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早慶戦勝利。早稲田大学が振り返る「エリアマネジメント」と「ベンチのミス」+α【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
佐藤キャプテンは昨年までレギュラー(写真は筆者撮影)。

 創部100周年を迎える早稲田大学ラグビー部は、11月23日、東京・秩父宮ラグビー場で慶應義塾大学との早慶戦を21-14で制した。両軍加盟の関東大学対抗戦Aを5勝1敗とした。12月2日の明治大学との最終戦に勝てば優勝(秩父宮)。

 前半は陣地の取り合いや防御で優勢に立ち、同25分にはスタンドオフの岸岡智樹がドロップゴールを決めて先制するなどし、11-0とリード。以後も要所で慶應義塾大学の防御網を切り崩すなどし、後半28分には21-7と点差を広げた。

 終盤に追い上げられたが、後半ロスタイムは自陣ゴール前での防御局面をしのぎ切った。

 試合後、今季就任の相良南海夫監督と出場のなかった佐藤真吾キャプテンが会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

相良

「今日はたくさんの観客が集まるなかで早慶戦ができたこと、本当によかったと思います。どういう結末になるかわからないなか、結果的に早稲田が勝てたことも本当に嬉しいと思っています。今日はディフェンスで粘り強くやっていこう、我慢比べの試合だと言って選手を送り出しました。その我慢比べでわずかながら勝てたことがきょうの点差に繋がったと思っています」

佐藤

「まず勝てたことは本当に嬉しいです。今回のテーマはディフェンスで勝つ、でした。特に最初の20分間はゲインラインの攻防は意地の張り合いだと、試合前から声をかけていました。それに関し、ゲインラインの攻防で少し受けるところもあったのですけど、結果的に前半途中もディフェンスで頑張り切れて、後半も守り切れて、改めて自分たちの強みがディフェンスであると再確認できた試合でした」

――11月4日の帝京大学戦で大量失点(28-45)。どう修正したか。

佐藤

「細かく言えば、ディフェンスで前に出て仕掛けるひとりひとりのマインドセット(を再確認した)。夏の帝京大学との練習試合(28-14で勝利)ではディフェンスで前に出られて相手の考える時間を無くせたんですけど、この間の試合ではそれがうまくできなかった。今回はひとりひとりが前に出る意識にフォーカスしていました」

相良

「前に出る。相手のパスが浮いている前の空間を埋める。また帝京大学戦でできていなかったのは、横との繋がり。面で(列をなした守備が)できておらずバラバラになったところ、横との連携、繋がり、連動を修正してゲームに臨んだというところです」

――相手のスクラムハーフ周辺でプレッシャーをかけられた、という指摘もあります。

相良

「いいプレーヤーが多かったラック周りをしっかり抑え、(自軍の)バックスリーが揃ったら面で上がるということは徹底していました」

――岸岡選手のゲームメイクと先制ドロップゴールについて。

相良

「ドロップゴールは想定外で、見ている方もびっくりしましたけど、ワールドクラスだと思いました。岸岡を中心としたエリアマネジメントは、我々が『きょうはこういうエリアマネジメントをしていこう』とチーム内で意思統一したプランを思った通りに遂行できた。それがその後のディフェンスでの我慢にも繋がった。今日のエリアマネジメントは満点に近いと思っています」

――具体的にどんなエリアマネジメントを目指したか。

相良

「うーん、そうですね…(やや言葉を選ぶように間を取る)。我々がカウンターを仕掛けて敵陣に入れないようなところではキックで陣地を取っていこう、というプランでやっていた。そこを忠実にできた。それに伴ってキックチェイスも確認していたのですが、そこでもチームとして連動して動けたのが大きい」

――4年生として早慶戦で勝つ意味。

佐藤

「僕がいる間の早慶戦は全て勝っていて、今回も4年生で勝てた。早慶戦は僕らにとって特別な試合。何で早慶戦が負けられないか。その具体的な理由があるわけじゃなく、俺らがワセダで相手がケイオーだから。ただそれだけなんですけど。だからこそ、勝てて、本当によかったと思います」

――自陣深い位置でのラインアウトディフェンスが有効。相手のチャンスを潰しました。

相良

「ラインアウトについてはマイボールも相手ボールも練習を重ねて来たので、想定以上にプレッシャーをかけられた。そこも相手にリズムを渡さない要因になった。特に前半です。選手がよくやってくれた」

――明治大学との早明戦で勝てば対抗戦優勝。

相良

「これまでは試合までに2週間、準備する時間があったなか、今回は間が短い。早慶戦に向けてもディフェンスにフォーカスしていた。積み上げていくこと。それから明治大学さんはスクラムが武器。そこにどう対策するかを限られた期間でしっかりやる。勝てば対抗戦優勝。1点でも上回るよう、気持ちの込めたいい試合ができたら」

佐藤

「答えは被るかもしれないですけど、いままでディフェンスで勝つと言ってきたので早明戦もディフェンスで勝つのは同じ。ただ今回の試合ではちょっとしたペナルティーのところ、セットプレーでピンチになる部分が多かった。そこにフォーカスする。ディフェンスとアタックに関しては、いままでやって来たことの精度を上げていくだけです」

――前半31分のトライ後のコンバージョン。本来のキッカーである齋藤直人選手ではなく、岸岡選手が狙いました。しかも、キックティーを置かないドロップゴールで(結果は失敗)。

相良

「あれは完全にベンチのミスです。キックティーを持っていかなきゃいけないのにもっていかなくて、それも(ルール上)90秒以内で蹴らなきゃいけなかったので、ドロップゴールの上手い岸岡が機転を利かせて蹴ったということ。本当に、2点に泣かなくてよかったです。その後、齋藤もリズムを崩して入らなくなったんじゃないかと(その後あったコンバージョンは2本とも失敗)。我々は連係、連動を大切にしているんですけど、全くそこはできていなかった。選手に申し訳ないです(場内、笑い)」

――勝ったのは嬉しい。ただ、試合に出たかった。いかがでしょうか。

佐藤

「本当にその通りで、勝って本当に嬉しいですけど、終わった後に皆が喜んでいる姿を見ると、嬉しいんですけど、心には『出たい』と(いう思いがあった)。本当に悔しいです。次の早明戦までに1週間ちょっとしかないですけど、それまでの間の練習で、激しくスタメン争いをしていきたいと強く思っています」

 メモリアルイヤーの日本一を目指すなか、一時日本代表候補入りの齋藤は「まず勝つこと。それに1試合、1試合、成長する。ただ勝つだけじゃなく、1つずつ成長する。まずこの時点では帝京大学に負けている。チャンピオンになるには止まっている暇はない」。シンプルな思いを貫きたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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