バルサに必要な「詐欺師」の存在。グアルディオラ時代のダニ・アウベスと埋まらない穴。
ラウタロ・マルティネスやミラレム・ピャニッチ獲得に動いているバルセロナだが、一方で選手を売却する必要性が生じている。
今季、新型コロナウィルスの影響でリーガエスパニョーラは一時中断した。再開後も当面は無観客で試合が行われる見込みで、バルセロナに関しては1億5000万ユーロ(約180億円)の損失があるといわれている。
またバルセロナは補強に向け、移籍金の引き下げを目的にオペレーションに選手譲渡を含む可能性を考慮している。サミュエル・ウンティティ、ジャン=クレール・トディボ、アルトゥーロ・ビダル、イバン・ラキティッチ...。トレード要員と売却候補の名が、出ては消えていく。
だが、その中でも鍵を握る存在となっているのがネルソン・セメドだ。ユヴェントスとの取引に際しては、ピャニッチとマッティア・デ・シリオを含めた「換金」の材料として、あるいはインテルとの交渉をにらみマンチェスター・シティのジョアン・カンセロとのトレード案などが浮上している。
■ペップ・チームの右サイドバック
セクステテ(6冠)を成し遂げた「ペップ・チーム」と称されるジョゼップ・グアルディオラ監督のバルセロナ、トリプレテ(3冠)を達成したルイス・エンリケ監督のバルセロナは、すでに過去のものになりつつある。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、黄金時代を築いた主力が去っていった。
そして、もう一人、あの頃のチームに欠かせなかった選手がいる。ダニ・アウベスだ。
セビージャでブレイクしたD・アウベスは、バルセロナで活躍するために必要な要素をすべて兼ね備えていた。彼の退団後、セルジ・ロベルトがL・エンリケ監督によってコンバートされ、右サイドバックでプレーするようになった。
ジョルディ・アルバ、S・ロベルト、ジオバニ・ファンブロンクホルスト、シルビーニョ、マクスウェル...。バルセロナの歴代のサイドバックが、ブラジル人、オランダ人、バルセロナのカンテラーノで固められているのは偶然ではない。
バルセロナの【4-3-3】において、両ウィングには複数の選択肢が与えられるのが理想だ。インサイドハーフとセンターフォワードだけではなく、そこにサイドバックの選手が絡む必要がある。そうでなければ、ウィングの選択肢が狭まってしまう。
■完璧な詐欺師
サイドバックに求められるのは連携力、戦術理解力、プレー解釈力といった能力である。とりわけバルセロナのプレースタイルでは、全ポジションの選手に勇敢さが要求される。
サイドバックの選手は、スペースを「読む」必要がある。時に「偽ウィング化」が求められるからだ。相手守備陣の裏に抜け、深い位置からクロスを送る。大抵のチームで、それはウィングの役割。だから、バルセロナのサイドバックはアシスト数が多い。リオネル・メッシに最も多くアシストしたのがD・アウベスであり、アルバだというのが、それを証明している。
スペイン人ジャーナリスト、マルセル・ベルトランはスペイン『パネンカ』でD・アウベスを「詐欺師」と形容した。曰く、D・アウベスは「完璧な詐欺師」だ、ということだ。
バルセロナ時代、彼がメッシにパスを送るまでに、どれだけ細かいフェイクを入れていたか分からない。そうして対戦相手を、時には味方でさえ、騙し続けた。そういった意味合いにおいて、確かに彼は詐欺師だった。そして、現在のバルセロナに足りないのはまさにそういった存在なのかもしれない。