サンウルブズ・スーパーラグビー除外に、初の日本人コーチ・田邉淳氏は。【ラグビー旬な一問一答】
国際リーグのスーパーラグビーで日本人初のコーチとなった田邉淳は、2020年限りで同リーグを除外させられる元所属先のサンウルブズについて語った。
今年3月22日、統括団体のサンザーの通告によりサンウルブズのスーパーラグビー脱退が決定。日本ラグビー協会(※1)の坂本典幸専務理事は法外な参加費の支払いを迫られたことを強調し、ジャパンエスアール(※2)の渡瀬裕司CEOは金額について耳にしたのを「数週間前」と説明。しかし、それに反する声明も各所で報じられている。
元日本代表フルバックの田邉は15歳から9年間、単身でニュージーランドへ留学。2016年に発足した日本のサンウルブズでは、持ち前の語学力を活かしてスキルや戦術略を選手に落とし込んできた。昨年6月中旬までは日本代表のコーチも兼務し、一時は2019年のワールドカップ日本大会に向け助力が期待されたが、2018年限りで両組織を離れている。
以下、単独取材時の一問一答の一部(3月某日。一部編集箇所あり)。
――2020年限りで、サンウルブズがスーパーラグビーで戦えなくなります。
「残念ですね。いいチームでしたけど…。ひとつ思うのは、2019年のワールドカップ(日本開催)があって、サンウルブズがあったのかなということ。その考えが、世界に――これはワールドラグビーかサンザーかわかりませんが――あったのをわかったうえで、日本が引き受けたのかどうか…」
――スタートラインがそうであることは明白。ワールドカップ後も継続させたかったのだとしたら、2016年から2020年までの強化方針の策定などで、もっとすべきことがあったのかもしれません。
「継続するには、勝たなければいけない。では、勝つためには日本人を外すのかどうかなど、戦略的に考えていかなければいけないな、とも思います。(サンウルブズでは)私が関わってきた4年間で、4人のヘッドコーチがいました。
金銭面、運営面については僕も何とも言えません。そのなかでも、現場で僕ができることはやったつもりでした。
本当に白紙の状態でした。トップリーグのチームのように半分以上はできた状態からコーチングしていくのと(は違う)。スタッフやマネージャーが誰なのかもわからないところからスタートするチームを、スーパーラグビーのレベルでしかも初めての日本人として指導した。私はだいぶ、経験を積ませていただいたので感謝したいです。それを伝えていくのは、使命だと思っています(2019年からクボタに入閣)」
――まだシーズンが残されているサンウルブズには、どうあって欲しいですか。
「2020年以降、日本代表の指揮を誰が取るかによって、サンウルブズをどうしてゆくか(が変わる)ということになると思います。ただ、まず上の方に決めて欲しいのは、『サンウルブズは日本代表のためにあるのか、まったく別個のものなのか』ということです。そこをはっきりさせた方がいいです。(個人的には)もっともっと日本人が経験を積むべきだと思います」
――現状では、そのあたりの差配も含めて現場が請け負っている状態です。指揮官の資質によっては、かえってそのほうがうまく回りもするのですが。
「日本代表のためにやっているのなら、運営側が日本代表を出せと強く言うべきです」
ジョセフはワールドカップに向け、日本代表候補選手団を「サンウルブズで経験値を積ませるグループ」と「長期合宿と対外試合で鍛えるグループ」に分けている。今季のサンウルブズは、日本代表アタックコーチのトニー・ブラウンがヘッドコーチを務めるも、シーズン序盤はスコット・ハンセンアシスタントコーチが代行ヘッドコーチとなっていた。成績維持のためもあってか、海外選手を多く起用した。
ところが開幕戦で大敗したのを前後し、「ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチはもっと日本人選手を使えばよいのにと話している」と関係者。これは現在サンウルブズにいる日本人選手の実力を評価する発言で、第2節からフッカーの坂手淳史、プロップの山下裕史が先発して活躍。第3節では強豪チーフスに勝利した。
ここでの田邉の話の本筋は、「サンウルブズは日本代表選手を多く起用すべき」ではなく、「サンウルブズと日本代表との関わりについて、ガバナンス側が明確なビジョンを描くべき」といったところか。サンウルブズが2021年以降も存続するかどうかも含め、真剣かつ具体的な議論が待たれる。日本ラグビー協会は今年6月、2年に1度の役員改選を迎える。
※日本ラグビー協会=2013年にスーパーラグビー参戦へ入札。それは坂本が専務理事に就任する前の出来事。
※2ジャパンエスアール=スーパーラグビー参戦決定を受けて発足された、サンウルブズを運営する一般社団法人。