ノート(3) 証拠改ざん事件による逮捕前日、何を思ったのか
~序章(3)
逮捕前日(続)
動き出した資料課
僕の執務室に特捜部資料課のメンバー2人がやってきた。大阪地検特捜部では「資料」と呼ばれる資料課が、東京地検特捜部では「機捜(きそう)」と呼ばれる機動捜査班が、捜査の裏方として極めて重要な役割を果たしている。
銀行や証券会社、クレジットカード会社などから関係者の取引明細を入手し、金回りを解析したり、ゴルフ場やホテル、飲食店、旅行会社などから予約票やチェックイン名簿などを入手し、利用者や金額、支払者などを特定したり、不動産登記簿や自動車登録情報などを入手し、保有資産を調べ上げたりするのは、もっぱら彼らの仕事だ。
関係者の自宅やオフィスなどを特定し、写真撮影や張り込み、尾行をしたり、関係先の捜索を行って証拠品を押収したり、逮捕した関係者を車で拘置所まで運ぶといった仕事も、彼らに委ねられている。
そのメンバーは、数々の取調べに立ち会い、逮捕状などの令状取得に向けた事務作業をこなし、銀行から入手した取引明細を解析するなどの経験を積み、そのノウハウを身につけた職員の中から、特に有能な者が抜てきされている。
彼らが動き出したということは、僕の逮捕も時間の問題だった。
自宅へ
僕の執務室にやってきたのは、資料課長とベテラン事務官の2人だった。
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