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「湯の入替え年2回」問題でショックを受けた人に読んでほしい。「温泉の質が高い宿」を探す4つの方法

高橋一喜温泉ライター/編集者

二日市温泉・大丸別荘の「湯の入れ替えは年2回だった」というショッキングなニュースが流れてから1日経った。

循環ろ過式であるのは問題ではないが、完全換水が年2回で、塩素殺菌もしていなかったというのは衝撃的である。温泉ファンとしては怒りを通り越して悲しくなる。

このようなニュースが出ると、温泉に出かける人は、ますます宿選びに迷うことになるだろう。

そこで、「温泉の質が高い宿」を探す方法について考えてみたい。宿を探す場合、何を情報源とすれば、自分好みの、いい温泉に巡り合えるだろうか。

ポイントは源泉の利用状況である。具体的には、源泉がかけ流されているかどうか、そして、どれほど鮮度が高いかである。循環ろ過式の場合は、ろ過や殺菌で湯が清潔に保たれてはいるが、使いまわす分、湯の鮮度は下がり、もともとの温泉の個性も失われてしまう。

筆者はおもに4つの情報源を頼りに滞在する宿を決めている。ひとつずつ見ていこう。

①書籍・雑誌

インターネット全盛の時代だが、温泉に関する書籍や雑誌などは今でも案外役に立つ。

書籍に関しては、私と同じように温泉の質や鮮度にこだわりをもっている専門家は多い。そうした書籍に掲載されている宿であれば、少なくとも温泉の質に関して外すことはない。

また、筆者の場合、北海道、東北、四国、九州といったエリア別の温泉ガイド本も手元に置いて参考にしている。「今度、このエリアに行ってみたいなあ」というときページをめくると、いくつか候補が浮かび上がってくる。

雑誌の「温泉特集」も、温泉情報の宝庫である。ただし、注意したいのは雑誌によって、湯そのものに対するこだわりが異なることである。

たとえば、『オズマガジン』『anan』『CREA』などの女性誌は定期的に温泉特集を組むが、温泉そのもののというより、宿の雰囲気やサービス、グルメや観光にスポットを当てている。したがって、温泉の質そのものにこだわる人とは相性がよくない。『じゃらん』などの情報誌も、広告案件の記事が多く、湯の質に関する情報は少ない。

湯の質に一過言ある雑誌といえば、『自遊人』『男の隠れ家』『温泉批評』あたりであるが、『自遊人』は休刊中、『温泉批評』はデジタルへ移行。これらはバックナンバーを手に入れても、決して損はしない。

難点をいえば、特に書籍は情報が古くなりがちだというところ。そういう意味では、書籍を入口に宿に目星をつけて、ネットの情報で補完するというのが現実的なプロセスである。

②ブログなどの個人サイト

温泉地や宿の検索をかけると、たいていは旅行会社の関連サイトが出てくる。たとえば、「草津温泉 宿」と入れて検索しても、検索結果の最初のページは、楽天トラベル、じゃらん、JTB、ゆこゆこ、一休などの予約サイトが占める。

残念ながら、これらのページに飛んでも、温泉の質に関する情報はほんのわずかである。

温泉の質がよいかどうかは、やはり宿の当事者やビジネスの関係者ではなく、第三者の評価が信頼できる。とりわけ個人で詳細にレポートしてくれている温泉ファンの情報は頼りになる。

特に個人ブログやnoteなどは、SNSなどの投稿と比べて、文章量が多く、記事も詳細であることが多い。

だが、こうした個人のブログやサイトは、検索の上位になかなかあがってこない。ちょっとしたコツが必要である。

筆者は「○○旅館(温泉) ブログ 源泉かけ流し」「〇〇旅館(温泉) ブログ 夕食(朝食)」などのキーワードで検索する。

前者のように「源泉かけ流し」と入れるのは、温泉の質にこだわりをもち、レポートする人であれば、ほぼ確実に使う言葉だからだ。

後者のように「夕食(朝食)」を入れて検索するのは、夕食のレポートを書いているような人は、その宿のことを詳細にレポートし、温泉に関してもさまざまな点から評価してくれている可能性が高いからだ。

それにしても、こうした個人ブログを見ていると、参考になるだけでなく、その人の温泉熱が伝わってきて、私も大いに感化される。

写真を撮ってアップしたり、文章を書いたりするのは大変な労力であることは、筆者も理解している。それでも、情報に乏しい宿のレポートをしてくれる温泉ファンがいるから、宿選びでの失敗を避けることができる。

理想は「この人の選ぶ温泉宿は自分の好みに合う」という個人サイトをブックマークし、日頃から参考にすることだ。「この人の薦める宿なら間違いない」という相手が見つかると、温泉宿探しがグッとラクになる。

③温泉ファンのSNS

TwitterとinstagramといったSNSの性格上、多くは「この温泉に入りにきました!」「ここの温泉は最高です!」といった短めの感想を述べた投稿だが、次々とフォロワーから温泉情報が雨あられのごとく降り注いでくる。

なかには「えっ? こんなところに温泉あったの?」「あの温泉宿って、こんなにいい湯だったの!?」と声を漏らしてしまうような投稿もある。3800湯をめぐってきた筆者も、日々発見の連続である。

大事なことは温泉ファンの投稿には「リアルな声」が反映されていることだ。源泉かけ流しかどうかなど、湯の質にも言及している投稿は少なくない。多くは純粋な個人の感想なので、忖度なく、率直である。

instagramなどは写真も美しいので、「こんな温泉に入ってみたい」という温泉も見つかりやすいだろう。

すでにTwitterやinstagramを活用して情報収集している人にとっては、当たり前の話かもしれないが、タグ検索でお目当ての温泉の情報を得る方法も一般的だ。

ちなみに、私も現在、Twitter(外部リンク)instagram(外部リンク)で毎日投稿を続けている。興味があれば、ぜひ覗いてみてほしい。

④旅館の中の人のブログ&SNS

宿の公式サイトは基本的に「盛られて」いて、源泉の質に関する情報に乏しい。だが、宿の主人や女将、スタッフがブログやSNSをしている場合、筆者はこれらも見るようにしている。

想像の範囲を出ないが、公式サイトは業者主導でつくられがちである。ITに精通していなければ、ホームページをつくる際、制作業者のペースで事が進むのは想像に難くない。結果、個性のない画一的なコンテンツになりがちである。

だが、ブログやSNSは個人でも情報発信できる。ここに宿主の温泉へのこだわりや、料理、サービスに対する思いが反映されていることが多々ある。こうした情報やその発信者の人柄から、「この温泉に入ってみたい」と感じることもよくある。

残念ながら、ブログやSNSのアカウントをもっていても、宿側の情報発信が途絶えてしまうケースは少なくない。

公式サイトよりも、ブログやSNSのほうが見られていると信じ、中の人は積極的に情報発信をしていただきたい、と思っているのは筆者だけではないだろう。

高橋一喜|温泉ライター

温泉ソムリエ/386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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