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今季ACLでKリーグ勢の苦戦は必至!?韓国メディアや解説者も覚悟する厳しい戦い

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2011年ACL決勝でタイトルを逃した全北(写真:ロイター/アフロ)

本日3月1日から韓国ではKリーグが開幕する。1983年に立ち上がった前身のスーパーリーグから数えて今年で36回目のシーズンだ。

その開幕に先立って2月26日には、Kリーグ1(1部リーグ)、Kリーグ2(2部リーグ)の全クラブの監督や主力選手が一堂に集まった『Kリーグ・メディアデー』も行なわれたのだが、例年と違ったことがあって気になった。

今年は、Kリーグ1の「Friday Night Football」、Kリーグ2の「Monday Night Football」などで木曜以外は何らの試合が行なわれるスケジュールだったり、ベンチでノートパソコンやタブレットの使用が許可されたり、出場選手リストに最低2名義務づけられていた23歳以下選手の登録が22歳に引き下げられたりと、新しい試みも発表されたが、「アジア制覇」「ACL王座奪還」というようなお決まりのフレーズがあまり聞かれなかったのだ。

Kリーグからは今季、全北現代(昨季リーグ戦1位)、慶南FC(昨季リーグ戦2位)、大邱FC(FAカップ優勝)、蔚山現代(リーグ戦3位/プレーオフで獲得)の4チームが出場するが、その指揮官たちが「アジア制覇」を宣言することもない。

『スポーツソウル』がサッカー解説者10人を対象にしたアンケート結果でも、Kリーグ勢の優勝を予想した者はわずか1人しかいなかった。

(参考記事:「Kリーグ勢のACLは16強で終わる」との予想も。韓国のサッカー解説委員が辛口な理由

いち早くプロリーグが立ち上がったことから早くから「アジアの盟主」を自認し、ACLスタート時からリーグ全体としてアジア制覇に意欲を示してきたはずのKリーグが、今季に限ってはトーンダウン気味になるのは、出場するチームの状況とも無関係ではないだろう。

というのも、例えば大邱FCと慶南FCは今季がACL初出場。それぞれKリーグでは長年下位クラスどころか、2部リーグ降格も何度か経験してきたクラブだ。サムスンやヒョンダイといった財閥企業を母体にする企業クラブが多いKリーグにあって、予算規模も小さい市民クラブだけに期待値も低いのかもしれない。

実際、大邱FCと慶南FCは戦力的に充実しているとは言い難い。グループFでサンフレッチェ広島とも対戦することが決まっている大邱は、ロシアW杯で一躍有名になった奇抜ヘアGKチョ・ヒョヌの引き留めにこそ成功したものの、目立った大型補強があったわけではない。

韓国で「悪魔の才能」「日本サッカーの神童」と呼ばれる邦本宜裕が属する慶南FCにも、不安が残る。1部昇格した昨季は序盤から上位陣を苦しめ「負け犬の反乱」とさえ言われた快進撃を見せてリーグ戦2位の座を射止めて今季ACL出場権を手にしたが、その立役者であるブラジル人FWマルコンは、中国の河北華夏に引き抜かけてしまった。

慶南はその代わりにQPR、クリスタル・パレス、レディンクなどでプレーしたMFジョーダン・マッチ、セリエAのインテルでもプレーしたオランダ人FWルク・カスタイニョスを獲得しているが、彼らが1年でアジアに適応できるかは未知数。過去の事例に基づくと、1年でKリーグを去ってしまう可能性もありうる。

(参考記事:Kリーグの外国人選手は1年で韓国を去ってしまう? 離脱率63%となる理由

新顔にチームの命運を託すという意味では全北現代も同じだ。2006年ACL初優勝を皮切りに、在籍12年間飯でACL優勝2回・準優勝1回、Kリーグ優勝回数に至っては6回となる栄光を全北現代にもたらしたチェ・ガンヒ監督が今季から中国リーグの大連実徳に送り出したため、ポルトガル人のジョゼ・モライス新監督がチームの指揮を執る。

全北現代はキム・ジンス、イ・ヨンなど現役韓国代表はもちろん、キム・シヌク、イ・ドングッら有名スターを多数揃え、今季は昨季Kリーグで韓国人最多得点(14得点)を挙げたムン・ソンミンや昨季Kリーグヤングプレーヤー賞に輝いたハン・スンギュなどを補強するなど、選手層はもちろん、選手平均年俸額でもKリーグで突出しているが、その豊富な素材をアジア初挑戦となるポルトガル人監督がどう料理するか。

(参考記事:最高額は日本キラーの大巨人!! 韓国Kリーグの平均年俸はいくらなのか

「チェ・ガンヒ監督時代の全北は常にACL優勝候補だったが、モラリス監督の実力はベールに包まれており、優勝を断言するのが難しい」というのが、『スポーツソウル』の見方だ。

プレーオフを勝ち上がり、Jリーグ連覇中の川崎フロンターレと同じグループFに属することになった蔚山現代についても、「ベスト4まで行けるかもしれないが、決勝進出は容易ではないだろう」とするサッカー解説者がいる。

それどころか、『スポーツソウル』によると、「全北と蔚山、慶南、大邱はいずれもベスト8に進出できない」と予想するサッカー解説者もいたという。つまり、今季ACLでは優勝どころかラウンド16でKリーグ勢が姿を消す可能性が高いという悲観的な見方もあるわけだ。

昨季ACLでは全北現代、蔚山現代、水原三星がグループリーグを突破こそしたものの、水原三星が準決勝で鹿島アントラーズに敗れ、2年連続して決勝に手が届かなったKリーグ勢。今季も苦しい戦いになることだけは間違いなさそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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