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いよいよ新作も今週末公開・劇場版「名探偵コナン」本作が毎年起こす唯一無二の盛り上がりとその要素

小新井涼アニメウォッチャー
AnimeJapan 2023展示(筆者撮影)

劇場版「名探偵コナン」最新作「名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)」が、いよいよ今週末4月14日に公開されます。

先週の「金曜ロードショー」では昨年の劇場版「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」が放送され、毎週放送中のテレビシリーズでは、先月から映画最新作とも関連するエピソードを放送。

共に放送時にはSNSのトレンドを賑わせ、その不動の人気と、今年の最新作に向けた期待の高まりが窺えました。

ここ数年、「THE FIRST SLAM DUNK」や「すずめの戸締まり」、「ONE PIECE FILM RED」や「劇場版 呪術廻戦 0」など、益々日本の映画シーンで存在感を増してきているアニメ映画。

しかしその中にあって、そうした作品達と並ぶほどの盛り上がりを”毎年のように”生み出している作品は、実はこの劇場版「名探偵コナン」を除いて他にありません。

本シリーズが起こすこの唯一無二の盛り上がりは、一体どういった要素から生まれているのでしょうか。

■観客層の幅広さ

真っ先に挙げられるのは、その観客層の幅広さです。

一見すると、キッズファミリー層がメインにも思える「名探偵コナン」ですが、よく言われる特徴に“観客の卒業率の低さ”があります。

本作のようにほぼ毎年新作が公開されるアニメ映画には、他にも「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」、「プリキュア」シリーズ等がありますが、それらのメイン層となる子供達は進学等に伴い作品から卒業=鑑賞から離れることも少なくありません。

対して本作は、一度鑑賞しだすと卒業せず鑑賞を続ける層も多く、映画館へ赴くと分かりますが、今や観客層は小中高生をはじめ、子供達に付き添う大人達だけでなく大学生や社会人まで、本当に幅広くなっているのです。

こうした点は、コナンをはじめとする少年探偵団の活躍や謎解きから、登場人物達の恋愛模様や迫力のアクション、サスペンスまで、子供でも大人だけでも楽しめる要素が絶妙に組み合わさった本作ならではの現象でもあると思います。

そうして生まれる観客層の幅広さが、他の毎年恒例のアニメ映画ともまた違った興行規模の盛り上がりを生み出すのでしょう。

■それまでにないファン層の増加

もうひとつのポイントは、特に2016年以降その厚さを増してきた、熱烈なアニメファン層の存在です。

2016年の劇場版「名探偵コナン 純黒の悪夢」をきっかけに、赤井秀一や安室透といった人気キャラが多くのアニメファンに“発見”され、以降FBIや黒の組織、公安や警察学校組といった関連組織の人物達を中心に、本作はそれまでとも違った新しい熱気を生みだしました。

そこで増えたのが、同じアニメファンでも、作品を楽しむのはもちろん、グッズの購入やコラボ展開への参加等にも積極的な、アクティブなファン層でもあったことで、これまでになかった作品へのニーズと、それに応える作品展開が増えていったのです。

実際に2016年からこちら、それまでみられなかったようなグッズ展開や、コラボカフェからコラボホテルといった展開もそれ以前と比べてかなり増えてきました。

また、そうした熱烈なファン層は、“好きな映画は映画館で何度でも鑑賞する”という複数回鑑賞にも積極的なことが多いため、そうした点も少なからず後押しとなって、本作は冒頭で述べた近年のヒット作達とも並ぶような盛り上がりをみせているのでしょう。

メイン観客層の幅広さと、熱心に作品展開を追うファン層の増加という縦にも横にも厚い人気により、本作は現在、その年の上位に入る興行規模の作品を毎年打ち出すという他のどの作品にもみられない唯一無二の盛り上がりをみせる作品となっています。

加えてここ5年ほどは、ついにみえてきた興収100億達成への期待も、その盛り上がりを後押しする一因となってきました。

興収記録だけが全てではありませんが、これだけ毎年のように盛り上がりを生み続けてきた作品がついに大台突破するかどうかは、やはり作品好きとしても気になってしまいます。

最新作「名探偵コナン 黒鉄の魚影」は一体どんな内容でどれほどの反響を生み出すのか、今年の劇場版「名探偵コナン」の盛り上がりも、目が離せないものとなっていきそうです。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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