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ビタミンC不足が引き起こす健康リスク - 皮膚や全身の病気との関連性

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

ビタミンCが健康長寿のカギ!?老化や病気との関係性を探る

今回は、ビタミンCが私たちの健康に与える影響について詳しく解説します。ビタミンCは、美容や健康によいとされる栄養素の代表格です。しかし、その働きや必要性について、きちんと理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。

実は、ビタミンCは老化や様々な病気と深く関わっていることが分かってきました。例えば、動物実験では、ビタミンCが不足すると寿命が短くなることが報告されています。また、ヒトでは、加齢に伴ってビタミンC血中濃度が低下する傾向にあり、特に中高年以降で顕著だそうです。

ビタミンCは、活性酸素を除去する抗酸化作用や、コラーゲンの合成を助ける働きなどを持っています。そのため、不足すると、酸化ストレスによる細胞の損傷が蓄積したり、皮膚や血管の健康が損なわれたりするのです。

そこで本記事では、ビタミンCと健康の関係性について、以下の3つの観点から詳しく見ていきます。

【ビタミンCが果たす役割と体内での働き】

ビタミンCは、抗酸化作用のほか、コラーゲン合成、鉄の吸収促進、ビタミンEの再生など、体内で実に様々な役割を担っています。ここでは、それぞれの働きについて、わかりやすく解説します。

【ビタミンCと老化・病気の関係性】

ビタミンCの不足や血中濃度の低下は、動物やヒトの寿命、さらには様々な病気と関連することが分かってきました。例えば、慢性腎臓病やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんでは、ビタミンC濃度が低い傾向にあるそうです。皮膚の老化についても、ビタミンCとの関連が示唆されています。

【ビタミンCの適切な摂取方法】

ビタミンCは皮膚の健康維持に欠かせない栄養素です。コラーゲンの生成を促したり、メラニンの過剰な生成を抑えたりする働きがあり、シミやシワの予防に役立つと考えられています。また、ビタミンCの不足は皮膚の炎症性疾患とも関連します。

一方で、ビタミンCの過剰摂取にも注意が必要です。1日の推奨摂取量は成人で100mgとされていますが、サプリメントなどで大量に摂取すると、以下のような健康上のリスクがあります。

1. 腎臓結石の形成:ビタミンCの代謝物であるオキサレートが尿中に増加し、カルシウムと結合することで腎臓結石が形成されやすくなります。

2. 鉄の過剰吸収:ビタミンCは鉄の吸収を促進しますが、過剰摂取によって鉄が体内に蓄積し、臓器の損傷につながる可能性があります。

3. 消化器系の不調:大量のビタミンCを摂取すると、下痢や腹痛などの消化器系の不調を引き起こすことがあります。

4. 血糖値の上昇:ビタミンCサプリメントには糖類が含まれていることがあり、過剰摂取によって血糖値が上昇する可能性があります。

したがって、ビタミンCは食事から適切に摂取することが基本であり、不足しがちな場合はサプリメントを利用する際も推奨量を守ることが重要です。

参考文献:

- Sato et al. (2024) The evidence to date: implications of l-ascorbic acid in the pathophysiology of aging. The Journal of Physiological Sciences 74:29. https://doi.org/10.1186/s12576-024-00922-7

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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