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橋本良亮、かわいいだけじゃない理由。『ハシツアーズ』

杉谷伸子映画ライター

TOKYO DOME CITY HALLの夏の風物詩となった感のある、ジャニーズのコンサート。『Johnnys’ Summer Paradise 2016』と銘打って、今年の夏も7月30日から8月29日までA.B.C-Z橋本良亮Sexy Zone各メンバーが連日コンサートを開催している。

かわいいなんて言わせない?

そのトップを飾ったのが橋本。『ハシツアーズ~もうかわいいなんて言わせない〜』というタイトルからもうかがえるように、テーマはA.B.C-Zの末っ子としてお馴染みのかわいいキャラとはまた違う、かっこよさだ。

赤い薔薇の花束を手にした橋本がステージに現れるオープニングは、彼らしい王子様っぽさで沸かせると同時に、ソロ曲を交えて踊り続ける序盤では23歳のクールで大人な表情で魅せる。この序盤、ステージ正面のモニターに橋本をいっさい映し出さないあたりに、ジャニーズJr.をバックにしたダンスを堪能させるという橋本の演出意図がうかがえて印象的。

その一方で、茶目っ気たっぷりなファンへの手書きメッセージが映し出されたり、ソロの新曲『hazy love』ではモニターに映し出される橋本の姿に歌詞が重なって、歌う彼の表情も楽しませてくれたり、アイドルの魅力もしっかり堪能させてくれるのだ。

客席に降りても礼儀正しいファンに揉みくちゃにされないことに拗ねてみせたりと、MCコーナーでもかわいいところを見せていたが、この日はコンサート前半日程の最終日ということもあり、MC後半にはA.B.C-Zのメンバーの戸塚祥太河合郁人塚田僚一が登場。橋本の私服を着て現れた塚田に翻弄されるなど、メンバーとのやりとりでもファンを沸かせ、MC後にはファンから飛ぶ「かわいい!」という歓声を、「もう、かわいいでいい」と笑顔で受け入れていた橋本だが、話題が飛びまくるMCトークの自由さ加減といい、持ち前のマイペースな素直さも、そのまま橋本の魅力だ。

歌うたい橋本良亮のかっこよさ

けれども、橋本はもちろんかわいいだけの存在ではない。その理由は、もちろん彼の歌の上手さ。「3人がくるとA.B.C-Zの橋本に戻ってしまう。それまでは橋本良亮の橋本良亮」と終演後の囲み取材で笑っていたが、橋本の歌をたっぷり聴けるのはやはりソロコンサートならではの醍醐味。

ソロ曲やA.B.C-Zの楽曲のかずかずはもちろん、敬愛する関ジャニ∞渋谷すばるのカバーアルバムに収録されている安全地帯『君がいないから』や、安田章大が作詞作曲した『わたし鏡』など、こだわりの選曲でカバーを聴かせるバンドコーナーには、その魅力が溢れていた。「ジャニーズの曲なら弾けるよね?」とギターのジャニーズJr.小川優に問いかけると、セットリストになかった『愛のかたまり』をまったくのアドリブで聴かせたシーンはひときわ印象的。A.B.C-Zのコンサートでも橋本のソロコーナーで歌われたこともあり、昨年のソロコンでも取りあげられたKinKi Kidsの名曲だが、橋本が歌う『愛のかたまり』もまた 聴く者を魅了せずにいない何かがある。カウントをとり、アコースティックギターの調べが流れるなか、橋本が歌いはじめた瞬間にひときわ大きな歓声が上がった、ライブならではのあの興奮は、『愛のかたまり』という楽曲の魅力とともに、歌うたいとしての橋本がいかに愛されていることをうかがわせるものだった。

くわえて、『Crazy about you』のダンスパフォーマンス中に右手を切り、流血するアクシデントもあったそうだが、それをまったく気付かせることなく、コンサートを楽しませ続けたプロ意識の高さ。それは 振り付けを担当した五関晃一が、メンバーからステージに上がるように呼びかけられても、裏方に徹してステージに上がらなかった五関の姿勢にも通じるものだろう。

「A.B.C-Zの橋本良亮」の曲も「橋本良亮の橋本良亮」の曲も、キャリアとともにこれからどんどん名曲が増えていくのは間違いない。と、同時に、歌は 経験を重ねてその人ならではの深みが増していくものでもある。そうした楽曲のかずかずを これからどう聴かせてくれるのか。橋本は、そんな大きな期待と楽しみを抱かせずにいない存在だ。(8月1日13時公演を取材/コンサート後半日程は、8月27日、28日。)

『ハシツアーズ 〜もう可愛いなんて言わせない〜』

7月30日(土)〜8月1日(月)/8月27日(土)〜28日(日) 計9公演

映画ライター

映画レビューやコラム、インタビューを中心に、『anan』『SCREEN』はじめ、女性誌・情報誌に執筆。インタビュー対象は、ふなっしーからマーティン・スコセッシまで多岐にわたる。日本映画ペンクラブ会員。

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