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借金15以上のチームで防御率4点台の投手が両リーグ最多の14勝。理由は「勝ち運」だけでなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
カイル・ヘンドリクス(シカゴ・カブス)Aug 17, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月17日、カイル・ヘンドリクス(シカゴ・カブス)は、シーズン14勝目を挙げた。ヘンドリクス以外は、どの投手も13勝以下。両リーグで投げ、計14勝以上という投手もいない。

 この時点で、カブスは53勝69敗、ヘンドリクスの防御率は4.04だ。にもかかわらず、ヘンドリクスは25先発で14勝5敗を記録している。

 その理由の一つには、援護点の多さがある。9イニング平均5.29得点は、ナ・リーグで20先発以上の37投手のなかで9番目に多く、負け越しているチームの投手では最多だ。カブスは1試合平均4.14得点なので、ヘンドリクスの援護点とは1点以上の違いがある。また、降板した時点で勝利投手の権利を持っていながら、ブルペンがリードを守れなかった――白星を消された――試合も、今シーズンのヘンドリクスは1度しか味わってない。

 もっとも、これらの「勝ち運」だけで白星を積み重ねてきたわけではない。ヘンドリクスのクオリティ・スタート(QS)は18度、QS率は72.0%だ。どちらも、ウォーカー・ビューラー(ロサンゼルス・ドジャース)の21度と87.5%に次ぎ、ナ・リーグ2位に位置する。しかも、QS18度のうち過半数の10度は自責点1以下。自責点2も含めれば、18度中15度に上る。

 ヘンドリクスが投げる速球は、平均88マイルに届かない。25本の被本塁打は、リーグ最多のパトリック・コービン(ワシントン・ナショナルズ)と3本差のワースト2位タイだ。打ち込まれて炎上することも皆無ではなく、自責点7以上の登板は3度ある。ただ、この3登板を除いて計算すると、ヘンドリクスの防御率は2.84となる。この数値なら、両リーグ最多の14勝を挙げていても、不思議な気はしないはずだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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