米国でも進むパソコン離れ・スマホへのシフト
自宅にパソコンのブロードバンド環境がある人は2/3
スマホの普及に伴い、パソコンを不要とする人が増え、いわゆる「パソコン離れ」「キーボード離れ」的な現象が指摘されている。その動きは日本だけでなくアメリカ合衆国でも生じているようだ。その実情を同国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年12月に発表した調査結果「Home Broadband 2015」を元に確認していく。
まず最初に示すのは、自宅にブロードバンド環境が整備されている人の割合。回線が引かれているだけでは「環境整備」には該当せず、必然的にパソコンによるインターネットアクセスが可能な環境が用意されていることになる。
全体では67%。大よそ2/3。意外に低い値のように見えるが、これは多分に高齢層まで含めた平均値だから。男女別の差異はほとんどなく、年齢別では高齢層の方が低い値。また、世帯年収でも大きく差が出ているのが特徴で、低年収と高年収との間には2倍以上の差が出ている。学歴でも似たような動きがあるが、これは多分に世帯年収と学歴に相関関係があるため。
居住地域別では地方ほど高い値を示す。これは代替手段となるスマートフォンの利便性によるものだろう。つまり都市部の方がスマートフォンの接続環境が整備されているので、スマートフォンにシフトする人が多い次第である。
同様の調査は2年前にも実施されているが、その時の値との比較を算出すると、意外な結果が導き出される。
プラスの属性はゼロ。大よそ3から5%ポイントの減退を示している。特に若年層、都市部、低年収から中堅年収における減少ぶりが著しい。
スマホのみへシフトする人が増えている
自宅のブロードバンド環境整備率は減退している。しかし別調査の結果によれば、アメリカ合衆国でインターネットへのアクセスに関する普及利用率は減少していない。何かが補完していると見るのが自然だが、その「パソコンの代替役」存在がスマートフォン。報告書でも「スマートフォンはインターネットアクセスに関するパソコンのオプション的な存在ではあるが、『スマホのみ』の利用者も増加中」と説明している。
実際、今調査でも(調査対象母集団全体、つまり大人全体において)現状では13%の人が「パソコンによる自宅でのブロードバンド接続環境は無い」「スマートフォンを所有し、インターネットアクセスはそのスマホによるもののみ」と回答している。
数字そのものは違えど、属性別における直近の値と、2013年から2015年への変移の%ポイントの相対的な立ち位置に変わりは無い。つまり各属性の傾向がそのまま積み重なる形で継続し、「自宅にブロードバンドが無い、スマホだけでインターネットをしている人」が増えている。
具体的には若年層、低年収層、低学歴、そして都市部。性別による差異は無い。報告書ではいくつかの可能性を呈している。パソコンによるブロードバンド環境とスマートフォンの双方を有していても、お財布事情からパソコン経由を断念せざるを得ないケース。世帯年収そのものが低下しており、下位年収層ではスマートフォンへのアプローチがインターネット環境の取得には最適な手段と判断されたケース。そしてさらには最初からスマートフォンを積極的に選択し、パソコンの必要性を覚えないケースも想定される。若年層では特にそのパターンが多いものと思われる。
自宅のブロードバンド環境は減り、スマートフォンのみの利用率は上昇。ここ数年のアメリカ合衆国におけるインターネット普及率そのものの上昇は、多分にスマートフォンの普及浸透によるものであることが分かる。動きの度合いそのものはまだ微少だが、「スマホも」から「スマホのみ」の人の増加の動きは、今後確実に同国のインターネット界隈に影響を与えていくことだろう。
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