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言葉を選んで感情を出した手越祐也、プロがみた会見の出来栄えは? 幼さが目立つ場面も

石川慶子危機管理/広報コンサルタント
手越祐也チャンネル

 6月19日にジャニーズ事務所を退所した「NEWS」の元メンバー手越祐也さんが、23日20時から記者会見を行いました。130万人以上が視聴したという注目の記者会見。新しい試みもあり、彼の目指すチャレンジ精神が見え、好感がもてる会見でしたが、話し方の幼さや弁護士同席で自立していない印象も残りました。

言葉を選んで感情を表現

 冒頭本人からの説明は、記者会見開催の趣旨でした。誤報や憶測報道が多いから、ようやく話せる状況になったから、という理由でした。会見趣旨の説明ができるとは、なかなかのものです。案外ここを抜かしてしまう人、企業も多いからです。平時であっても「会見では最初に何から話せばいいのですか」といった質問をよく受けますが、なぜ今このタイミングで記者会見を行うのかを説明することは大変重要です。その意味からすると、ポイントを押さえた滑り出しでした。

 事務所、仲間、ファンへの感謝は終始一貫していました。それでも次の段階に進みたい気持ち、来年3月退所予定だったのに早まったことへの無念さ、焦り、仲間と話せなくなったつらさ、社長と直接話が出来なかったことについては言葉を選びつつ率直でした。「心が痛い」といった言葉も使っていた点も好感が持てます。また、ファンが裏切られたと思ってしまう、どう答えるのか、といった厳しい質問についても、単純にすみません、とか、大人の男になりたいから、自分の夢に向かって進みたいから理解してください、といった自分の気持ちを押し付けるのではなく、「僕がファンだったら同じ気持ちになる、好きなグループの一人が抜けたら納得できない」と相手に寄り添う表現をしてから、自分の思いを語りました。このように相手の気持ちを受け止めつつ自己主張をする回答は案外難しいのですが、落ち着いて対応していました。

語尾処理には気をつけて

 ただ、大人の男になるためには、もう少し話し方を大人にしていく必要があります。「やっぱ」「やっぱり」が口癖のようで、頻度が高く、それでいて語尾を押すので、耳障りになってしまいます。せっかく内容がよくても幼い印象を相手に与えてしまいます。退所の思いとして何度も繰り返していた「大人の男として踏み出したい」のであれば、「やっぱり」を「やはり」に言い換える訓練をするとよいでしょう。

 全体的に助詞の処理が気になりました。「その子たちのことをー」「自分の夢だったとしてもー」と、助詞を押す癖があるので、子供っぽさが残ります。この助詞を押す癖は、手越さんに限らず多くの方にみられます。知らず知らずに使って相手に不快感を残してしまうので落ち着いた大人の雰囲気を出したいのであれば、直した方がよいでしょう。

 弁護士同席にも違和感が残りました。弁護士が同席すると円満退所と説明していても、対立状況であるというメッセージになってしまうからです。同席ではなく別席に控えて、必要な時に別席から補足説明する形式の方が対立イメージを払拭することができたのではないでしょうか。

ネットからの質問に直接回答

 気になったのは、テーブルのノートパソコンでした。IT企業ではノートパソコンを持ち込んでの記者会見はお馴染みなのですが、タレントにノートパソコン必要なのだろうか、あそこには何が表示されているのだろうか、どこからか指示が飛んでくるのだろうか、と疑問に思いながら手越さんの目線に注目していました。

 最初に20分ほど本人から説明があり、その後質疑応答でしたが、その間パソコン画面を見ることなく、自分の言葉での説明は続きました。ますますパソコンの役割が気になりましたが、1時間20分経ったところで、オンラインからの質問に回答するシーンとなり、ようやくパソコンの役割がわかりました。会場にいる記者からの質問受付を中断し、ツイッターに寄せられた質問にしばらく回答。そして、再度会場の記者からの質問に回答する、といった流れで面白い形ではありました。欲を言えば、最初に司会が、パソコンの意味をアナウンスすれば、私のような疑惑を最後までひきずることはなかったでしょう。

 ユーチューブにより、マスメディアを通さず、記者会見をリアルタイムで視聴できる時代になりましたが、ファンの疑問に直接回答することで、さらに一歩踏み込んだ新しい形を示したといえます。

 「すぐに新しいことにチャレンジしたい、事務所に提案しても実現に何カ月もかかるから待っていられない」とコメントした彼の性格をよく表していると感じました。ネットに書き込まれる質問にリアルタイムで回答するのは、質問の意図がよくわからないこともありなかなか難儀ではありますが、それに挑戦したことは評価ができます。これからは、このような形式が増えていくのではないでしょうか。

〇手越祐也チャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCSEoj94-efoQhREyRWRySKA/featured

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

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