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藤井聡太挑戦者(19)新時代の歩突きから地下鉄飛車でGO? 王将戦第3局1日目終了

松本博文将棋ライター
(画像:いらすとや)

 1月29日。栃木県大田原市・ホテル花月において第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局▲藤井聡太挑戦者(19歳)-△渡辺明王将(37歳)戦、1日目の対局が終了しました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 藤井挑戦者先手で相掛かり。渡辺王将が飛車を動かして揺さぶりをかけてくるのに対し、藤井挑戦者は三段目に金を上げ、堅実に応じます。

 そして29手目、藤井挑戦者は8筋の歩を突きました。第1局に続いて、新時代を感じさせる構想です。

 副立会人の戸辺誠七段は「斬新な構想」と評しています。

 作戦家の渡辺王将は、どこまで先を見通していたか。約1時間ほど考えて、7筋の歩を突いて攻めの態勢を整えます。

 31手目。藤井挑戦者は8筋三段目に金を配しました。コンピュータ将棋ソフトはこの形を評価することも影響してか、近年は人類の戦いでもよく見られるようになりました。

 藤井挑戦者が43手目まで指して12時30分、昼食休憩に入りました。

 対局地の大田原は和牛で有名です。

 13時30分、対局再開。一段飛車に構えていた藤井挑戦者は、左側の駒を二段目以上に押し上げます。これは飛車を2筋から9筋へと大きく転換する「地下鉄飛車」の構想。飛車が9筋に回れば完成です。

 藤井挑戦者の鉄道好きはよく知られるところ。盤上でもそれが実現するでしょうか。

 1日目、藤井陣一段目に地下鉄のレールが敷かれ、発車寸前と思われるところまで進みました。しかしまだ、飛車は動かずに終わっています。明日、地下鉄飛車が実現するかどうかは、大きな注目ポイントです。

 18時。渡辺王将は62手目を封じる意思を示します。

 立会人の深浦康市九段に渡辺王将が封じ手2通を預け、1日目の対局が終了しました。形勢はほぼ互角。後手番の渡辺王将としては差をつけられることなく、さほど不満のない進行かもしれません。

 明日2日目の対局も9時に始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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