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【JAZZ LIVE】片倉真由子トリオ新作発売記念@モーション・ブルー・ヨコハマ

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、新作をリリースした片倉真由子トリオのレコ発ライヴ。

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洗足学園短期大学からバークリー音楽大学、そしてジュリアード音楽院に学び、若手登竜門として知られるセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションのセミ・ファイナリストとして“逆輸入”のかたちで“マユコ・ショック”が日本へ伝わってきたのが2006年。その後もアメリカで活動を続け、2008年に帰国した彼女が満を持して完成させた自己名義のファースト・アルバム『インスピレーション』をリリースしたのは2009年のことだった。

翌年にはセカンド・アルバム『フェイス』を立て続けにリリースし、トリオを基調とした片倉真由子のリーダー・プロジェクトに対して周囲が抱く期待の大きさとともに、彼女自身が意欲的であることを反映したファンには嬉しい状況が膨らんでいくのかと思われていた。

ところが片倉真由子トリオによるリーダー・アルバムのリリースはそこから少し長い休みに入ってしまった。

“空白の5年”を確かめる貴重なチャンス

原因として考えられることはは2つある。

ひとつは、セカンド・アルバムがリリースされた半年後に日本を襲った東日本大震災という悲しい出来事だ。

エンタテインメント産業に対してこの災害が及ぼした影響は計り知れないものになってしまったが、それ以上に片倉真由子の出身地が被害が大きかった宮城・仙台であったことを無視することはできないだろう。

そしてもうひとつは、片倉真由子という才能豊かなピアニストを日本のジャズ・シーンが放置しておけなかったこと。

彼女の公式プロフィールを見ても、現在の活動として「広瀬潤次Sound of Jazz、山口真文クァルテット、安ヵ川大樹トリオ、大坂昌彦グループ、古野光昭グループ、the MOST」という著名バンド名が並び、著名であるが故にそのオファーの頻度は高くならざるをえない。必然的に自分の活動を削ってそれらにあてなければならない状況が生じるわけだ。

もちろんそれは彼女が“犠牲”になったという意味などではなく、どの活動に対しても自分ならではの表現ができているからこそ、彼女への評価とオファーが下がらないままの5年間だったわけだが……。

しかし片倉真由子は、新たに自身の活動の基盤となるべきトリオについて考え、自分の音楽についての“軸”となる考えを発表する機会を選んだ。

レコ発ライヴはすでに10月後半にスタートして、東京、大阪、名古屋、静岡(袋井)、埼玉(熊谷)などでの披露を終えている。スタジオを経てライヴでもさらに熟成させた“片倉真由子の進化”を体験できるツアー・ラストは見逃せない。

では、行ってきます!

●公演概要

11月9日(月) 開場18:00/開演19:30

会場:モーション・ブルー・ヨコハマ(横浜・みなとみらい)

出演:片倉真由子(ピアノ)、佐藤“ハチ”恭彦(ベース)、Gene Jackson(ドラム)

♪Jive Unity Jazz Orchestra (ゲスト: 片倉真由子)-Duke Ellington Medley(Piano Solo)

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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