G)の、圧倒的なバンドアンサンブルから生まれるグルーヴに客席は酔いしれていた。
この日は『7 Deadly Guilt』の楽曲を中心に据えながら、前作の2ndアルバム『Flos Ex Machina』(2022年)から「病は花から」「undress me」や、1stアルバム『PURE』(2019年)から「iB」など、1stミニアルバム『イドラ』(2012年)に収録されている「私とペットと電話線」「ビードロ鏡の絵について」などを披露。ずっと応援しているファン、新しいファン、そして外国人のファンにCö shu Nieの現在へと続く物語を描いてみせた。
中村が「『こしゅあん』から育ててきた温度感を、そのままZeppに持ってくることができたと思うんですけど、どうですか?」と客席に問いかけると、大きな拍手が沸き、中村も満足そうな表情を見せていた。『こしゅあん』は渋谷のライヴハウス・WWWで昨年11月から計5回行なった「クリエイターやファンと共に独自のシーンや世界観を創り上げようとする試み」の自主企画イベント『Cö shu Nie presents "Underground"』。やったことがないことをラフに、伸び伸びとやりながら、その瞬間に鳴っている音楽を楽しむ「場所」だ。自分達で新しい扉を開くための“セッション”で、でもその真ん中にあるのは、ファンが楽しんでくれそうだなという思いだ。そこで得た“感触”を爆発させるのが、この日のライヴだ。
『7 Deadly Guilt』の世界を音と歌で伝えながら、言葉でもしっかりと伝え一曲一曲の解像度を高めていく。「完璧主義みたいなところが自分にあったのと、他人と比べたりして『こうでなければ価値がない』って自分に課してきた枷みたいなものを、一旦取っ払って、自分自身を認めたり、愛するということをどうやったらできるのかなって。自分の罪悪感(Guilt)と向き合って、完璧じゃない自分も愛せたらいいなって思って、この作品を作りました」と語り、さらに「私たちは、理不尽なことに対してグッと堪える癖があると思う。でももっと怒ってもいいし、感情を解放して、そういう自分も受け入れて楽しく生きていきたいよね? そう思って作りました」と語り、「Burn The Fire」を投下。轟音と中村のエモーショナルな歌が、客席の全ての人の心に感情の炎を点火させる。
「ダルい曲やります」と披露した「no future」では《何もしたくない 何も意味ない》と思うことも肯定して欲しいと願い、知りたくない気持ちや、観たくない景色、世の中の汚いものを、鮮やかにそして美しく映し出すのがCö shu Nieだ。中村が「美しい時間」と語るライヴへの美学にもつながっている。
「特別な瞬間をたくさん重ねて一緒に生きたい」
中村が「こうやってみんなと音楽を共有することが、私の最大の幸せ。こんな特別な瞬間をたくさん重ねて生きていきたいと、心から思っています」と語り、「青春にして已む」を披露すると、客席でハンドウェーブが起きた。そしてラストは「消えちゃう前に」だ。<どんな自分も愛して 理由なんてなくていい>という歌詞が、この日のライヴで生まれた圧倒的な熱量を全て纏い、繊細かつ豪快に全ての人の心に突き刺さる。
ライヴが終わり客席を包むいつまでも消えない余韻の成分は、深い愛ととびきりの優しさだった。
11月に中国(上海、北京)公演と、追加公演(東京、石川)開催
このツアー終了直後、追加公演『Cö shu Nie Album Release Tour 2024 "Wage of Guilt" – Encore』の開催が発表された。(11月28日渋谷WWW X、30日金沢REDSUN)。そしてその前には初の中国公演『Cö shu Nie Live Tour 2024 in China』を11月1日上海、3日北京で開催する。「特別な瞬間をたくさん重ねて一緒に生きたい」と語っていたCö shu Nieの音楽と思いは、これからボーダレスに世界を駆け巡る。