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低気圧が近年まれにみる猛発達 冬の嵐に

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
天気図。左:16日(火)朝、右:17日(水)朝。低気圧が急発達する。

16日から17日にかけて、低気圧が急発達しながら日本付近を進みます。中心気圧は一日で50hPa以上も低下。近年まれにみる急激な発達をする低気圧です。

全国的に風が強まり、18日にかけて北日本を中心に、暴風や猛吹雪のおそれがあります。

950hPa近くまで発達

17日(水)午後の風の予測。北海道付近の渦が、低気圧の中心。
17日(水)午後の風の予測。北海道付近の渦が、低気圧の中心。

24時間で24hPa以上発達する低気圧は、爆弾低気圧(bomb cyclone)と呼ばれたりもしますが、今回の低気圧は、それをはるかに上回る発達をします。

16日朝は1010hPa近くなのが、17日朝には、北海道付近で950hPa近くまで発達。

16日から、各地で風が強まり始め、17日~18日は北海道・東北や、本州の日本海側を中心に暴風が吹き荒れます。外に出るのが危険になったり、交通機関が大きく乱れるおそれも。海は大しけとなります。

単純には比較できないものの、950hPaというと、台風なら強い勢力のレベルです。強い台風が、北日本を直撃するくらいの警戒をしても、大げさではありません。

積乱雲の発達により、思わぬ所で、竜巻など突風が起こることもあり得ます。

なぜ低気圧が急発達?

16日(火)午後の上空の気温。青色が寒気、オレンジ色や黄色が暖気。
16日(火)午後の上空の気温。青色が寒気、オレンジ色や黄色が暖気。

今回のような低気圧は、寒気と暖気の「温度差」を解消しようと、大気がダイナミックに混ざり合う過程で、渦を巻いて発達します。その混ざる一連の空気の動きが、風となるわけです。

日本列島には、寒波が次々と押し寄せていますが、週末に来ていた寒波と、17日から本格的に流れ込む寒波のスキをぬうように、今は、上空に暖気が入り込んでいて、「温度差」が生まれています。

今回の暖気は、上空まで厚みがあるのが特徴で、強い寒気との間で、温度差が一段と大きくなっているのが急発達の一因でしょう。

今回の低気圧は、16日に各地にまとまった雨を降らせますが、水蒸気が雨雲などになる際に放出する熱が、暖気をアシストしている面もあると考えられます。

ホワイトアウトや遭難、停電のおそれも

17日(水)午後に予測される天気。
17日(水)午後に予測される天気。

今回、台風と決定的に違うのは、雪を伴うことです。

北日本では、猛吹雪になるおそれがあり、地面からの雪が舞いあがる地吹雪も加わって、あたりが真っ白になるホワイトアウトが起こるおそれもあります。

2013年3月、猛吹雪により、身動きがとれなくなった車の中での一酸化炭素中毒や、外に出ての凍死など、痛ましい事故が北海道東部で相次ぎました。今回も北日本では、車で外出する際は、立ち往生した場合など万が一への備えをしておきたいところです。

また、山はスキー場のコース外も含め、本州でも遭難のおそれも出てくるかもしれません。

一方、それほど低温にならない地域では、湿った重い雪となります。雪が電線についた状態により暴風で切れたり、雪の重みで倒れた木が電線を切るということもあり得ます。停電への備えをしておくと安心です。

気象情報で不必要に煽るのはどうかと思いますが、今回に関しては悪条件が重なると、各地で人的被害が出てもおかしくない状況です。

低気圧に近くても、それほど荒れなかったり、遠くても意外に荒れる所もあります。木曜日頃までは、それぞれの地域の詳しい気象情報を、こまめに確認するようにしてください。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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