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棋聖戦挑戦者決定戦を制し史上最年少タイトル挑戦を決めた藤井聡太七段(17)へのインタビュー全文まとめ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

終局直後インタビュー

――(報道陣からの質問)勝ちました藤井七段。本局を振り返ってみていかがでしょうか。

藤井聡太七段「そうですね、激しい展開だったんですけれど、途中から攻め込まれて、少し自信のない展開になったのかと思っていました」

――棋聖戦、タイトル初挑戦ということが決まったわけですけれども、初挑戦を勝ち取ったお気持ちはいかがでしょうか?

藤井「挑戦することができて嬉しく思います。五番勝負がまたすぐ開幕になるので、しっかり準備したいと思っています」

――タイトル挑戦最年少記録更新という結果についてはいかがですか?

藤井「自分としては意識はしてなかったですが、結果的にそういう形になってよかったと思っています」

――6月8日からの五番勝負ではタイトル獲得の最年少記録もかかってくる。その点についての意気込みはいかがでしょうか?

藤井「相手が渡辺三冠(棋聖・棋王・王将)ということで、非常に充実されている相手ですけど、1勝でも多く勝てるように頑張りたいと思います」

――永瀬二冠、本局を振り返ってみていかがでしょうか。

永瀬拓矢二冠「そうですね、とても判断が難しいかと思ったんですけど・・・」

――先手になって相掛かりを選択されたわけですけれど、これはもう事前に用意されていた研究の結果ということですか?

永瀬「はい、そうですね。そのような作戦ではありました」

――中盤、終盤ぐらいまでは指せていけるような感じだった?

永瀬「いや、ちょっとわかんなかったんですけど。△3六銀(54手目)と打たれたところがあるんですけど、そこが少し対応の仕方がわからなかったので。もう少し良い対応があったのかな、という風には思いました」

――藤井七段とは公式戦初めての対局。指されてみていかがだったでしょうか。

永瀬「そうですね、△3六銀などの読んでない手を指されて、それに対して対応ができなかったので。そういう指し回しが重要なのかなと思います」

――そこで1時間ちょっと長考したのは考えてみなかった手を指されたと。

永瀬「そうですね。ちょっと思いつかない類の手だったのかなと思います」

藤井七段、別室リモートでの記者会見

――(報道陣からの質問)対局室を離れて気分も少しまた改まったのではないかと思うんですが、改めて、タイトル挑戦を決めた今の気持ちを教えてください。

藤井聡太七段「そうですね、まあ・・・うーん・・・(少し考えて)今日は挑戦というのは意識せずに、盤上に集中しようという風に思って対局に臨んだんですけど・・・。なのでまだ、挑戦するという実感があまり湧かないですけど、ただまあ、第1局がすぐにあるので、しっかり気持ちを入れ替えたいなと思います」

――史上最年少でのタイトル挑戦ということで、また新しい記録になったんですが、これまでも藤井七段は最年少でプロ入りしたりですね、29連勝を達成したりですとか、いろんな大きな記録を作ってきたと思うんですけれども、そういう時と比べて、今の気持ちというのは違うものでしょうか?

藤井「今までなかなかタイトル戦という舞台まで行けなかったので、それを今回達成できて、一つ前に進めたのかなという風に思っています」

――挑戦する相手の渡辺明棋聖についての印象、どんな相手かということを教えてください。

藤井「非常に攻めが鋭い将棋という印象で、また、最近特に充実されているなという風に感じています」

――この2か月ぐらい自宅で過ごすことが多くて、対局ができないという時期が続いてたと思うんですけれども、一昨日、今日と素晴らしい将棋を指されていい結果が出たんですが、たとえばこの2か月、「充実した期間を送れたな」とか「強くなったんじゃないかなというような手応えというのはあるんでしょうか?

藤井「2か月対局が空いた分、自分の将棋としっかり向き合うことができたのかな、という風には感じています」

――去年の王将戦挑戦者決定リーグの最終局で、今日と同じ、あと一つ勝てばタイトル挑戦という状況でした。最後はああいう形(頓死での大逆転負け)になったのですが、そういったことは頭をよぎったんでしょうか? またその時の悔しさというのを今日晴らしたという思い、気持ちというのはあるんでしょうか?

藤井「今日は挑決ということは全く意識せずに臨もうという風に思っていたので、特にそういったことはなかったです」

――今回、初のタイトル挑戦が実現したんですけれども、若い藤井七段にとっては通過点の一つという見方もできるかと思います。棋士としての長期のプランの中で、今回の初挑戦はどのような位置づけになるかと受け止めてらっしゃいますか?

藤井「タイトル戦ですと番勝負でトップ棋士の方とじっくり戦うことができるかなという風に思っているので、五番勝負を通してまた自分も成長したいな、という思いもあります」

――(2016年10月の)デビューから3年半ですか。で、こういう風にタイトル挑戦まで至ったということについてのご感想はいかがでしょう。

藤井「プロになってからもう、そんなに経つのかという気もするんですけど。今回得た機会をしっかりいかしたいという気持ちです」

――藤井七段はこれまでも新年の抱負であったりとか、様々な場所でタイトル戦への出場というところを挙げていたと思いますが、自身にとってタイトル戦というのはどのような存在、目標だったのでしょうか。

藤井「やはりタイトル戦というと、一つの最高の舞台かな、という印象があります」

――そこに今回臨むことができたということを、改めて今、率直にどのように受け止めてますでしょうか?

藤井「そのこと自体は非常にうれしいんですけど、また、そういった最高の舞台にふさわしい将棋を指したいという思いもあります」

――(藤井七段が△3六銀と打った後)永瀬二冠が長考した時に、残り16分ぐらいで局面もかなり難しい中盤戦だったと思うんですが、あの長考の時に自分の持ち時間とか、将棋の流れをどのようにお感じになっていたんですか?

藤井「その時点でかなりこちらの残り時間が少なくなってしまったので、局面もまだ中盤なので、けっこう、総合的に見ると厳しい戦いなのかなという風には、少し感じてました」

――時間のマネージメントというところがこの半年ぐらいのテーマだったようにも思っていたんですが、そういう意味では今日の将棋を越えて、タイトル挑戦を決めたというのはどのようにお感じですか?

藤井「今日の勝利も難しい将棋で、時間配分という点では少し課題が残ったかなという風にも思いますので、また五番勝負に向けてそのあたりを修正できればという風に思っています」

――14歳の時、四段昇段された時の会見で「まだまだ実力が足りない、実力をつけタイトルを狙える位置に行ければ」という言葉がありました。3年半経って、まさにタイトル挑戦権を得てタイトルを狙える位置に来ました。その3年半の月日を超えて今この瞬間を迎えているところへの思いをうかがえますでしょうか。

藤井「四段になった当初はもちろんタイトル戦に出るというのは一つの目標ではあったんですが、なかなか現実的には難しいという状況が続いていたので、それを今回挑戦できるというのは嬉しく思っています」

――今回、新型コロナウイルスの影響で対局がしばらく空いたことで、最年少挑戦が戦わずしてなくなるかもしれない、という状況もあったかと思うんですが、改めて日程が発表されてチャンスがあるとわかった時は?

藤井「自分としては記録はまったく意識していなかったんですが、ただ、過密な日程ではあるので、そのあたり、コンディションをどうするかというのは一つ課題だな、という風に思いました」

――今日の将棋は後手番で相掛かりを受けて立った。これは30連勝目をかけた佐々木勇気七段との対局と同じ戦型だったと思います。あえて大一番で因縁の戦型といいますか、形を受けた思いは何かあったのでしょうか?

藤井「自分としては序盤は普段通りに指したというつもりなんですけど、永瀬二冠に踏み込んでこられて、激しい展開になったのかなと思います」

――ネットやテレビで見ている皆さまに向けて一言抱負をお願いします。

藤井「ご観戦いただきましてありがとうございます。今日も非常に難しい将棋だったんですけど、こうして挑戦できることを嬉しく思っています。また五番勝負でも最善を尽くして熱戦にできるように頑張りたいなという風に思っています」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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