Yahoo!ニュース

今オフのFA市場は動きが速く、すでに5人が年平均1000万ドル以上の契約を手にする。その理由は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)Jul 24, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフのFA市場は、近年と比べて動きが速い。正式な発表が出ていない選手を含め、すでに5人が年平均1000万ドル以上の契約を得ている。ここには、サンフランシスコ・ジャイアンツからのクオリファイング・オファー(1年1840万ドル)を受け入れた、ブランドン・ベルトは含めていない。ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)とアンソニー・デスクラファーニ(ジャイアンツ)は、それぞれ、1年2500万ドルと3年3600万ドルの再契約を交わした。新たな球団へ移った3人は、前ボストン・レッドソックスのエデュアルド・ロドリゲス(デトロイト・タイガース)が5年7700万ドル、前ニューヨーク・メッツのノア・シンダーガード(ロサンゼルス・エンジェルス)が1年2100万ドル、前トロント・ブルージェイズのスティーブン・マッツ(セントルイス・カーディナルス)は4年4400万ドルの契約を得ている。

 昨オフのFA市場に出て、12月を迎える前に年平均1000万ドルの契約を手にした選手は、見落としがなければ、2人だった。2019年のオフも2人。2018年のオフは1人だ(各オフにクオリファイング・オファーを受諾した選手は、2人、2人、1人)。今オフの場合、11月はまだ終わっていない。月末までに人数が増えてもおかしくない。ファンサイデッドのロバート・マリーとESPNのジェフ・パッサンによると、アレックス・ウッドがジャイアンツとの再契約に近づいていて、年平均1000万ドル以上の2年契約になるらしい。

 動きが速い理由は、労使協定にありそうだ。現在の協定は、12月1日の23時59分(東部時間)に失効する。新たな協定について、それまでに合意することできず、ロックアウトに入る可能性は低くない。その前に、契約を得たいと考える選手が多いのだろう。ロックアウト中、FAのまま過ごすことよりも、大きいのは新たな協定に関する懸念だ。球団が超過分に対して「贅沢税」を課される、年俸総額の上限が低くなれば、まず影響を受けるのは、FA市場に出ている選手だ。

 その一方で、年平均1000万ドル以上の契約を手にした選手が、5人とも先発投手というのも、偶然ではないのかもしれない。6人目となりそうなウッドも、先発投手だ。新たな労使協定に「ユニバーサルDH」が盛り込まれ、ア・リーグだけでなくナ・リーグもDH制を採用することになった場合、一部の野手はこれまでよりも需要が高まる。外野の守備に不安のある、ニック・カステヤノスホルヘ・ソレーアがいい例だ。もちろん、DHのネルソン・クルーズもその一人であることは、言うまでもない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事