母子世帯や高齢者世帯の所得動向を長期的に確認する
所得面でたびたびスポットライトが当てられる、高齢者世帯や母子世帯。その実情を厚労省の国民生活基礎調査の結果から確認していく。
直近となる2014年時点における全世帯の平均世帯所得は541.9万円。
次に示すのはいくつかのパターン別の世帯所得に加え、平均等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員数の平方根で割って調整した所得。単純に人数割りをした場合、同居する事による共有化のメリットが考慮外となるため。例えば4人家族で500万円の可処分所得なら、500万円÷√4=500万円÷2となり、250万円。1人暮らしの可処分所得250万円の世帯と大よそ同じ生活レベルと見なすことができる)を確認したもの。単純な世帯所得だけでなく平均等価可処分所得も用意されているのは、該当する種類の世帯が構成人数によって所得に対する融通さに大きな変化が出てくること、そして可処分所得の方が重要性が高い事例が多々あることを考慮したものと考えられる。
「全世帯」は今調査の調査対象母集団全世帯における平均。「高齢者世帯」とは65歳以上の人のみ、あるいはそれに18歳未満の未婚の人が加わったもので、例えば高齢世帯に18歳以上の人が加わり、稼ぎ頭が居そうな世帯は該当しない。「65歳以上の者のいる世帯」とは異なるので注意が必要。
そして「母子世帯」とは死別・離別・その他の理由(未婚の場合を含む)で、現に配偶者のいない65歳未満の女性(配偶者が長期間生死不明の場合を含む)、と20歳未満のその子(養子を含む)のみで構成している世帯。「児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯」とは異なるので注意。
なお「可処分所得」とは実収入から非消費支出(税金・社会保険料)を引いたもの。
全世帯の平均所得は541.9万円。他方、平均等価可処分所得は286.0万円。これが高齢者のみの世帯となると297.3万円・211.6万円となる。単に高齢者が居るのみで、それより下の年齢(かつ18歳以上)の人が居る場合もある世帯では、働き手が居る可能性もあるため、所得などは高めとなる。
一方、母子世帯は254.1万円・133.6万円。多分に共働きをしている世帯から構成されている、児童が居るだけの世帯とは大きな違いがある。
今件各世帯類型別に、所得及び平均等価可処分所得の推移を見たのが次のグラフ。なお母子世帯は取得年数によっては客体数が少数のため、値にぶれが生じている可能性があることに留意を要する。
まず平均所得だが、全世帯は低所得世帯比率の増加に伴い漸減しているのは、すでに他の記事で解説の通り。また「65歳以上の者のいる世帯」でも、高齢者世帯の割合が増えていることもあり、同じようなペースで減少している。一方、高齢者世帯や母子世帯、児童のいる世帯はバブル期崩壊後あたりをピークとして、前世紀から今世紀にかけていくぶん下げたあとは、ほぼ横ばいで推移している。所得に限れば全体的な減少は、低所得とならざるを得ない世帯の比率増加によるものであることが改めて分かる。
他方平均等価可処分所得で見ると、ピークはほぼ同じ時期だが、ピークを過ぎた後の各世代の位置関係が、単なる所得とは微妙に違うことが分かる。全世帯平均と児童のいる世帯、65歳以上の者のいる世帯がほぼ変わらず、高齢者世帯がやや上となり、母子世帯が下に置いて行かれているような形となっている。
全世帯の平均等価可処分所得を100%とした場合、母子世帯は46.7%(2014年)。1985年以降は大よそ40%強を維持し、50%を超えたことは無い。生活の厳しさが改めてうかがい知れよう。
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