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ノート(3) 証拠改ざん事件による逮捕前日、何を思ったのか

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~序章(3)

逮捕前日(続)

動き出した資料課

 僕の執務室に特捜部資料課のメンバー2人がやってきた。大阪地検特捜部では「資料」と呼ばれる資料課が、東京地検特捜部では「機捜(きそう)」と呼ばれる機動捜査班が、捜査の裏方として極めて重要な役割を果たしている。

 銀行や証券会社、クレジットカード会社などから関係者の取引明細を入手し、金回りを解析したり、ゴルフ場やホテル、飲食店、旅行会社などから予約票やチェックイン名簿などを入手し、利用者や金額、支払者などを特定したり、不動産登記簿や自動車登録情報などを入手し、保有資産を調べ上げたりするのは、もっぱら彼らの仕事だ。

 関係者の自宅やオフィスなどを特定し、写真撮影や張り込み、尾行をしたり、関係先の捜索を行って証拠品を押収したり、逮捕した関係者を車で拘置所まで運ぶといった仕事も、彼らに委ねられている。

 そのメンバーは、数々の取調べに立ち会い、逮捕状などの令状取得に向けた事務作業をこなし、銀行から入手した取引明細を解析するなどの経験を積み、そのノウハウを身につけた職員の中から、特に有能な者が抜てきされている。

 彼らが動き出したということは、僕の逮捕も時間の問題だった。

自宅へ

 僕の執務室にやってきたのは、資料課長とベテラン事務官の2人だった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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