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将棋界のレジェンド羽生善治、15歳四段の過去から50歳九段の現在に至るまで35年度連続勝ち越し

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 羽生善治九段(50歳)の2020年度の対局が終わりました。

 最終的な勝敗は25勝21敗(0.543)。年度終盤では一時期20勝21敗で負け越していたものの、最後は5連勝でのフィニッシュとなりました。

 羽生九段はこれでデビュー以来35年連続勝ち越しとなりました。

 羽生九段は1985年12月、15歳で四段デビュー。フルシーズン参加初年度は1986年で、いきなり全棋士中勝率1位となりました。以来、年間最多対局数89、最多勝数68(いずれも2000年度)、記録4部門4回制覇(年間1位:対局数=12回、勝数=14回、勝率=7回、連勝=5回)などなど、圧倒的な成績を収め続けてきました。

 藤井二冠の2020年度成績表(44勝8敗)はほぼ真っ白です。同様に、羽生九段が七冠を同時制覇した1995年度(46勝9敗)なども真っ白です。

 一般論として、キャリア最盛期にある名棋士でも、少し調子を崩せば強敵相手に負けが込み、年間単位で負け越すという例はしばしばあります。

 たとえば森内俊之九段は2011年度、最強のライバル羽生善治名人を七番勝負で降し名人復位。しかしあと調子を崩して10勝19敗(0.345)でした。

 2017年度、佐藤天彦名人(当時)は稲葉陽八段の挑戦をしりぞけて防衛したものの、他棋戦ではふるわず、16勝19敗(勝率0.457)でした。

 2017年度、渡辺明棋王(33歳)は棋王位を防衛しながらも21勝27敗(0.438)で負け越しています。

 またキャリア後半を迎えれば、どうしても敗戦は増えていきます。そうした中、羽生九段は勝ち越しを続けてきました。

 ただし年長記録という点では、まだ記録達成ではないようです。

 超人・大山康晴15世名人は1977年度、27勝30敗(勝率0.474)で初めて負け越しを喫しました。実に55歳のときです。

 大山15世名人は五十代、六十代に入ってからも異次元の強さを発揮しました。初の負け越しから2年後の1979年度。57歳でキャリアハイの53勝(21敗、勝率0.716)をあげ、王将復位なども果たして最優秀棋士に選ばれました。

 羽生九段の通算成績は2112局戦って、1481勝629敗2持将棋(勝率0.702)。通算勝数は歴代1位。いまなお無人の領域を突き進みながら、記録を更新中です。2021年度には通算1500勝まであと何勝という、カウントダウンの声が聞かれることでしょう。

 羽生九段は通算の勝数やタイトル獲得数では大山15世名人を抜きました。しかしまだまだこの先、大山15世名人が残した多くの年長記録が控えています。羽生九段は55歳になってもまだ、勝ち越しを続けているでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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