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今は争いに敗れても……ホークス斐紹の心の叫び「結果を残して、悔しがらないと」

田尻耕太郎スポーツライター
勝ち越しタイムリーを放って、小川コーチとグータッチする斐紹

笠原5勝、真砂8号

8月18日、ソフトバンクはウエスタン・リーグで中日と対戦した。

【8月18日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 2,322人】

中日     100000000 1

ソフトバンク 00000105× 6

<バッテリー>

【D】山井、●小川(0勝2敗1セーブ)、福谷――杉山

【H】山田、二保、○笠原(5勝2敗)、岡本――斐紹

<本塁打>

【H】真砂8号

先発した山田
先発した山田

<戦評>

ソフトバンクが同点の8回に一挙5得点を奪って勝利した。デーゲームで首位の広島が敗れたため、ゲーム差は1に縮まった。

若鷹がしぶとさを見せた。初回に先制をされたが、ピッチャーは以降ゼロ行進。6回に本多のタイムリーで追いつくと、8回に猛打をふるった。2死満塁から斐紹が2点ショート内野安打を放って勝ち越すと、続く真砂が初球を完ぺきにとらえて3ランを放った。

先発した山田は粘って6回1失点。10勝目はならなかったが持ち味を発揮した。2番手の二保は勢いある投球。3番手の笠原が勝利投手になった。(了)

斐紹、猛打の8月のワケは?打率.462、15打点

試合後は若鷹スピーチも
試合後は若鷹スピーチも

接戦にケリをつけたのは斐紹のバットだった。

1対1で迎えた8回2死満塁。この最高のチャンスの場面できっちり三遊間へ弾き返し、2者を生還させた(記録はショート適時内野安打)。

「狙っているボールじゃなかったけど、上手く反応できました」

8月、斐紹が打ちまくっている。

5日の広島戦(由宇)で3ランを含む4打数3安打6打点の大暴れ。翌日も5号アーチなど2安打3打点と活躍した。今月は自身10試合出場で、26打数12安打、打率.462、2本塁打、15打点の好成績を残している。

シーズントータルでは打率.298。規定打席には15足りていないが、リーグ上位に相当する成績だ。

「今は球種もコースもアバウトに待つようにしています。今年の序盤も、外の目付からインコースの目付に変えて良かったんですが、絞って待つとどうしても強振し過ぎるところがありました。今は反応で打てている。だから反対方向への打球が多い。けどインコースは引っ張って強い打球を飛ばせています」

「拓也が頑張ってるけど、僕は結果を残すだけ」

今年は一軍機会がまったくないまま、ついに夏を迎えた。

昨年の開幕戦でスタメンマスクを被ったのが遠い昔のようだ。今年は同期育成入団の甲斐拓也が一軍に定着。「育成6位がドラフト1位に勝った…」。あまりに悔しすぎる引き立て役となった。

2軍でもずっとマスクを被れるわけではない。斐紹ももう7年目。若い後輩たちも増えた。若手を育成するのがファームの役割。3年目の栗原陵矢や1年目の九鬼隆平に出番をさらわれる回数も増えている。

「拓也が頑張っているし、球団が栗原や若い選手を育てる意味も分かっています。悔しいです。だけど、今の僕が一番できることは結果を残すこと。結果も残さずに悔しいと言ってるだけじゃダメですから」

2、3時間前から汗を流す

出番が少なくなれば調整は難しくなる。だが、今年の斐紹には例年以上に工夫が見られるようになった。

「筑後はナイターが多い。夏の疲れている時期でも、集合の2、3時間前からジョギングやバッティング、ウエイトトレーニングをして一汗かくようになってから調子がいい。僕に合っていると思います。今までもやっていたけど、去年までは疲れているときは休養を優先していました。今年はしっかり継続できている」

また、同じ右投げ左打ちの先輩から、多くのことも吸収する。

「ポン(本多雄一)さんやハセ(長谷川勇也)さんと話しをする機会も多いのがプラスになっている。タイプは違うかもしれないけど、色々な知識を自分で取り入れながら頭の中で整理できているのもいいのかなと思います」

もちろん捕手というポジション柄、守備へのこだわりが強い。この日は先発の山田大樹が「調子が悪かった」と反省する中、斐紹の好リードも光って1失点の好投を見せた。

「もちろん守りが大事。ただ、打撃はセールスポイントだし、打てているときの方がリードも冴えることが多い。バッティングの自信もついてきた。今はただアピールを続けていくだけです」

プロ野球史でも類を見ない下克上を“やられた”選手。ただ、それは現時点での結果でしかなく、決着ではない。斐紹の中で何かが分かった‘17年シーズン。ドラ一の底力。必ずや見せてくれるはずだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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