ウエルター級アマチュア全米王者からプロに転向して8戦全勝5KO中のイケメン選手
第2ラウンド1分58秒。ヴィト・ミエルニキの右ストレートを浴びたメキシカン、ノエ・ロペスが腰からキャンバスに崩れ落ちる。ロペスのジャブをダッキングで躱し、直後に放ったカウンターだった。
ミエルニキは、昨年6月に高校を卒業したばかりの18歳。この日、TV解説を務めていた元統一ヘビー級チャンピオンのレノックス・ルイスが「若いですねぇ。私がその年齢だった頃はアマチュア選手で、五輪を目指していましたよ」と語っていたところであった。
翌3ラウンド、ミエルニキは落ち着いてロペスの動きを観察しながら、じわりじわりと距離を詰める。ジャブを上下に打ち分けることを忘れず、得意の右をぶち込むタイミングを計っていた。
同ラウンド残り1分。ロペスがロープを背負うと、ミエルニキは一気に畳み掛ける。アクセントとなったのは、やはり右だった。ショートフックと右ストレートを織り交ぜながら、再三ロペスのテンプル、顎を狙う。左アッパーも効果的にヒットさせ、ロペスにダメージを与えた。
コーナーから動けなくなったロペスを救うように、レフェリーが試合を止めた。2分50秒、ミエルニキはTKOで勝利する。2019年7月13日のデビュー以来、8連勝(5KO)を飾った。
同ファイトはFoxが放送したが、同局もプロモーターのPremier Boxing Champions 社も「このニュージャージー州出身の若手は、ボクサーとしてだけでなく、無形の財産を持っている」と話す。
華があり、ファンが付きそうだと関係者に認識されているのだ。
2002年5月10日生まれのミエルニキは、7歳にして故郷のジャマ・カータージムに通い、ボクシングの手解きを受ける。アマチュア時代はニューアーク、フィラデルフィア、ボルチモア、ワシントンDC等のトップ選手と対戦した。
9歳からは、数々の全米アマチュアタイトルを獲得し、15歳でジュニア・ナショナルチャンピオンに。合衆国ウエルター級代表選手にも選ばれた。カナダ、セルビア、イングランド、スペイン、プエルトリコに遠征し、国際大会で10勝2敗の戦績を挙げる。
「彼には無限の可能性がある」と関係者が絶賛するなか、「早くプロのリングに上がりたい!」と高校在学中の17歳でプロに転向。スペインで行われたアマチュアの国際試合で納得のいかない判定負けを喫したことも、「自分のスタイルはプロ向きだ」と感じる要因となった。
8勝目を挙げた後、ミエルニキは言った。
「今日は自分の強さを感じました。自己採点するならAですね。相手に何もさせなかった。いつまでウエルター級で戦うか分かりません。今後、階級を上げることになるでしょう。
今、僕はボクシングを学んでいる最中です。まだ18歳ですし、焦りたくない。自分を造っていかないと。ダメージはまったくありませんので、早目にジムに戻って次に向けた練習を始めます」
同じ局、同じプロモーターが売り出すヘスス・ラモスもウエルター級であり、15戦全勝14KOの19歳として大きな期待をかけられている。
近い将来、両者の直接対決が見られるか? あるいは階級が変わってしまうか。いずれにしても、彼らの出世争いは見るべき価値がありそうだ。