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遅れる梅雨明け 夏の高気圧を左右する南海上の台風は発生せず

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
17日発表の週間予報(提供:ウェザーマップ)

 梅雨明けが遅れています。奄美地方は統計史上もっとも遅い記録を更新中で、平年だと7月21日頃に梅雨明けとなる関東甲信地方なども、遅れる見通しです。

 

なかなか北上しない梅雨前線

17日の気象衛星画像。大陸~日本付近へ長く梅雨前線の雲がのびる。梅雨前線の南、太平洋上で雲のない広大なエリアが太平洋高気圧。この高気圧の範囲が北へ拡大すると梅雨明けへ向かう。(提供:ウェザーマップ)
17日の気象衛星画像。大陸~日本付近へ長く梅雨前線の雲がのびる。梅雨前線の南、太平洋上で雲のない広大なエリアが太平洋高気圧。この高気圧の範囲が北へ拡大すると梅雨明けへ向かう。(提供:ウェザーマップ)

 7月のはじめまで、梅雨前線は順調に北上していました。一時は、7月前半にも各地で梅雨明けか?という雰囲気もあったほどです。

 ところが、九州~本州あたりまで来たところで停滞してしまいました。南から梅雨前線を押し上げるはずの夏の太平洋高気圧に、一気に押し上げる力がなかったためです。たとえるなら、ウエイトリフティングでバーベルを途中まであげたのに、最後のところがあげきれない状態です。

 7月下旬にかけて、梅雨前線はまだしばらく本州付近に停滞しそうです。 

台風が少ない

 なぜ、一気に梅雨明けとならなかったか。

 シンプルに言ってしまうと、まだ南の海上が真夏になりきれていなかったということです。夏の空気は、南から勢力を拡大します。

 日本のはるか南、熱帯に目をやると、今年は台風がまだ2個(平年は7月なかばまでに約6個)で、ここ1か月以上発生していません。

 季節が、本来の状態にまだなっていないとも読み取ることができます。

 

 強力な台風が発生すると、その強い上昇気流は、そばにある太平洋高気圧に下降し、下降気流でできている太平洋高気圧を強めます。

 太平洋高気圧をビニールプールにたとえると、台風は空気入れのような役割です。

 高気圧がふくらむことで、梅雨前線は北へ押し上げられ、一気に梅雨明けへと向かうことがあります。

梅雨明けはいつ頃に?

 西日本では梅雨前線がいったん北上するため、奄美地方や九州南部ではそろそろ梅雨明けの発表があってもおかしくありません。

 一方で、この先すぐに台風が発生する見通しはなく、強力な台風発生→太平洋高気圧が急に強まる→各地でぞくぞくと梅雨明け、というシナリオはしばらくなさそうです。

 そんな状況のなか、太平洋高気圧が少しずつ勢力を増す気配があるのが、7月26日(日)前後から。本州など各地の梅雨明けは、早ければこの頃です。

 ただ、日本のはるか南海上が本来の調子にならなければ、さらに梅雨明けが遅れる可能性もあります。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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