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「家族と同居する人」にこそ、ひとり旅が必要なワケ。ソロ温泉と家族旅行は目的が違う

高橋一喜温泉ライター/編集者

ソロ温泉(=ひとりでの温泉旅)をおすすめすると、「家族といっしょに住んでいるから無理」と言われることがある。

しかし、家族と同居しているからこそ、ソロ温泉に出かける時間が必要だと思っている。筆者自身も、妻と子供といっしょに暮らしているが、ソロ温泉を実行している。

別に、誰かといっしょに行く旅行が嫌いなわけではない。みんなと過ごす時間も楽しい。ただ、「ソロ温泉」と、誰かといっしょに行く「温泉旅行」は分けて考えているだけである。

ソロ温泉は「投資」

筆者は「ソロ温泉」をこう定義している。

ソロ温泉とは、「人生を頑張る力を得るために、ひとりでただひたすら湯に身をゆだねて、心と体を解き放つこと」。

ソロ温泉は自分自身への「投資」であり、その結果として、日常では得られない「空白の時間」を確保するのが目的である。

温泉にただひたすらつかり、日頃の仕事や人間関係、ネット(SNS)などから解放されることで、あえて「何もしない時間」をつくるのだ。そうして明日を生きる力をチャージするのである。

したがって、筆者の場合、ソロ温泉と家族や友人といっしょに行く温泉は、まったく別の旅のスタイルだと分けて考えている。

だからといって、家族や友人といっしょに行く温泉を否定するつもりは1ミリもない。ソロ活動が好きな私でも、誰かといっしょに旅行に出かけたいときはある。

「目的」が異なる

「ソロ温泉」と「誰かといっしょの温泉旅行」――。「温泉に入る」という行為はいっしょであっても目的が異なる。

誰かといっしょに行く温泉旅行の目的は、温泉という癒やしの場を舞台に同行者との時間を愉しむことだ。そこに「空白の時間」などは存在しないし、2つの目的が両立することもない。

たとえば、家族サービスの一環で温泉に行くなら、サービスに徹する必要がある。自分が癒されようとは思わず、同行者がよろこんでくれるよう最善を尽くす。友人といっしょに温泉に行くなら、会話や観光を楽しみ、思い出をつくることに徹する。そう割り切れば、誰かといっしょに行く温泉も楽しめる。

いちばんいけないのは、同行者と目一杯旅を楽しむだけでは飽き足らず、同時に温泉でも存分に癒されようと、二兎を追うことである。

たとえば、家族といっしょに温泉に出かけるとき、「せっかく温泉に来たのだから」と自分ひとりの時間をつくり、心身ともに癒やされようとしても現実には難しいだろう。家族といっしょである時点で日常の延長線上であり、そこに「空白の時間」が入り込む余地はない。

それは、いわば野球とサッカー、両方でレギュラーを目指すようなものである。「球技」という共通点はあっても、求められる能力やスキルはまったく異なる。ソロ温泉も同じで、従来型の旅と両立させることはできない。ソロ温泉と、その他の温泉旅行は切り分けてとらえることが大切である。

家族を置いて「ソロ温泉」へ

「温泉に行くなら家族といっしょでなければ」と決めつけてはいないだろうか。もちろん、家族といっしょに過ごすのは何ものにも代えがたい幸せな時間であるし、「家族といっしょだからこそ楽しい」という人を否定するつもりはない。

だが、家族といえども、常にいっしょに行動をともにすることは、個人差こそあれ一種のストレスをともなう。ときには、ひとりになる時間も必要だろう。

ソロ温泉を実行するにあたっては、家族の理解を得る必要はあるが、けっして後ろめたい気持ちになる必要はない。

家族である以上、ある程度お互いに依存している面はあるだろうが、家族である前にひとりの個人である。自分自身が日常に疲弊してしまったら、家族と支え合うこともむずかしくなる。

「旅行は家族と行くもの」という固定観念は、いったん取り払ってみよう。家族旅行とソロ温泉を分けて考えてみてほしい。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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